『少年探偵団』江戸川乱歩5
○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | BE | 4366 | C+ | 4.6 | 94.4% | 995.1 | 4619 | 274 | 100 | 2024/10/25 |
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問題文
(そして、もうひとこともものをいわないで、おんなのこを)
そして、もう一言も物を言わないで、女の子を
(もりのなかへおいてけぼりにして、さっさとどこかへ)
森の中へ置いてけぼりにして、サッサとどこかへ
(たちさってしまいました。やがて、そのきみょうな)
立ち去ってしまいました。 やがて、その奇妙な
(できごとは、たあちゃんというおんなのこが、なきながら)
出来事は、タアちゃんという女の子が、泣きながら
(かえってきて、ははおやにつげましたので、まちじゅうのうわさ)
帰ってきて、母親に告げましたので、町中のウワサ
(となり、けいさつのみみにもはいりました。おさないおんなのこのほうこく)
となり、警察の耳にも入りました。幼い女の子の報告
(ですから、もりのなかでのもんどうがくわしくわかったわけでは)
ですから、森の中での問答が詳しくわかったわけでは
(ありませんが、どうけふくのちんどんやが、たあちゃんを)
ありませんが、道化服のチンドン屋が、タアちゃんを
(つれさろうとして、とちゅうでよしてしまったらしいこと)
つれさろうとして、途中でよしてしまったらしいこと
(だけは、おぼろげながらわかりました。ぜんやのくろい)
だけは、おぼろげながらわかりました。前夜の黒い
(まものとおなじやりかたです。いよいよ、だれかしら、いつつ)
魔物と同じやり方です。いよいよ、だれかしら、五つ
(ぐらいのおんなのこがねらわれていることが、はっきり)
ぐらいの女の子がねらわれていることが、ハッキリ
(してきました。いつつぐらいのおんなのこといえば、)
してきました。 五つぐらいの女の子といえば、
(しのざきはじめくんにも、ちょうどそのとしごろの、かわいらしい)
篠崎始君にも、ちょうどその年頃の、かわいらしい
(いもうとがいるのです。もしやかいぶつがねらっているのは、)
妹がいるのです。もしや怪物がねらっているのは、
(そのしのざきけのおんなのこではないでしょうか。ぜんごの)
その篠崎家の女の子ではないでしょうか。前後の
(じじょうをかんがえあわせると、どうもそうらしくおもわれる)
事情を考え合わせると、どうもそうらしく思われる
(ではありませんか。すみだがわだとか、うえののもりだとか、)
ではありませんか。 隅田川だとか、上野の森だとか、
(とうきょうじゅうのどこにでも、あのぶきみなすがたをあらわして、)
東京中のどこにでも、あの不気味な姿を現して、
(いたずらをしていたくろいかげはだんだん、そのあらわれるばしょを)
イタズラをしていた黒い影は段々、その現れる場所を
(せばめてきました。かつらしょういちくんがであったばしょといい、)
せばめてきました。 桂正一君が出会った場所といい、
(しのざきくんのちいさい、いとこがさらわれたばしょといい、)
篠崎君の小さい、いとこがさらわれた場所といい、
(たあちゃんがつれさられようとしたばしょといい、)
タアちゃんがつれさられようとした場所といい、
(みんなしのざきくんのおうちをちゅうしんとしているのです。)
みんな篠崎君のおうちを中心としているのです。
(かいぶつのもくてきがなんであるかが、すこしずつわかって)
怪物の目的がなんであるかが、少しずつわかって
(きました。しかし、ただこどもをさらったり、)
きました。しかし、ただ子どもをさらったり、
(そのこをひとじちにしておかねをゆすったりする)
その子を人質にしてお金をゆすったりする
(のでしたら、なにもくろいかげなんかにばけて、ひとを)
のでしたら、何も黒い影なんかに化けて、人を
(おどかすことはありません。これにはなにか、もっと)
おどかすことはありません。これには何か、もっと
(ふかいたくらみがあるにちがいないのです。)
深いたくらみがあるに違いないのです。
(「のろいのほうせき」)
「呪いの宝石」
(さて、もんのまえであそんでいたおんなのこがさらわれた、)
さて、門の前で遊んでいた女の子がさらわれた、
(そのよるのことです。しのざきはじめくんのおとうさまは、ひじょうに)
その夜のことです。篠崎始君のおとうさまは、非常に
(しんぱいそうなごようすで、かおいろもあおざめて、おかあさまと)
心配そうなご様子で、顔色も青ざめて、おかあさまと
(はじめくんを、そっとおくのざしきへおよびになりました。)
始君を、ソッと奥の座敷へお呼びになりました。
(はじめくんは、おとうさまの、こんなげんきのないようすを、)
始君は、おとうさまの、こんな元気のない様子を、
(あとにもさきにもみたことがありませんでした。)
あとにも先にも見たことがありませんでした。
(「いったい、どうなさったのだろう。なにがおこった)
「一体、どうなさったのだろう。なにがおこった
(のだろう」と、おかあさまもはじめくんも、きがかりで)
のだろう」 と、おかあさまも始君も、気がかりで
(むねがどきどきするほどでした。おとうさまは)
胸がドキドキするほどでした。 おとうさまは
(ざしきのとこのまのまえに、うでぐみをしてすわっております。)
座敷の床の間の前に、腕組みをして座っております。
(そのとこのまには、いつもかびんのおいてあるだいのうえに、)
その床の間には、いつも花瓶の置いてある台の上に、
(こんやはみょうなものがおいてあるのです。)
今夜はみょうなものが置いてあるのです。
(うちがわをむらさきいろのびろーどではりつめたしかくいはこのなかに、)
内側を紫色のビロードで貼りつめた四角い箱の中に、
(おそろしいほどぴかぴかひかる、ちょっけいいっせんちほどの)
おそろしいほどピカピカ光る、直径一センチほどの
(たまがはいっています。はじめくんは、こんなうつくしいほうせきが、)
玉が入っています。 始君は、こんな美しい宝石が、
(いえにあることを、いままですこしもしりませんでした。)
家にあることを、今まで少しも知りませんでした。
(「わたしはまだ、おまえたちに、このほうせきにまつわる、)
「私はまだ、おまえたちに、この宝石にまつわる、
(おそろしいのろいのはなしをしたことがなかったね。)
おそろしい呪いの話をしたことがなかったね。
(わたしは、そんなはなしをしんじていなかった。つまらないはなしを)
私は、そんな話を信じていなかった。つまらない話を
(きかせて、おまえたちをしんぱいさせることはない)
聞かせて、おまえたちを心配させることはない
(とおもって、きょうまでだまっていたのだ。けれども、)
と思って、今日までだまっていたのだ。 けれども、
(もう、おまえたちにかくしておくことができなく)
もう、おまえたちに隠しておくことができなく
(なった。ゆうべからのしょうじょゆうかいさわぎは、)
なった。ゆうべからの少女誘拐さわぎは、
(どうもただごとではないようにおもう。わたしたちは、ようじん)
どうもただごとではないように思う。私たちは、用心
(しなければならないのだ」おとうさまは、げんきのない)
しなければならないのだ」 おとうさまは、元気のない
(こえで、なにかひじょうにじゅうだいなことについてはなそうと)
声で、何か非常に重大なことについて話そうと
(しています。「では、このほうせきと、ゆうべからのじけん)
しています。「では、この宝石と、ゆうべからの事件
(とのあいだに、なんのかんけいがあるというのですか」)
とのあいだに、何の関係があるというのですか」
(おかあさまも、おとうさまとおなじようにあおざめて)
おかあさまも、おとうさまと同じように青ざめて
(しまって、いきをころすようにしておたずねになり)
しまって、息を殺すようにしておたずねになり
(ました。「このほうせきには、おそろしいのろいが)
ました。「この宝石には、おそろしい呪いが
(つきまとっているのだ。そのはなしがでたらめでない)
つきまとっているのだ。その話がデタラメでない
(ことがわかってきたのだ。おまえもしっている)
ことがわかってきたのだ。おまえも知っている
(ように、このほうせきは、おととしちゅうごくへいったとき、)
ように、この宝石は、おととし中国へ行った時、
(しゃんはいのとあるがいこくじんからかいとったものだが、)
上海のとある外国人から買い取ったものだが、
(そのねだんがひどくやすかった。しじょうかかくのじゅうぶんのいちにも)
その値段がひどく安かった。市場価格の十分の一にも
(たらない、ごまんななせんえんというねだんであった。)
足らない、五万七千円という値段であった。
(わたしは、たいへんなほりだしものをしたとおもって、よろこんでいた)
私は、大変な掘り出し物をしたと思って、喜んでいた
(のだが、あとになって、べつのとあるがいこくじんがそっと)
のだが、あとになって、別のとある外国人がソッと
(わたしにおしえてくれたところによると、このいしには、)
私に教えてくれたところによると、この石には、
(みょうないんねんばなしがあって、そのじじょうをしっている)
みょうな因縁話があって、その事情を知っている
(ものは、だれもかおうとしないものだったから、)
者は、だれも買おうとしないものだったから、
(それで、こんなやすいねだんで、てばなすことになったの)
それで、こんな安い値段で、手放すことになったの
(だろうというのだ。そのいんねんばなしというのはね」)
だろうと言うのだ。 その因縁話というのはね」
(おとうさまは、ちょっとことばをきって、ふたりに)
おとうさまは、ちょっと言葉を切って、二人に
(もっとそばへよるようにと、てまねきをなさいました。)
もっとそばへ寄るようにと、手招きをなさいました。
(はじめくんは、すこしおとうさまのほうへ、ひざをすすめ)
始君は、少しおとうさまのほうへ、ひざを進め
(ましたが、なんだかおそろしいかいだんをきくようなきが)
ましたが、なんだかおそろしい怪談を聞くような気が
(して、せなかのほうがなんとなくさむくなってきました。)
して、背中のほうが何となく寒くなってきました。
(きのせいか、いつもあかるいでんとうが、こんやは、みょうに)
気のせいか、いつも明るい電灯が、今夜は、みょうに
(うすぐらくかんじられます。「このほうせきは、もとはいんどの)
薄暗く感じられます。「この宝石は、もとはインドの
(おくちにある、とあるふるいおてらのごほんぞんの、おおきな)
奥地にある、とある古いお寺のご本尊の、大きな
(ぶつぞうのひたいにはめこんであったものだそうだ。)
仏像のひたいにはめこんであったものだそうだ。
(はじめはがっこうでおそわったことがあるだろう。びゃくごう)
始は学校で教わったことがあるだろう。ビャクゴウ
(というものだ。ことのはじまりは、いまからひゃくねんも)
というものだ。 ことのはじまりは、今から百年も
(まえのはなしだが、そのおてらのふきんにせんそうがあって、おてらは)
前の話だが、そのお寺の付近に戦争があって、お寺は
(やけて、たくさんのひとがしんだ。そのとき、ぶつぞうの)
焼けて、たくさんの人が死んだ。そのとき、仏像の
(かおに、はめこんであったほうせきをてきがもっていって)
顔に、はめこんであった宝石を敵が持って行って
(しまったんだよ。それから、ほうせきはいろいろなひとのてに)
しまったんだよ。それから、宝石は色々な人の手に
(わたって、よーろっぱのほうへかいとられていった。)
渡って、ヨーロッパのほうへ買い取られていった。
(ひじょうにねうちのあるほうせきだから、だれでもたかいだいかで)
非常に値打ちのある宝石だから、だれでも高い代価で
(かいとるさ。また、そのせんそうのときに、そのしゅうらくの)
買い取るさ。また、その戦争のときに、その集落の
(とのさまのおひめさまが、てきのたまにあたってしんで)
殿さまのお姫さまが、敵の弾に当たって死んで
(しまった。まだわかくてきれいなおひめさまだったそう)
しまった。まだ若くてきれいなお姫さまだったそう
(だが、とのさまがたいへんかわいがっておいでになった)
だが、殿さまが大変かわいがっておいでになった
(ばかりでなく、そのしゅうらくのいんどじんは、このおひめさま)
ばかりでなく、その集落のインド人は、このお姫さま
(をかみさまのようにうやまった。そのだいじなおかたが、)
を神さまのようにうやまった。その大事なお方が、
(てきのたまにあたって、はかなくしんでしまった」ふたりは)
敵の弾に当たって、はかなく死んでしまった」 二人は
(しずかに、おとうさまのはなしにみみをかたむけております。)
静かに、おとうさまの話に耳を傾けております。