『少年探偵団』江戸川乱歩38

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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問題文

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(かどのろうじんにばけたにじゅうめんそうはひとびとのゆだんをみこして、)

門野老人に化けた二十面相は人々の油断を見越して、

(ぱっとぬけあなのなかにとびこみますと、せまいあなのなかを)

パッと抜け穴の中に飛び込みますと、せまい穴の中を

(はうようにして、まるでもぐらのようなかっこうで、)

這うようにして、まるでモグラのようなかっこうで、

(はんたいのでぐちへといそぎました。とけいてんのうらどおりにある)

反対の出口へと急ぎました。 時計店の裏通りにある

(あきやは、おくざしきからせまいにわとへいをへだてて)

空き家は、奥座敷からせまい庭と塀をへだてて

(すぐのところにあるのですから、ぬけあなのながさは)

すぐの所にあるのですから、抜け穴の長さは

(にじゅうめーとるほどしかありません。にじゅうめんそうは、まず)

二十メートルほどしかありません。二十面相は、まず

(そのあきやをかりたうえ、ぶかにめいじてひとにしられない)

その空き家を借りた上、部下に命じて人に知られない

(ように、おおいそぎでぬけあなをほらせたのです。)

ように、大急ぎで抜け穴を掘らせたのです。

(ですから、うちがわをいしがきやれんができずくひまはなく、)

ですから、内側を石垣やレンガで築くひまはなく、

(ちょうどきゅうしきのたんこうのように、まるたのわくでつちが)

ちょうど旧式の炭坑のように、丸太の枠で土が

(おちるのをふせいでいるという、みすぼらしいぬけあな)

落ちるのをふせいでいるという、みすぼらしい抜け穴

(です。ひろさも、やっとひとりがはってあるけるほどしか)

です。広さも、やっと一人が這って歩けるほどしか

(ありません。にじゅうめんそうはつちまみれになって、そこを)

ありません。 二十面相は土まみれになって、そこを

(はっていきましたが、あきやのでぐちちかくまでくると、)

這って行きましたが、空き家の出口近くまで来ると、

(ひょいとそとをのぞいたかとおもうと、なにかぎょっとした)

ヒョイと外をのぞいたかと思うと、何かギョッとした

(ようすでくびをひっこめてしまいました。「ちくしょう、)

様子で首をひっこめてしまいました。「ちくしょう、

(もうたいきしてやがるのか」かれはいまいましそうにしたうち)

もう待機してやがるのか」彼は忌々しそうに舌打ち

(して、しかたなくあともどりをはじめました。あなのそとのくらやみの)

して、仕方なく後戻りを始めました。 穴の外の暗闇の

(なかに、おおぜいのくろいひとかげがみえたのです。しかも、)

中に、大勢の黒い人影が見えたのです。しかも、

など

(それがみんなせいふくのけいかんらしく、せいぼうとけんじゅうが、)

それがみんな制服の警官らしく、制帽と拳銃が、

(やみのなかでも、かすかにぴかぴかひかってみえたのです。)

闇の中でも、かすかにピカピカ光って見えたのです。

(ああ、にじゅうめんそうはとうとう、ふくろのねずみになって)

ああ、二十面相はとうとう、袋のネズミになって

(しまいました。いや、あなのなかのもぐらになってしまい)

しまいました。いや、穴の中のモグラになってしまい

(ました。さすがのぞくも、もはやうんのつきです。)

ました。さすがの賊も、もはや運のつきです。

(まえにすすめばごにんのけいかん。うしろにもどれば、だれよりも)

前に進めば五人の警官。後ろに戻れば、だれよりも

(こわいあけちめいたんていがまちかまえているのです。すすむことも)

怖い明智名探偵が待ち構えているのです。進むことも

(しりぞくこともできません。かといって、もぐらでは)

しりぞくことも出来ません。かといって、モグラでは

(ないにじゅうめんそうは、こんなじめじめしたまっくらな)

ない二十面相は、こんなジメジメした真っ暗な

(あなのなかに、いつまでじっとしていられましょう。)

穴の中に、いつまでジッとしていられましょう。

(しかし、なぜかかいとうにはこまったようすもみえません。)

しかし、なぜか怪盗には困った様子も見えません。

(かれはやみのなかを、ぬけあなのとちゅうまでひきかえしますと、)

彼は闇の中を、抜け穴の途中まで引き返しますと、

(そこのかべのくぼみになったかしょから、なにかふろしきづつみ)

そこの壁のくぼみになった箇所から、何か風呂敷包み

(のようなものをとりだしました。「へへん、どうだ。)

のようなものを取り出しました。「へへん、どうだ。

(にじゅうめんそうはどんなことがあったって、へこたれや)

二十面相はどんなことがあったって、へこたれや

(しないぞ。てきがごならばこちらはじゅうだ。じゅうならば)

しないぞ。敵が五ならばこちらは十だ。十ならば

(にじゅうだ。ここにこんなよういがしてあろうとは、)

二十だ。ここにこんな用意がしてあろうとは、

(さすがのめいたんていもごぞんじあるまい。にじゅうめんそうの)

さすがの名探偵もご存知あるまい。二十面相の

(じしょに、ふかのうのもじはないっていうわけさ。)

辞書に、不可能の文字はないっていうわけさ。

(ふふふ」かれは、そんなじぶんかってなひとりごとを)

フフフ」 彼は、そんな自分勝手な独り言を

(いいながら、ふろしきづつみのようなものをひらき)

言いながら、風呂敷包みのようなものをひらき

(ました。すると、そのなかからけいかんのせいふくやせいぼう、)

ました。すると、その中から警官の制服や制帽、

(けいぼう、くつなどがあらわれました。ああ、なんという)

警棒、靴などが現れました。 ああ、なんという

(ようじんぶかさでしょう。まんがいちのためにかれは、ぬけあなの)

用心深さでしょう。万が一のために彼は、抜け穴の

(なかに、こんなへんそうようのいしょうをかくしておいたのです。)

中に、こんな変装用の衣装を隠しておいたのです。

(「おっと、わすれちゃいけない。まずかみのけのせんりょうと)

「おっと、忘れちゃいけない。まず髪の毛の染料と

(かおのしわをおとさなくっちゃあ」にじゅうめんそうはじょうだん)

顔のシワを落とさなくっちゃあ」 二十面相は冗談

(のようにつぶやきながら、かいちゅうからぎんいろのけーすを)

のようにつぶやきながら、懐中から銀色のケースを

(とりだし、あぶらをしみこませたわたをちぎって、)

取り出し、油をしみこませたワタをちぎって、

(あたまとかおをていねいにふきとるのです。)

頭と顔をていねいに拭き取るのです。

(わたをちぎってはふき、ちぎってはふきをなんどとなく)

ワタをちぎっては拭き、ちぎっては拭きを何度となく

(くりかえしているうちに、ろうじんのしらがあたまは、)

繰り返しているうちに、老人のしらが頭は、

(いつのまにかくろぐろとしたとうはつになり、かおのしわも)

いつのまにか黒々とした頭髪になり、顔のシワも

(あとかたもなくとれて、わかわかしいせいねんにかわってしまい)

跡形もなく取れて、若々しい青年に変わってしまい

(ました。「これでよしと。さあ、いよいよ)

ました。「これでよしと。さあ、いよいよ

(おまわりさんになるんだ。どろぼうがおまわりさんに)

おまわりさんになるんだ。泥棒がおまわりさんに

(はやがわりするのさ」にじゅうめんそうは、きゅうくつなやみの)

早変わりするのさ」 二十面相は、きゅうくつな闇の

(なかできがえをしながら、さもうれしくてたまらない)

中で着替えをしながら、さも嬉しくてたまらない

(というように、ひくくくちぶえさえふきはじめるのでした。)

というように、低く口笛さえ吹き始めるのでした。

(うらのあきやというのは、にほんだてのしょうかでしたが、)

裏の空き家というのは、日本建ての商家でしたが、

(そのおくざしきも、ちょうどおおとりとけいてんのおくざしきとおなじ)

その奥座敷も、ちょうど大鳥時計店の奥座敷と同じ

(ように、いちまいのたたみがあげられてゆかいたもはずされ、)

ように、一枚の畳が上げられて床板も外され、

(そのしたにくろいつちがあらわれていました。そのつちの)

その下に黒い土が現れていました。 その土の

(まんなかにはてっぱんのふたはなく、ぽっかりとぬけあなの)

真ん中には鉄板のフタはなく、ポッカリと抜け穴の

(くちがおおきくひらいているのです。ぬけあなのまわりには、)

口が大きくひらいているのです。 抜け穴の周りには、

(ごめいのせいふくけいかんがたいきしております。あるものはゆかしたに)

五名の制服警官が待機しております。ある者は床下に

(たったり、あるものはたたみにこしかけたり、あるものはざしきに)

立ったり、ある者は畳に腰掛けたり、ある者は座敷に

(つったったりして、じっとみはりをつづけていました。)

突っ立ったりして、ジッと見張りを続けていました。

(むろん、でんとうはつけず、いざというときのために、なかの)

無論、電灯はつけず、いざという時のために、中の

(ふたりだけがかいちゅうでんとうをもっています。「あけちさんが)

二人だけが懐中電灯を持っています。「明智さんが

(もうすこしはやく、このぬけあなをはっけんしてくれたら、)

もう少し早く、この抜け穴を発見してくれたら、

(とうをぬすみだしたてしたのやつも、ひっとらえることが)

塔を盗み出した手下のやつも、ひっとらえることが

(できたんだがなあ」ひとりのけいかんがささやきごえで、)

出来たんだがなあ」 一人の警官がささやき声で、

(ざんねんそうにいいました。「だが、にじゅうめんそうさえ、)

残念そうに言いました。「だが、二十面相さえ、

(とらえてしまえば、てしたなんかいちもうだじんだよ。)

とらえてしまえば、手下なんか一網打尽だよ。

(それにぬすまれたとうはにせものだっていうじゃないか。)

それに盗まれた塔は偽物だっていうじゃないか。

(ともかくおやだまさえつかまえてしまえば、こっちの)

ともかく親玉さえつかまえてしまえば、こっちの

(もんだ。ああ、はやくでてこないかなあ」べつのけいかんが)

もんだ。ああ、早く出てこないかなあ」 別の警官が

(うでをさすりながら、まちどおしそうにこたえるのです。)

腕をさすりながら、待ち遠しそうに答えるのです。

(たばこをすうのもえんりょして、じっとくらやみのなかでまって)

タバコを吸うのも遠慮して、ジッと暗闇の中で待って

(いるまちどおしさといったら。まるでじかんがとまって)

いる待ち遠しさといったら。まるで時間が止まって

(しまったかのようなかんじです。「おい、なにかおとがした)

しまったかのような感じです。「おい、何か音がした

(ようだぜ」「え、どこで」おもわずかいちゅうでんとうをつかんで)

ようだぜ」「え、どこで」 思わず懐中電灯をつかんで

(たちあがったことが、なんどあったでしょう。)

立ち上がったことが、何度あったでしょう。

(「なあんだ、ねずみじゃないか」とうのにじゅうめんそうは、)

「なあんだ、ネズミじゃないか」 当の二十面相は、

(いつまでたってもすがたをあらわさないのでした。しかし、)

いつまでたっても姿を現さないのでした。 しかし、

(おお、こんどはにんげんです。にんげんがあなのなかからはいだして)

おお、今度は人間です。人間が穴の中から這い出して

(くるものおとです。さらさらとつちのくずれるおと、)

来る物音です。サラサラと土の崩れる音、

(はっはっといういきづかい。いよいよにじゅうめんそうがやってきた)

ハッハッという息遣い。いよいよ二十面相がやって来た

(のです。ごめいのけいかんはいっせいにたちあがって、みがまえ)

のです。 五名の警官は一斉に立ち上がって、身構え

(ました。ふたつのかいちゅうでんとうのまるいひかりが、さゆうからぱっと)

ました。二つの懐中電灯の丸い光が、左右からパッと

(あなのいりぐちをてらしました。「おい、ぼくだよ、)

穴の入り口を照らしました。「おい、ぼくだよ、

(ぼく」いがいにも、あなからはいだしてきたじんぶつは、)

ぼく」 意外にも、穴から這い出して来た人物は、

(したしそうにこえをかけてきたのです。)

親しそうに声をかけてきたのです。

(それはかいとうではなく、ひとりのわかいけいかんだったのです。)

それは怪盗ではなく、一人の若い警官だったのです。

(みしらないかおですが、きっとこのくのけいさつしょの)

見知らない顔ですが、きっとこの区の警察署の

(けいかんなのでしょう。)

警官なのでしょう。

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