『少年探偵団』江戸川乱歩4
○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | BE | 4191 | C | 4.4 | 93.8% | 1014.9 | 4550 | 296 | 100 | 2024/10/25 |
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問題文
(「ひとさらい」)
「人さらい」
(ぼちのできごとがあってからふつかご、やっぱりよるの)
墓地の出来事があってから二日後、やっぱり夜の
(はちじごろ、しのざきはじめくんのおうちのりっぱなもんから、さんじゅっさい)
八時頃、篠崎始君のおうちの立派な門から、三十歳
(ぐらいのじょうひんなふじんと、いつつぐらいのかわいらしい)
ぐらいの上品な婦人と、五つぐらいのかわいらしい
(ようそうのおんなのこが、でてきました。ふじんははじめくんの)
洋装の女の子が、出てきました。婦人は始君の
(おばさん、おんなのこはちいさいいとこですが、ふたりは)
おばさん、女の子は小さいいとこですが、二人は
(ゆうがたからしのざきくんのおうちへあそびにきていて、いま、)
夕方から篠崎君のおうちへ遊びに来ていて、今、
(かえるところなのです。おばさんは、おおどおりへでて)
帰るところなのです。おばさんは、大通りへ出て
(じどうしゃをひろうつもりで、おんなのこのてをひいて、)
自動車をひろうつもりで、女の子の手を引いて、
(うすぐらいやしきまちを、いそぎあしにあるいていきました。)
薄暗い屋敷まちを、急ぎ足に歩いていきました。
(すると、またしてもふたりのうしろから、れいのくろい)
すると、またしても二人のうしろから、例の黒い
(かげがあらわれたのです。かいぶつはへいからへいへとつたわって、)
影が現れたのです。 怪物は塀から塀へと伝わって、
(あしおともなく、すこしずつ、すこしずつ、ふたりにちかづいて)
足音もなく、少しずつ、少しずつ、二人に近づいて
(いき、いちめーとるばかりのちかさになったかとおもうと、)
いき、一メートルばかりの近さになったかと思うと、
(いきなり、かわいらしいおんなのこにとびかかって、)
いきなり、かわいらしい女の子にとびかかって、
(こわきにかかえてしまいました。「あれ、なにを)
小脇にかかえてしまいました。「アレ、なにを
(なさるんです」ふじんはびっくりして、あいてに)
なさるんです」 婦人はビックリして、相手に
(すがりつこうとしましたが、くろいかげはすばやく)
すがりつこうとしましたが、黒い影は素早く
(かたあしをあげて、ふじんをけたおし、そのうえにのしかかる)
片足をあげて、婦人をけたおし、その上にのしかかる
(ようにして、あのしろいはをむきだし、けらけらけらと)
ようにして、あの白い歯をむきだし、ケラケラケラと
(わらいました。ふじんはたおれながら、はじめてあいての)
笑いました。 婦人は倒れながら、はじめて相手の
(すがたをみました。そして、うわさにきくくろいまものだと)
姿を見ました。そして、ウワサに聞く黒い魔物だと
(いうことがわかると、あまりのおそろしさに、)
いうことがわかると、あまりのおそろしさに、
(あっとさけんだまま、じめんにうつぶしてしまいました。)
アッと叫んだまま、地面にうつぶしてしまいました。
(そのあいだに、かいぶつはおんなのこをつれて、どこかへ)
そのあいだに、怪物は女の子をつれて、どこかへ
(はしりさってしまったのですが、では、くろいまものは、)
走り去ってしまったのですが、では、黒い魔物は、
(おそろしいひとさらいだったのかといいますと、べつに)
おそろしい人さらいだったのかといいますと、別に
(そうでもなかったことが、そのよふけになってわかり)
そうでもなかったことが、その夜ふけになってわかり
(ました。もうじゅういちじごろでしたが、しのざきくんのおうちから)
ました。 もう十一時頃でしたが、篠崎君のおうちから
(いちきろほどもはなれた、やっぱりたまがわでんしゃぞいの、)
一キロほども離れた、やっぱり玉川電車ぞいの、
(とあるさびしいやしきまちを、ひとりのおまわりさんが、)
とあるさびしい屋敷まちを、一人のおまわりさんが、
(こつこつとじゅんかいしていますと、ひとどおりもないみちの)
コツコツと巡回していますと、人通りもない道の
(まんなかに、いつつぐらいのおんなのこが、しくしくなき)
真ん中に、五つぐらいの女の子が、シクシク泣き
(ながらたたずんでいるのにであいました。)
ながらたたずんでいるのに出会いました。
(それがさきほど、くろいかいぶつにさらわれた、しのざきくんの)
それが先程、黒い怪物にさらわれた、篠崎君の
(ちいさいいとこだったのです。まだおさないこどもです)
小さいいとこだったのです。 まだ幼い子どもです
(から、おまわりさんがいろいろたずねても、なにひとつ)
から、おまわりさんが色々たずねても、何一つ
(はっきりこたえることはできませんでしたが、)
ハッキリ答えることはできませんでしたが、
(かたことまじりのことばを、つなぎあわせてはんだんして)
片言混じりの言葉を、つなぎあわせて判断して
(みますと、くろいかいぶつはこどもをさらって、どこか)
みますと、黒い怪物は子どもをさらって、どこか
(さびしいひろっぱへつれていき、おかしなどをあたえて、)
さびしい広っぱへ連れて行き、お菓子などをあたえて、
(ごきげんをとりながら、なまえをたずねたらしい)
ご機嫌をとりながら、名前をたずねたらしい
(のですが、「きむらさちこ」と、おかあさんにおしえ)
のですが、「木村サチ子」と、おかあさんに教え
(られているとおりこたえますと、かいぶつはきゅうにあらあらしく)
られている通り答えますと、怪物は急に荒々しく
(なって、さちこさんをそこへすておいたまま、)
なって、サチ子さんをそこへ捨て置いたまま、
(どこかへいってしまったというのでした。どうも、)
どこかへ行ってしまったというのでした。 どうも、
(ぜんごのようすから、かいぶつはひとちがいをしたとしかかんがえ)
前後の様子から、怪物は人違いをしたとしか考え
(られません。だれでもいいから、こどもをさらおう)
られません。だれでもいいから、子どもをさらおう
(というのではなくて、あるきまったひとをねらって、)
というのではなくて、ある決まった人をねらって、
(ついひとちがいをしたらしくおもわれるのです。ではいったい、)
つい人違いをしたらしく思われるのです。では一体、
(だれとひとちがいをしたのでしょう。そのよくじつには、)
だれと人違いをしたのでしょう。 その翌日には、
(やつぎばやに、またしても、こんなさわぎがおこり)
矢つぎ早に、またしても、こんなさわぎがおこり
(ました。ばしょはやっぱりしのざきくんのおうちのまえでした。)
ました。 場所はやっぱり篠崎君のおうちの前でした。
(こんどはよるではなくて、まっぴるまのことですが、)
今度は夜ではなくて、真っ昼間のことですが、
(ちょうどもんのまえで、きんじょのよっつかいつつぐらいの)
ちょうど門の前で、近所の四つか五つぐらいの
(おんなのこが、たったひとりであそんでいるところへ、)
女の子が、たった一人で遊んでいるところへ、
(ちんどんやのぎょうれつがとおりかかりました。ひとめをひく)
チンドン屋の行列が通りかかりました。 人目をひく
(ふくそうをして、おおきなたいこをむねにぶらさげたおとこを)
服装をして、大きな太鼓を胸にぶらさげた男を
(せんとうに、わかいようそうのおんなのしゃみせんひき、しるくはっとに)
先頭に、若い洋装の女の三味線引き、シルクハットに
(えんびふくのびらくばり、はっぴすがたのはたもちなどが、)
えんび服のビラ配り、はっぴ姿の旗持ちなどが、
(いちれつにならんで、おんがくにあわせ、おしりをふりながら)
一列に並んで、音楽にあわせ、おしりをふりながら
(あるいてきます。そのぎょうれつのいちばんうしろから、)
歩いてきます。 その行列の一番うしろから、
(しろとあかのだんだらぞめのだぶだぶのどうけふくをきて、)
白と赤のだんだら染めのダブダブの道化服を着て、
(さきにすずのついたとんがりぼうしをかぶり、かおにはせいようじん)
先に鈴のついたとんがり帽子をかぶり、顔には西洋人
(みたいなどうけのおめんをつけたおとこが、ふらふらとついて)
みたいな道化のお面をつけた男が、フラフラとついて
(きましたが、しのざきけのもんぜんのおんなのこをみますと、)
きましたが、篠崎家の門前の女の子を見ますと、
(おどけたちょうしで、てまねきをしてみせました。おんなのこは)
おどけた調子で、手招きをしてみせました。 女の子は
(すなおなせいかくなのでまねかれるままに、にこにこ)
素直な性格なので招かれるままに、ニコニコ
(しながら、どうけふくのおとこのそばへかけよりました。)
しながら、道化服の男のそばへ駆け寄りました。
(するとどうけふくは、「これをあげましょう」といい)
すると道化服は、「これをあげましょう」と言い
(ながら、てにもっていたうつくしいぼうあめを、おんなのこの)
ながら、手に持っていた美しい棒アメを、女の子の
(てににぎらせました。「もっと、どっさりあげます)
手に握らせました。「もっと、どっさりあげます
(から、こちらへいらっしゃい」どうけふくは、そんな)
から、こちらへいらっしゃい」 道化服は、そんな
(ことをいいながら、おんなのこのてをひいて、ぐんぐん)
ことを言いながら、女の子の手を引いて、グングン
(あるいていきます。こどもは、うつくしいおかしがほしい)
歩いていきます。子どもは、美しいお菓子が欲しい
(ので、てをひかれるままに、ついていくのです。)
ので、手を引かれるままに、ついて行くのです。
(ところが、そしてひゃくめーとるほどもあるいたとき、)
ところが、そして百メートルほども歩いたとき、
(どうけふくのおとこはとつぜん、ちんどんやのれつをはなれて、)
道化服の男は突然、チンドン屋の列を離れて、
(おんなのこをつれたまま、さびしいよこちょうへまがってしまい)
女の子をつれたまま、さびしい横町へ曲がってしまい
(ました。ちんどんやのひとたちは、べつにそれをあやしむ)
ました。チンドン屋の人たちは、別にそれを怪しむ
(ようすもなく、まっすぐにあるいていくのです。)
様子もなく、まっすぐに歩いて行くのです。
(どうけふくは、よこちょうへまがると、ぐんぐんあしをはやめて、)
道化服は、横町へ曲がると、グングン足を速めて、
(おんなのこを、ちかくのじんじゃのもりのなかへつれこみました。)
女の子を、近くの神社の森の中へ連れ込みました。
(「おじちゃん、どこいくの」おんなのこは、ひとかげもない)
「おじちゃん、どこ行くの」 女の子は、人影もない
(もりのなかをみまわしながら、まだ、それともきづかず、)
森の中を見まわしながら、まだ、それとも気づかず、
(むじゃきにたずねるのです。「いいところです。おかしや、)
無邪気にたずねるのです。「いい所です。お菓子や、
(おにんぎょうがどっさりある、いいところです」どうけふくのおとこは、)
お人形がどっさりある、いい所です」 道化服の男は、
(とうきょうのひとではないらしく、みょうにくせのある)
東京の人ではないらしく、みょうにくせのある
(なまりで、ひとことひとこと、くぎりながら、いいにくそうに)
なまりで、一言一言、区切りながら、言いにくそうに
(いいました。「おじょうさん、なまえをいってごらん)
言いました。「お嬢さん、名前を言ってごらん
(なさい。なんというなまえですか」「あたち、)
なさい。なんという名前ですか」「あたち、
(たあちゃんよ」おんなのこは、あどけなくこたえます。)
タアちゃんよ」 女の子は、あどけなく答えます。
(「もっとほんとうのなまえ、おとうさまのなはなんというの」)
「もっと本当の名前、おとうさまの名は何というの」
(「みやもとっていうの」「みやもと、ほんとうですか。)
「ミヤモトっていうの」「宮本、本当ですか。
(しのざきではないのですか」「ちがうわ、みやもとよ」)
篠崎ではないのですか」「違うわ、ミヤモトよ」
(「では、さっきあそんでいたいえは、おじょうさんのうちでは)
「では、さっき遊んでいた家は、お嬢さんのうちでは
(ないのですか」「ええ、ちがうわ。あたちのうち、)
ないのですか」「ええ、違うわ。あたちのうち、
(もっとちいさいの」それだけきくと、どうけふくのおとこは、)
もっと小さいの」 それだけ聞くと、道化服の男は、
(いきなりたあちゃんのてをはなして、おめんのなかで、)
いきなりタアちゃんの手を放して、お面の中で、
(ちぇっと、したうちをしました。)
チェッと、舌打ちをしました。