『少年探偵団』江戸川乱歩39

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少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第2作品『少年探偵団』
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1 berry 8254 8.3 98.4% 527.6 4426 71 100 2024/03/24

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問題文

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(「ぞくはどうしました。にげたんですか」みはりを)

「賊はどうしました。逃げたんですか」 見張りを

(していたけいかんのひとりが、ふしんそうにたずねました。)

していた警官の一人が、不審そうにたずねました。

(「いや、もうとらえました。あけちさんのてびきで、)

「いや、もうとらえました。明智さんの手引きで、

(ぼくのしょのものが、しゅびよくたいほしたのです。)

ぼくの署の者が、首尾よく逮捕したのです。

(あなたがたもはやくあちらへいってください。)

あなたがたも早くあちらへ行ってください。

(ぼくは、このぬけあなのけんぶんをまかされたのです。)

ぼくは、この抜け穴の検分を任されたのです。

(もしやどうるいがかくれてやしないかというね。しかし、)

もしや同類が隠れてやしないかというね。しかし、

(だれもいなかったですよ」わかいけいかんは、てじょうを)

だれもいなかったですよ」 若い警官は、手錠を

(がちゃがちゃいわせながら、やっとあなからはい)

ガチャガチャいわせながら、やっと穴から這い

(だして、ごにんのまえにたちました。「なあんだ、)

出して、五人の前に立ちました。「なあんだ、

(もうたいほしたのか」こちらは、せっかくいきごんで)

もう逮捕したのか」 こちらは、せっかく意気込んで

(いたのにむだになったとしると、がっかりしてしまい)

いたのに無駄になったと知ると、ガッカリしてしまい

(ました。いや、がっかりしたというよりも、たしょの)

ました。いや、ガッカリしたというよりも、他署の

(ものにてがらをうばわれて、すこしふまんなのです。「あけちさん)

者に手柄を奪われて、少し不満なのです。「明智さん

(からあなたがたに、もうみはりはしなくていいから、)

からあなたがたに、もう見張りはしなくていいから、

(はやくこちらへきてくださいという、でんごんをあずかって)

早くこちらへ来てくださいという、伝言を預かって

(きたのですが。ぼくはちょっと、しょまでようじが)

来たのですが。ぼくはちょっと、署まで用事が

(ありますので、これでしつれいします」わかいけいかんは)

ありますので、これで失礼します」 若い警官は

(てきぱきいって、くらやみのなかをぐんぐんすすんでいき、)

テキパキ言って、暗闇の中をグングン進んで行き、

(あきやのおもてぐちのほうへあるいていきました。)

空き家の表口のほうへ歩いて行きました。

など

(とりのこされたごにんのけいかんは、なんとなくふゆかいな)

取り残された五人の警官は、何となく不愉快な

(きもちで、きゅうにうごくきにもなれず、「なあんだ、)

気持ちで、急に動く気にもなれず、「なあんだ、

(つまらない」などとつぶやきながら、ぐずぐずして)

つまらない」 などとつぶやきながら、グズグズして

(いましたが、やがて、そのなかのひとりがはっときづいた)

いましたが、やがて、その中の一人がハッと気づいた

(ようにさけびました。「おい、へんだぜ。あのおとこ、)

ように叫びました。「おい、変だぜ。あの男、

(ぬけあなのちょうさをめいじられたといいながら、ほうこくも)

抜け穴の調査を命じられたと言いながら、報告も

(しないでしょにかえるなんて、すこしつじつまがあわない)

しないで署に帰るなんて、少しつじつまが合わない

(じゃないか」「そういえば、おかしいね。あいつ、)

じゃないか」「そういえば、おかしいね。あいつ、

(あなのなかをしらべるのに、かいちゅうでんとうもつけていなかった)

穴の中を調べるのに、懐中電灯もつけていなかった

(じゃないか」けいかんたちは、なんともいえないみょうな)

じゃないか」 警官たちは、なんともいえないみょうな

(ふあんにおそわれはじめました。「おい、にじゅうめんそうという)

不安におそわれ始めました。「おい、二十面相という

(やつは、なんにだってばけるんだぜ。いつかのときには)

やつは、なんにだって化けるんだぜ。いつかの時には

(こくりつはくぶつかんちょうにさえばけたんだ。もしや、さっきの)

国立博物館長にさえ化けたんだ。もしや、さっきの

(やつはほんとうのけいかんではないんじゃないか」)

やつは本当の警官ではないんじゃないか」

(「え、なんだって。それじゃ、あいつがにじゅうめんそう)

「え、なんだって。それじゃ、あいつが二十面相

(だっていうのか」「おい、おっかけてみよう。もし、)

だっていうのか」「おい、追っかけてみよう。もし、

(そうだったら、ぼくらはかかりちょうにあわすかおがないぜ」)

そうだったら、ぼくらは係長にあわす顔がないぜ」

(「よし、おっかけろ。ちくしょうにがすものか」)

「よし、追っかけろ。ちくしょう逃がすものか」

(ごにんはあわただしくあきやのいりぐちにかけだして、)

五人は慌ただしく空き家の入り口に駆け出して、

(しんやのまちをみわたしました。「あ、あそこをはしって)

深夜の町を見渡しました。「あ、あそこを走って

(いる。ためしによんでみようじゃないか」そこで)

いる。ためしに呼んでみようじゃないか」 そこで

(いちどうがこえをそろえて、「おーい、おーい」とどなった)

一同が声をそろえて、「オーイ、オーイ」とどなった

(のですが、それをききつけたあいてはひょいと)

のですが、それを聞きつけた相手はヒョイと

(ふりかえったかとおもうと、たちどまるどころか、)

振り返ったかと思うと、立ち止まるどころか、

(かそくしていちもくさんににげだしたではありませんか。)

加速して一目散に逃げ出したではありませんか。

(「あ、やっぱりそうだ。あいつだ。あいつが)

「あ、やっぱりそうだ。あいつだ。あいつが

(にじゅうめんそうだ」「ちくしょう、にがすものか」ごにんは)

二十面相だ」「ちくしょう、にがすものか」 五人は

(すぐさまはしりだしました。いちじすぎのまよなかです。)

すぐさま走り出しました。 一時過ぎの真夜中です。

(ひるまは、にぎやかだったしょうてんがいもはいきょのようにしずまり)

昼間は、にぎやかだった商店街も廃墟のように静まり

(かえり、ひかりはまばらにたちならぶがいとうだけで、ひとっこひとり)

返り、光はまばらに立ち並ぶ街灯だけで、人っ子一人

(とおらないあすふぁるとのみちがはるかにやみのなかへきえて)

通らないアスファルトの道が遥かに闇の中へ消えて

(います。そんななか、にげるひとりのけいかんと、おいかける)

います。 そんな中、逃げる一人の警官と、追いかける

(ごにんのけいかん。きつねにでもつままれたようなきみょうな)

五人の警官。キツネにでもつままれたような奇妙な

(ついせきがはじまりました。わかいけいかんは、おそろしくあしが)

追跡が始まりました。若い警官は、おそろしく足が

(はやいです。まちかどにくるたび、みぎやひだりにまがったり)

早いです。町角に来るたび、右や左に曲がったり

(して、おってをまこうとします。そして、)

して、追っ手をまこうとします。 そして、

(ちゅうおうくないの、とあるちいさなこうえんのへいのそとに)

中央区内の、とある小さな公園の塀の外に

(さしかかりました。みぎがわはこうえんのこんくりーとべい、)

さしかかりました。右側は公園のコンクリート塀、

(ひだりがわはかわにめんしている、さびしいばしょです。)

左側は川に面している、寂しい場所です。

(にじゅうめんそうは、そこまではしってきますと、ひょいと)

二十面相は、そこまで走ってきますと、ヒョイと

(たちどまって、うしろをふりかえりましたが、ごにんの)

立ち止まって、うしろを振り返りましたが、五人の

(おまわりさんはまだまちかどのむこうがわをはしっていると)

おまわりさんはまだ町角の向こう側を走っていると

(みえて、おってらしいすがたはどこにもみえません。)

みえて、追っ手らしい姿はどこにも見えません。

(それをたしかめたうえ、にじゅうめんそうはなにをおもったのか、)

それを確かめた上、二十面相は何を思ったのか、

(いきなりそこにうずくまって、じめんにてをかけ、)

いきなりそこにうずくまって、地面に手をかけ、

(りきみますと、ちょっけいごじゅっせんちほどのまるいてっぱんが)

りきみますと、直径五十センチほどの丸い鉄板が

(もちあがり、そのしたにおおきなくろいあながあきました。)

持ち上がり、その下に大きな黒い穴があきました。

(それは、すいどうのまんほーるなのです。とうきょうの)

それは、水道のマンホールなのです。 東京の

(どくしゃしょくんは、ぎょうしゃのひとたちがあのまるいてつのふたを)

読者諸君は、業者の人たちがあの丸い鉄のフタを

(とって、ちちゅうへもぐりこんでこうじをしているのを、よく)

取って、地中へ潜り込んで工事をしているのを、よく

(みかけることがあるでしょう。いま、にじゅうめんそうは、)

見かけることがあるでしょう。今、二十面相は、

(そのてつのふたをひらいたのです。そしてひょいと)

その鉄のフタをひらいたのです。そしてヒョイと

(そこへとびこむと、すばやくなかからふたをしめてしまい)

そこへ飛び込むと、素早く中からフタをしめてしまい

(ました。てつのふたがしまるのと、ごにんの)

ました。 鉄のフタがしまるのと、五人の

(おまわりさんがまちかどをまがるのは、ほとんどどうじ)

おまわりさんが町角を曲がるのは、ほとんど同時

(でした。「おや、へんだぞ。たしかにあいつはここを)

でした。「おや、変だぞ。確かにあいつはここを

(まがったんだが」おまわりさんたちはたちどまって、)

曲がったんだが」 おまわりさんたちは立ち止まって、

(しんだようにしずまりかえったよふけのまちをみわたし)

死んだように静まり返った夜ふけの町を見渡し

(ました。「むこうのまがりかどまではひゃくめーとるいじょうも)

ました。「向こうの曲がり角までは百メートル以上も

(あるんだから、そんなにはやくすがたがみえなくなるはずは)

あるんだから、そんなに早く姿が見えなくなるはずは

(ない。へいをのりこえて、こうえんのなかへかくれたん)

ない。塀を乗り越えて、公園の中へ隠れたん

(じゃないか」「それか、かわへとびこんだのか」そんな)

じゃないか」「それか、川へ飛び込んだのか」 そんな

(ことをいって、おまわりさんたちはちゅういぶかくさゆうを)

ことを言って、おまわりさんたちは注意深く左右を

(みまわしながら、いそぎあしでれいのまんほーるのうえをとおり)

見回しながら、急ぎ足で例のマンホールの上を通り

(すぎて、こうえんのいりぐちのほうへとおざかっていきました。)

過ぎて、公園の入り口のほうへ遠ざかっていきました。

(まんほーるのふたはごにんのくつでふまれるたびに、)

マンホールのフタは五人の靴で踏まれるたびに、

(がんがんにぶいおとをたてました。おまわりさん)

ガンガンにぶい音をたてました。おまわりさん

(たちは、そうしてにじゅうめんそうのあたまのうえをとおりながら、)

たちは、そうして二十面相の頭の上を通りながら、

(すこしもそれにきづかなかったのです。とうきょうのひとは、)

少しもそれに気づかなかったのです。東京の人は、

(まんほーるなどにはなれっこになっていて、そのうえを)

マンホールなどには馴れっこになっていて、その上を

(あるいていてもきがつかないことがおおいでしょう。)

歩いていても気がつかないことが多いでしょう。

(ごにんのけいかんがいきしょうちんして、おおとりとけいてんにかえり、)

五人の警官が意気消沈して、大鳥時計店に帰り、

(ことのしだいをあけちにほうこくしたのは、それからにじゅっぷんご)

事の次第を明智に報告したのは、それから二十分後

(のことでした。それをきいて、あけちたんていはしつぼうした)

のことでした。 それを聞いて、明智探偵は失望した

(でしょうか。それとも、こえをあらげたでしょうか。)

でしょうか。それとも、声を荒げたでしょうか。

(いやいや、けっしてそうではありませんでした。)

いやいや、決してそうではありませんでした。

(どくしゃしょくん、ごあんしんください。われわれのめいたんていは、)

読者諸君、ご安心ください。我々の名探偵は、

(これしきのしっぱいにゆうきをうしなうようなじんぶつでは)

これしきの失敗に勇気を失うような人物では

(ありません。かれのすばらしいのうないには、まだまだ)

ありません。彼の素晴らしい脳内には、まだまだ

(とっておきのおくのてがよういされていたのです。)

とっておきの奥の手が用意されていたのです。

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