『妖怪博士』江戸川乱歩37
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7025 | 王 | 7.2 | 97.3% | 623.9 | 4504 | 121 | 100 | 2024/10/08 |
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問題文
(「ありがとう。それをきいて、わたしもあんしんしました。)
「ありがとう。それを聞いて、私も安心しました。
(しかし、いったいどうやってのぶおをとりもどすのですか。)
しかし、一体どうやって信雄を取り戻すのですか。
(あなたには、にじゅうめんそうのかくれががおわかりになって)
あなたには、二十面相の隠れ家がお分かりになって
(いるのですか」「いや、それはぼくにも、まったく)
いるのですか」「いや、それはぼくにも、まったく
(わかりません」「では、どうするのです。わたしには、)
分かりません」「では、どうするのです。私には、
(あなたのかんがえがさっぱりわかりません」「あいつは)
あなたの考えがさっぱり分かりません」「あいつは
(せっしゅうのかけじくとひきかえに、のぶおくんをかえすといった)
雪舟の掛け軸と引き換えに、信雄君を返すと言った
(のでしょう」「そうですよ。それですから、あのえを)
のでしょう」「そうですよ。それですから、あの絵を
(わたさないかぎりは、のぶおをとりもどすしゅだんがないように)
渡さない限りは、信雄を取り戻す手段がないように
(おもわれますが」「ですから、そのかけじくをわたしてやる)
思われますが」「ですから、その掛け軸を渡してやる
(のです」「え、なんですって。それじゃ、かほうを)
のです」「え、なんですって。それじゃ、家宝を
(あきらめろとおっしゃるのですか」「いや、せっしゅうの)
諦めろとおっしゃるのですか」「いや、雪舟の
(かけじくをわたすのではありません。それとにた、べつの)
掛け軸を渡すのではありません。それと似た、別の
(かけじくでいいのです。おたくには、ぞくにやってもおしく)
掛け軸でいいのです。お宅には、賊にやっても惜しく
(ないようなかけじくがあるでしょう。そのなかから、)
ないような掛け軸があるでしょう。その中から、
(せっしゅうのかけじくによくにたやつをえらんで、かえだまにつかう)
雪舟の掛け軸によく似たやつを選んで、替え玉に使う
(のです」「なるほど、それはうまいかんがえですが、)
のです」「なるほど、それはうまい考えですが、
(あいつがそんなてにのるでしょうかね。なかみを)
あいつがそんな手に乗るでしょうかね。中身を
(みないでうけとるようなへまをやるでしょうか」)
見ないで受け取るようなヘマをやるでしょうか」
(「ははは、ふつうにわたせば、むろんばれてしまいますよ。)
「ハハハ、普通に渡せば、無論バレてしまいますよ。
(ちょっとてじなをつかうのです。にじゅうめんそうも、なかなかの)
ちょっと手品を使うのです。二十面相も、なかなかの
(てじなつかいですが、ぼくもあいつにひけはとらない)
手品使いですが、ぼくもあいつに引けは取らない
(つもりです。まあ、おまかせください」「しかし、)
つもりです。まあ、お任せください」「しかし、
(てじなをつかうといっても、そのかけじくはわたしじしんで)
手品を使うといっても、その掛け軸は私自身で
(もっていかなければならないのですが。わたしにそんな)
持って行かなければならないのですが。私にそんな
(てじながつかえるでしょうか」「ははは、いや、あなた)
手品が使えるでしょうか」「ハハハ、いや、あなた
(では、しつれいながらだめですよ。そのげいとうは、ぼくで)
では、失礼ながらダメですよ。その芸当は、ぼくで
(なければできないのです」「でも、あなたにだいりを)
なければ出来ないのです」「でも、あなたに代理を
(おねがいするわけにはいかないのですよ。わたしじしんでもって)
お願いする訳にはいかないのですよ。私自身で持って
(いかなければ、けっしてのぶおをかえさないというのです」)
いかなければ、決して信雄を返さないと言うのです」
(「それにはくふうがあります。ぼくは、こういうことも)
「それには工夫があります。ぼくは、こういうことも
(あろうかと、ちゃんとよういしてきたのです。ここに、)
あろうかと、ちゃんと用意して来たのです。ここに、
(そのどうぐがはいっているのですよ」あけちは、ひざの)
その道具が入っているのですよ」 明智は、ひざの
(そばにおいてあるちいさなかばんをてにとって、)
そばに置いてある小さなカバンを手に取って、
(「ちょっと、おくさんのけしょうしつをはいしゃくねがえませんか」と)
「ちょっと、奥さんの化粧室を拝借願えませんか」と
(みょうなことをいうのです。「え、けしょうしつですか。)
みょうなことを言うのです。「え、化粧室ですか。
(いったい、なにをなさるのです」「いや、いまにわかります。)
一体、何をなさるのです」「いや、今に分かります。
(それから、おくさんにおねがいしたいこともあります)
それから、奥さんにお願いしたいこともあります
(ので、ごしょうかいくださいませんか」こいずみしには、なにが)
ので、ご紹介くださいませんか」小泉氏には、なにが
(なんだかわけがわかりませんでしたが、これには)
なんだか訳が分かりませんでしたが、これには
(さぞかしじじょうがあるのだろうとおもい、いわれたとおりに)
さぞかし事情があるのだろうと思い、言われた通りに
(ふじんをよんで、あけちにしょうかいしたあと、けしょうしつへあんない)
夫人を呼んで、明智に紹介したあと、化粧室へ案内
(するようにめいじました。それからじゅうご、ろっぷんたったころ)
するように命じました。それから十五、六分経った頃
(でしょうか。こいずみしはざしきにすわったまま、たばこを)
でしょうか。小泉氏は座敷に座ったまま、タバコを
(すってまっていましたが、とつぜん、えんがわのしょうじが)
吸って待っていましたが、突然、縁側の障子が
(すーっとあいて、だれかがはいってきたのです。)
スーッとあいて、だれかが入って来たのです。
(こいずみしは、そのものおとがするほうへふりむきました。)
小泉氏は、その物音がする方へ振り向きました。
(そして、えんがわからはいってくるじんぶつをひとめみると、)
そして、縁側から入って来る人物を一目見ると、
(あっとみょうなさけびごえをたてて、おもわずたちあがって)
アッとみょうな叫び声をたてて、思わず立ち上がって
(しまいました。それもむりはありません。そこには、)
しまいました。それも無理はありません。そこには、
(こいずみしとかおからせかっこうまで、すんぶんちがわぬじんぶつが)
小泉氏と顔から背かっこうまで、寸分違わぬ人物が
(にこにこわらいながらつったっていたのです。まるで、)
ニコニコ笑いながら突っ立っていたのです。まるで、
(おおきなかがみでもみているように、すぐめのまえにじぶん)
大きな鏡でも見ているように、すぐ目の前に自分
(じしんのすがたがあらわれたのです。こいずみしは、じぶんのめが)
自身の姿が現れたのです。 小泉氏は、自分の目が
(どうかしたのではないかとうたがいました。ゆめでもみて)
どうかしたのではないかと疑いました。夢でも見て
(いるのではないかとあやしみました。しかし、ゆめでは)
いるのではないかと怪しみました。しかし、夢では
(ありません。そのもうひとりのじぶんは、つかつかと)
ありません。そのもう一人の自分は、ツカツカと
(ざしきにはいってきたかとおもうと、さっきまであけちが)
座敷に入って来たかと思うと、さっきまで明智が
(すわっていたざぶとんのうえに、ぴったりすわったでは)
座っていた座布団の上に、ピッタリ座ったでは
(ありませんか。「ははは、こいずみさん、みょうなかおを)
ありませんか。「ハハハ、小泉さん、みょうな顔を
(していらっしゃいますね。あなたにもみわけられない)
していらっしゃいますね。あなたにも見分けられない
(ほど、そんなにうまくへんそうできましたかねえ。ぼく)
ほど、そんなにうまく変装出来ましたかねえ。ぼく
(ですよ。あけちです」そのじんぶつはおかしそうにわらい)
ですよ。明智です」その人物はおかしそうに笑い
(ながら、たねあかしをしました。「ああ、そう)
ながら、タネ明かしをしました。「ああ、そう
(でしたか。これはおどろいた。わたしはじぶんのあたまがへんになった)
でしたか。これは驚いた。私は自分の頭が変になった
(のかと、びっくりしたほどですよ。じつによくできて)
のかと、ビックリしたほどですよ。実によく出来て
(います。まるで、かがみをみているようなきがします」)
います。まるで、鏡を見ているような気がします」
(「ははは、さっきおはなしをきいているあいだ、あなたの)
「ハハハ、さっきお話を聞いている間、あなたの
(かおのとくちょうをしっかりとこころにきざみつけておいたのです。)
顔の特徴をしっかりと心に刻み付けておいたのです。
(そしてよういしてきたつけひげをはったり、)
そして用意して来た付けヒゲを貼ったり、
(もじゃもじゃのあたまをうまくせっとしたり、)
モジャモジャの頭をうまくセットしたり、
(かおにへんそうようのけしょうをしたり、そのほかいろいろなひじゅつを)
顔に変装用の化粧をしたり、そのほか色々な秘術を
(つくしたのです。このきものとしたぎはおくさんにおねがい)
尽くしたのです。この着物と下着は奥さんにお願い
(して、あなたのをだしていただいたのですよ。)
して、あなたのを出していただいたのですよ。
(どうです、これならかえだまがつとまるでしょう」)
どうです、これなら替え玉が務まるでしょう」
(「おや、こえまでまねましたね。じつにおどろきました。)
「おや、声まで真似ましたね。実に驚きました。
(あなたに、これほどのへんそうのうでまえがあろうとは、)
あなたに、これほどの変装の腕前があろうとは、
(おもいもよりませんでしたよ。だいじょうぶです。それなら、)
思いもよりませんでしたよ。大丈夫です。それなら、
(どんなあいてだって、みやぶることはできないでしょう」)
どんな相手だって、見破ることは出来ないでしょう」
(「ははは、あなたがみとめてくだされば、これほど)
「ハハハ、あなたが認めてくだされば、これほど
(たしかなことはない。それじゃあ、このみなりで)
確かなことはない。それじゃあ、この身なりで
(あなたのかえだまになって、にじゅうめんそうのやつをおどろかせて)
あなたの替え玉になって、二十面相の奴を驚かせて
(やりますかな。ところで、こんどはかけじくのほうの)
やりますかな。ところで、今度は掛け軸のほうの
(かえだまですが、そのまえにせっしゅうのめいがというのをはいけん)
替え玉ですが、その前に雪舟の名画というのを拝見
(したいですね。そのうえで、なるべくあいてにきづかれ)
したいですね。その上で、なるべく相手に気づかれ
(ないようなかえだまをえらぶことにしましょう」「しょうち)
ないような替え玉を選ぶことにしましょう」「承知
(しました。じゃあ、わたしといっしょにくらのなかへおいで)
しました。じゃあ、私と一緒に蔵の中へおいで
(ください」こいずみしはあけちのみごとなへんそうぶりにすっかり)
ください」小泉氏は明智の見事な変装ぶりにすっかり
(かんしんして、このちょうしならすべてうまくいくにちがい)
感心して、この調子ならすべてうまくいくに違い
(ないと、もうほくほくもので、みずからかいちゅうでんとうを)
ないと、もうホクホクもので、みずから懐中電灯を
(もってせんとうにたつのでした。さすがにこくほうがおさめて)
持って先頭に立つのでした。 さすがに国宝が収めて
(あるだけに、くらのとじまりはじつにげんじゅうなものです。)
あるだけに、蔵の戸締まりは実に厳重なものです。
(まずじょうまえをはずしててつのおおとびらをひらき、そのうちがわのおもい)
まず錠前を外して鉄の大扉をひらき、その内側の重い
(かなあみばりのいたどをあけてくらのおくにはいっていくと、)
金網張りの板戸をあけて蔵の奥に入って行くと、
(そこにどっしりとおかれている、きんこのような)
そこにドッシリと置かれている、金庫のような
(こうてつせいのはこのあんごうもじをあわせて、ひらかなければ)
鋼鉄製の箱の暗号文字を合わせて、ひらかなければ
(ならないのです。こいずみしは、そのこうてつせいのはこのなか)
ならないのです。小泉氏は、その鋼鉄製の箱の中
(からほそながいきりのはこをとりだして、ていねいにそれを)
から細長いキリの箱を取り出して、ていねいにそれを
(ひらき、たからもののせっしゅうのかけじくをひろげて、あけちに)
ひらき、宝物の雪舟の掛け軸をひろげて、明智に
(みせるのでした。)
見せるのでした。