『怪人二十面相』江戸川乱歩15

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少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第1作品『怪人二十面相』
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問題文

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(こばやししょうねんはかいとうにじゅうめんそうをあいてに、みごとなしょうりを)

小林少年は怪盗二十面相を相手に、見事な勝利を

(おさめたのです。そのうれしさは、)

収めたのです。その嬉しさは、

(どれほどだったでしょう。どんなおとなにもおよばない、)

どれほどだったでしょう。どんな大人にも及ばない、

(おおてがらです。ところが、かれがいま、に、さんぽで)

大手柄です。 ところが、彼が今、二、三歩で

(へやをでようとしていたとき、とつぜん、)

部屋を出ようとしていた時、突然、

(いようなわらいごえがひびきわたりました。みると、ろうじんすがたの)

異様な笑い声が響き渡りました。見ると、老人姿の

(にじゅうめんそうが、おかしくてたまらないというように、)

二十面相が、おかしくてたまらないというように、

(おおきなくちをあけて、わらっているのです。)

大きな口をあけて、笑っているのです。

(ああ、どくしゃしょくん、まだあんしんはできません。)

ああ、読者諸君、まだ安心は出来ません。

(せけんいっぱんにしられているかいとうのことです。)

世間一般に知られている怪盗のことです。

(まけたとみせかけて、じつはさいごのきりふだが)

負けたとみせかけて、実は最後の切り札が

(あったなんてことが、ないとはかぎりません。)

あったなんてことが、ないとは限りません。

(「おや、きさま、なにがおかしいんだ」)

「おや、貴様、何がおかしいんだ」

(かんのんさまにばけたしょうねんは、ぎょっとしたように)

観音さまに化けた少年は、ギョッとしたように

(たちどまって、ゆだんなくみがまえました。)

立ち止まって、油断なく身構えました。

(「いや、しっけいしっけい。きみがおとなのことば)

「いや、失敬失敬。きみが大人の言葉

(なんかつかって、こどものくせにませているもんだから、)

なんか使って、子供のくせにませているもんだから、

(ついふきだしてしまったんだよ」ぞくはやっと)

つい吹きだしてしまったんだよ」 賊はやっと

(わらうのをやめ、こたえるのでした。「というのはね、)

笑うのをやめ、答えるのでした。「というのはね、

(おれはとうとう、きみのしょうたいをみやぶってしまった)

おれはとうとう、きみの正体を見破ってしまった

など

(からさ。このにじゅうめんそうのうらをかいて、これほどの)

からさ。この二十面相の裏をかいて、これほどの

(げいとうができるやつは、そうはいないからね。)

芸当が出来る奴は、そうは居ないからね。

(じつをいうと、おれはまっさきにあけちこごろうを)

実を言うと、おれは真っ先に明智小五郎を

(おもいだした。だが、そんなちっぽけなあけちこごろう)

思い出した。 だが、そんなちっぽけな明智小五郎

(なんてありゃしないね。きみはこどもだ。)

なんてありゃしないね。きみは子どもだ。

(あけちりゅうのやりかたをえとくしたこどもといえば、)

明智流のやり方を会得した子どもといえば、

(ほかにない。あけちのしょうねんじょしゅのこばやしよしおとか)

他にない。明智の少年助手の小林芳雄とか

(いったっけな。ははは、どうだ、あたったろう」)

いったっけな。ハハハ、どうだ、当たったろう」

(かんのんぞうにへんそうしたこばやししょうねんは、ぞくのめいさつに、)

観音像に変装した小林少年は、賊の明察に、

(ないしんぎょっとしないではいられませんでした。)

内心ギョッとしないではいられませんでした。

(しかし、よくかんがえてみれば、もくてきをはたしてしまった)

しかし、よく考えてみれば、目的を果たしてしまった

(いま、あいてになまえをさとられたところで、すこしもおどろく)

今、相手に名前を悟られたところで、少しも驚く

(ことはないのです。「なまえなんかどうだっていいが、)

ことはないのです。「名前なんかどうだっていいが、

(おさっしのとおり、ぼくはこどもにちがいないよ。)

お察しの通り、ぼくは子どもに違いないよ。

(だが、にじゅうめんそうともあろうものが、ぼくみたいな)

だが、二十面相ともあろう者が、ぼくみたいな

(こどもにやっつけられたとあっては、すこしふめいよ)

子どもにやっつけられたとあっては、少し不名誉

(だねえ。ははは」こばやししょうねんはまけないで)

だねえ。ハハハ」 小林少年は負けないで

(やりかえしました。「ぼうや、かわいいねえ。)

やりかえしました。「坊や、可愛いねえ。

(きさま、それで、このにじゅうめんそうにかったつもりでいる)

貴様、それで、この二十面相に勝ったつもりでいる

(のか」「まけおしみは、よしたまえ。せっかくぬすみ)

のか」「負け惜しみは、よしたまえ。せっかく盗み

(だしたぶつぞうはいきてうごきだすし、だいやもんどは)

出した仏像は生きて動き出すし、ダイヤモンドは

(とりかえされるし、それでもまだまけてないっていう)

取り返されるし、それでもまだ負けてないって言う

(のかい」「そうだよ。おれはけっしてまけないよ」)

のかい」「そうだよ。おれは決して負けないよ」

(「で、どうしようっていうんだ」「こうしよう)

「で、どうしようっていうんだ」「こうしよう

(というのさ」そのこえとどうじに、こばやししょうねんはあしのしたの)

というのさ」その声と同時に、小林少年は足の下の

(ゆかいたが、とつぜんきえてしまったようにかんじました。)

床板が、突然消えてしまったように感じました。

(はっとからだがちゅうにういたかとおもうと、そのつぎの)

ハッと体が宙に浮いたかと思うと、その次の

(しゅんかんにはめのまえにひばながちって、からだのどこかが)

瞬間には目の前に火花が散って、体のどこかが

(おそろしいちからでたたきつけられたような、はげしい)

恐ろしい力で叩きつけられたような、激しい

(いたみをかんじたのです。ああ、なんというふかくでしょう。)

痛みを感じたのです。ああ、なんという不覚でしょう。

(ちょうどそのとき、かれがたっていたぶぶんのゆかいたが、)

ちょうどその時、彼が立っていた部分の床板が、

(おとしあなのしかけになっていて、ぞくのゆびがそっとかべの)

落とし穴の仕掛けになっていて、賊の指がソッと壁の

(かくしぼたんをおすとどうじに、とめがねがはずれ、)

隠しボタンを押すと同時に、留め金が外れ、

(そこにまっくらなしかくいじごくのくちがあいたのでした。)

そこに真っ暗な四角い地獄の口があいたのでした。

(いたみにたえかねて、みうごきもできず、くらやみのそこに)

痛みにたえかねて、身動きも出来ず、暗闇の底に

(うつぶしているこばやししょうねんのみみに、はるかうえのほうから、)

うつ伏している小林少年の耳に、遥か上のほうから、

(にじゅうめんそうのこきみよげなちょうしょうがひびいてきました。)

二十面相の小気味よげな嘲笑が響いてきました。

(「ははは、おいぼうや、さぞいたかっただろう。きのどく)

「ハハハ、おい坊や、さぞ痛かっただろう。気の毒

(だねえ。まあ、そこでゆっくりかんがえてみるがいい。)

だねえ。まあ、そこでゆっくり考えてみるがいい。

(きみのてきがどれほどのちからをもっているかという)

きみの敵がどれほどの力を持っているかという

(ことをね。ははは、このにじゅうめんそうをやっつける)

ことをね。ハハハ、この二十面相をやっつける

(には、きみはちょっととしがわかすぎたよ。ははは」)

には、きみはちょっと歳が若すぎたよ。ハハハ」

(「ななつどうぐ」)

「七つ道具」

(こばやししょうねんはやくにじゅっぷんかん、ちていの)

小林少年は約二十分間、地底の

(くらやみのなかで、ついらくしたままのしせいでじっとして)

暗闇の中で、墜落したままの姿勢でジッとして

(いました。ひどくこしをうったものですから、)

いました。ひどく腰を打ったものですから、

(いたさにみうごきするきにもなれなかったのです。)

痛さに身動きする気にもなれなかったのです。

(そのかんに、てんじょうでは、にじゅうめんそうがさんざん)

そのかんに、天井では、二十面相がさんざん

(あざけりのことばをなげかけたのち、おとしあなの)

あざけりの言葉を投げかけたのち、落とし穴の

(ふたをぴっしゃりしめてしまいました。)

フタをピッシャリ閉めてしまいました。

(もうたすかるみこみはありません。)

もう助かる見こみはありません。

(もし、ぞくがこのまましょくじをあたえてくれないとしたら、)

もし、賊がこのまま食事を与えてくれないとしたら、

(だれひとりしるものもない、あばらやのちかしつで)

だれ一人知る者もない、あばら屋の地下室で

(うえじにしてしまわねばなりません。まだおさないしょうねんの)

飢え死してしまわねばなりません。まだ幼い少年の

(みで、このおそろしいきょうぐうを、どうたえしのぶことが)

身で、この恐ろしい境遇を、どう耐え忍ぶことが

(できましょう。たいていのしょうねんならば、さびしさと)

出来ましょう。たいていの少年ならば、寂しさと

(おそろしさに、ぜつぼうのあまりしくしくとなきだした)

恐ろしさに、絶望のあまりシクシクと泣きだした

(ことでありましょう。しかし、こばやししょうねんはなきも)

ことでありましょう。しかし、小林少年は泣きも

(しなければ、ぜつぼうもしませんでした。かれはけなげにも、)

しなければ、絶望もしませんでした。彼は健気にも、

(まだ、にじゅうめんそうにまけたとはおもっていなかったのです。)

まだ、二十面相に負けたとは思っていなかったのです。

(やっとこしのいたみがうすらぐと、しょうねんがまずさいしょにした)

やっと腰の痛みが薄らぐと、少年がまず最初にした

(ことは、へんそうのころものしたにかくして、かたからさげていた)

ことは、変装の衣の下に隠して、肩からさげていた

(ちいさなあさのかばんに、そっとさわってみること)

小さなアサのカバンに、ソッとさわってみること

(でした。「ぴっぽちゃん、きみはぶじだったかい」)

でした。「ピッポちゃん、きみは無事だったかい」

(みょうなことをいいながら、うえからなでるように)

みょうなことを言いながら、上からなでるように

(すると、かばんのなかでなにかちいさなものが、ごそごそと)

すると、カバンの中で何か小さな物が、ゴソゴソと

(うごきました。「ああ、ぴっぽちゃんは、どこも)

動きました。「ああ、ピッポちゃんは、どこも

(うたなかったんだね。おまえさえいてくれれば、)

打たなかったんだね。お前さえ居てくれれば、

(ぼく、ちっともさびしくないよ」ぴっぽちゃんが、)

ぼく、ちっとも寂しくないよ」 ピッポちゃんが、

(べつじょうなくいきていることをたしかめると、こばやししょうねんは)

別状なく生きていることを確かめると、小林少年は

(やみのなかにすわって、そのちいさなかばんをかたからはずし、)

闇の中に座って、その小さなカバンを肩から外し、

(なかからまんねんひつがたのかいちゅうでんとうをとりだして、そのひかりで、)

中から万年筆型の懐中電灯を取り出して、その光で、

(ゆかにちらばっていたむっつのだいやもんどと、ぴすとるを)

床に散らばっていた六つのダイヤモンドと、ピストルを

(ひろいあつめ、それをかばんにおさめるついでに、)

拾い集め、それをカバンに収めるついでに、

(そのなかのいろいろなしなものをふんしつしていないかどうかを、)

その中の色々な品物を紛失していないかどうかを、

(ねんいりにてんけんするのでした。そこには、しょうねんたんていの)

念入りに点検するのでした。 そこには、少年探偵の

(ななつどうぐが、ちゃんとそろっていました。)

七つ道具が、ちゃんとそろっていました。

(むさしのぼうべんけいというごうけつは、あらゆるいくさのどうぐを、)

武蔵坊弁慶という豪傑は、あらゆる戦の道具を、

(すべてせなかにせおってあるいたのだそうですが、)

すべて背中に背負って歩いたのだそうですが、

(それを「べんけいのななつどうぐ」といいます。)

それを「弁慶の七つ道具」といいます。

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