『少年探偵団』江戸川乱歩8
○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | BE | 4252 | C+ | 4.6 | 92.4% | 957.1 | 4433 | 363 | 99 | 2024/11/11 |
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問題文
(そんなことはないでしょうが、もし、くせものに)
そんなことはないでしょうが、もし、くせ者に
(きかれたらたいへんだというので、はじめくんは、おとうさまの)
聞かれたら大変だというので、始君は、おとうさまの
(みみにくちをよせて、ささやくのでした。「あのね、)
耳に口を寄せて、ささやくのでした。「あのね、
(こばやしさんはね、みどりちゃんをへんそうさせなさいという)
小林さんはね、緑ちゃんを変装させなさいという
(のですよ」「え、なんだって、こんなちいさいこどもに)
のですよ」「え、なんだって、こんな小さい子どもに
(かい」おとうさまもおもわず、ささやきごえになって)
かい」 おとうさまも思わず、ささやき声になって
(おたずねになりました。「ええ、こうなんですよ。)
おたずねになりました。「ええ、こうなんですよ。
(こばやしさんがいうにはね、どこかにみどりちゃんの)
小林さんが言うにはね、どこかに緑ちゃんの
(よくなついているおばさんかなにかがいないかって)
よくなついているおばさんか何かがいないかって
(いうんです。でもぼく、そういうおばさんなら、)
いうんです。でもぼく、そういうおばさんなら、
(しながわくにひとりいるっていったんです。)
品川区に一人いるって言ったんです。
(ほら、みどりちゃんのだいすきなのむらおばさんね。)
ほら、緑ちゃんの大好きな野村おばさんね。
(ぼく、あのひとのことをいったんですよ。)
ぼく、あの人のことを言ったんですよ。
(すると、こばやしさんは、それじゃ、みどりちゃんをこっそり)
すると、小林さんは、それじゃ、緑ちゃんをコッソリ
(そのおばさんのいえへつれていって、しばらく)
そのおばさんの家へ連れて行って、しばらく
(あずかってもらったほうがいいっていうんです。)
あずかってもらったほうがいいって言うんです。
(ね、そうすれば、あいつは、このいえばかりねらって)
ね、そうすれば、あいつは、この家ばかりねらって
(いて、むだぼねおりをするわけでしょう。)
いて、無駄骨折りをするわけでしょう。
(でも、つれていくときにみつかるしんぱいがあるから、)
でも、連れて行くときに見つかる心配があるから、
(そのしゅだんがいるんだっていうんですよ。それはね、)
その手段がいるんだって言うんですよ。それはね、
(まずこばやしさんが、きんじょのいつつくらいのおとこのこを、)
まず小林さんが、近所の五つくらいの男の子を、
(おとこのこですよ。それをつれて、ぼくのいえへあそびに)
男の子ですよ。それを連れて、ぼくの家へ遊びに
(くるんです。そしてね、こっそりみどりちゃんにそのこの)
来るんです。そしてね、こっそり緑ちゃんにその子の
(ふくをきせちゃって、そして、こばやしさんはかえりには、)
服を着せちゃって、そして、小林さんは帰りには、
(おとこのこにへんそうしたみどりちゃんをつれて、なにくわぬかおで)
男の子に変装した緑ちゃんを連れて、なにくわぬ顔で
(いえをでるんです。ね、わかったでしょう。)
家を出るんです。ね、わかったでしょう。
(でも、ようじんのうえにもようじんをしなければいけないから、)
でも、用心の上にも用心をしなければいけないから、
(いつもよびつけのじどうしゃをよんで、うちのいまいさんが)
いつも呼びつけの自動車を呼んで、うちの今井さんが
(じょしゅせきにのって、そしてしながわのおばさんのいえまで、)
助手席に乗って、そして品川のおばさんの家まで、
(ぶじにおくりとどけるっていうんです。ね、うまいかんがえ)
無事に送り届けるっていうんです。ね、うまい考え
(でしょう。これならだいじょうぶでしょう」「うーん、)
でしょう。これなら大丈夫でしょう」「ウーン、
(なるほどね。さすがは、おまえたちのだんちょうのこばやしくん)
なるほどね。さすがは、おまえたちの団長の小林君
(だね。うまいかんがえだ。おとうさんはさんせいだよ。)
だね。うまい考えだ。おとうさんは賛成だよ。
(じつは、おとうさんも、みどりをどっかへあずけたほうが)
実は、おとうさんも、緑をどっかへあずけたほうが
(いいとはおもっていたんだ。しかし、そのみちがあぶない)
いいとは思っていたんだ。しかし、その道が危ない
(ので、けっしんがつかないんだよ」おとうさまは、)
ので、決心がつかないんだよ」 おとうさまは、
(こばやしくんのめいあんにすっかりかんしんなさって、おかあさまに)
小林君の名案にすっかり感心なさって、おかあさまに
(そうだんなさいました。おかあさまも、はんたいするりゆうが)
相談なさいました。おかあさまも、反対する理由が
(ないものですから、しかたなくさんせいなさいましたが、)
ないものですから、仕方なく賛成なさいましたが、
(「でも、そのつれてきたおとこのこをどうしますの。)
「でも、その連れて来た男の子をどうしますの。
(そのおこさんに、もしものことがあったら、こまるじゃ)
そのお子さんに、もしものことがあったら、困るじゃ
(ありませんか」と、ささやきごえでおっしゃるのです。)
ありませんか」 と、ささやき声でおっしゃるのです。
(「それはだいじょうぶですよ。あのくろいやつはみどりちゃんの)
「それは大丈夫ですよ。あの黒いやつは緑ちゃんの
(ほかのこはみむきもしないんですもの。たとえ)
ほかの子は見向きもしないんですもの。たとえ
(さらわれたってきけんはないんだし、それに、)
さらわれたって危険はないんだし、それに、
(すぐあとから、またこばやしさんがむかえにくるって)
すぐあとから、また小林さんが迎えに来るって
(いうんです。そしてね、もういっちゃく、にたようなおとこの)
いうんです。そしてね、もう一着、似たような男の
(こどもふくをよういしておいてね、それをきせてつれて)
子ども服を用意しておいてね、それを着せて連れて
(かえるんだっていいますから、おなじようなおとこのこがにど)
帰るんだって言いますから、同じような男の子が二度
(もんをでるわけですね。おもしろいでしょう。)
門を出るわけですね。面白いでしょう。
(わるものは、めんくらうでしょうね」このはじめくんのせつめいで、)
悪者は、面食らうでしょうね」 この始君の説明で、
(おかあさまも、やっとなっとくなさいましたので、はじめくんは)
おかあさまも、やっと納得なさいましたので、始君は
(さっそく、あけちじむしょへでんわをかけて、あらかじめ)
早速、明智事務所へ電話をかけて、あらかじめ
(うちあわせておいたあんごうで、こばやししょうねんにこのことを)
打ち合わせておいた暗号で、小林少年にこのことを
(つたえました。さてこばやしくんが、みどりちゃんくらいの)
伝えました。 さて小林君が、緑ちゃんくらいの
(せかっこうのかわいらしいおとこのこをつれて、)
背かっこうのかわいらしい男の子を連れて、
(しのざきけへやってきたのは、もうひがくれたころでした。)
篠崎家へやって来たのは、もう日が暮れた頃でした。
(すぐさまおくのへやをしめきって、みどりちゃんのへんそうが)
すぐさま奥の部屋をしめきって、緑ちゃんの変装が
(おこなわれました。かわいらしいじゃけっとをきて、)
おこなわれました。かわいらしいジャケットを着て、
(おかっぱのかみのけはおおきなぼうしのなかへかくして、)
おかっぱの髪の毛は大きな帽子の中へ隠して、
(たちまちいさましいおとこのこができあがりました。)
たちまち勇ましい男の子ができあがりました。
(まだいつつのみどりちゃんは、なにもわけがわからない)
まだ五つの緑ちゃんは、何もわけがわからない
(ものですから、うまれてからいちどもきたことのない)
ものですから、生まれてから一度も着たことのない
(じゃけっとをきて、おおよろこびです。すっかりしたくが)
ジャケットを着て、大喜びです。 すっかり支度が
(できますと、みどりちゃんにはしながわのおばさんのところへ)
できますと、緑ちゃんには品川のおばさんの所へ
(いくんだからと、よくいいきかせたうえ、こばやしくんは)
行くんだからと、よく言い聞かせた上、小林君は
(しのざきくんのおとうさまから、おばさんにあてた)
篠崎君のおとうさまから、おばさんに宛てた
(いらいじょうを、たいせつにぽけっとにいれて、みどりちゃんの)
依頼状を、大切にポケットに入れて、緑ちゃんの
(てをひいて、わざとひとめにふれるように、もんのそとへ)
手を引いて、わざと人目にふれるように、門の外へ
(でていきました。もんのそとには、もうちゃんとじどうしゃが)
出ていきました。 門の外には、もうちゃんと自動車が
(まっています。こばやしくんはみどりちゃんをだいて、ひしょの)
待っています。小林君は緑ちゃんを抱いて、秘書の
(いまいくんがあけてくれたどあのなかへはいり、きゃくせきにこしかけ)
今井君があけてくれたドアの中へ入り、客席に腰掛け
(ました。つづいて、いまいくんもじょしゅせきにつき、くるまは)
ました。続いて、今井君も助手席につき、車は
(えんじんのおともしずかにしゅっぱつしました。もうそとは、)
エンジンの音も静かに出発しました。 もう外は、
(ほとんどくらくなっていました。みちゆくひともおぼろげ)
ほとんど暗くなっていました。道ゆく人もおぼろげ
(です。じどうしゃはしばらくでんしゃみちをとおっていましたが、)
です。自動車はしばらく電車道を通っていましたが、
(やがて、さびしいよこちょうにおれ、ひじょうなそくどではしって)
やがて、さびしい横町に折れ、非常な速度で走って
(います。みていると、りょうがわのみんかがだんだんまばらに)
います。 見ていると、両側の民家が段々まばらに
(なり、ひどくさびしいばしょへさしかかりました。)
なり、ひどくさびしい場所へ差し掛かりました。
(「うんてんしゅさん、ほうこうがちがいやしないかい」こばやしくんは、)
「運転手さん、方向が違いやしないかい」 小林君は、
(みょうにおもってこえをかけました。しかしうんてんしゅは、)
みょうに思って声をかけました。 しかし運転手は、
(まるでみみがきこえないひとかのように、なんのへんじも)
まるで耳が聞こえない人かのように、なんの返事も
(しないのです。「おい、うんてんしゅさん、きこえない)
しないのです。「おい、運転手さん、聞こえない
(のか」こばやしくんは、おもわずおおごえでどなりつけて、)
のか」小林君は、思わず大声でどなりつけて、
(うんてんしゅのかたをたたきました。すると、「よくきこえて)
運転手の肩を叩きました。すると、「よく聞こえて
(います」というへんじといっしょに、うんてんしゅといまいくんが、)
います」 という返事と一緒に、運転手と今井君が、
(ひょいとうしろをふりむきました。ああ、そのかお。)
ヒョイとうしろを振り向きました。 ああ、その顔。
(うんてんしゅもいまいくんも、まるでえんとつのなかからはいだした)
運転手も今井君も、まるで煙突の中から這い出した
(ように、まっくろなかおをしていたではありませんか。)
ように、真っ黒な顔をしていたではありませんか。
(そしてふたりは、もうしあわせでもしたように、どうじに)
そして二人は、申し合わせでもしたように、同時に
(まっしろなはをむきだして、あのぞっとそうけだつような)
真っ白な歯をむきだして、あのゾッと総毛立つような
(わらいで、けらけらけらとわらいました。どくしゃしょくん、)
笑いで、ケラケラケラと笑いました。読者諸君、
(それはふたりのいんどじんだったのです。)
それは二人のインド人だったのです。
(しかしうんてんしゅは、ともかく、いまいくんまでが、)
しかし運転手は、ともかく、今井君までが、
(ついさきほどじどうしゃのどあをあけてくれたいまいくん)
ついさきほど自動車のドアをあけてくれた今井君
(までが、いつのまにかくろいまものにかわってしまった)
までが、いつのまにか黒い魔物に変わってしまった
(のです。まったくふかのうなことです。これも、)
のです。まったく不可能なことです。これも、
(あのいんどじんだけがしっている、まかふしぎのようじゅつ)
あのインド人だけが知っている、摩訶不思議の妖術
(なのでしょうか。)
なのでしょうか。