『妖怪博士』江戸川乱歩38
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | ヌオー | 5765 | A+ | 6.0 | 95.4% | 752.1 | 4554 | 218 | 100 | 2024/12/17 |
2 | baru | 4358 | C+ | 4.7 | 91.9% | 968.4 | 4627 | 406 | 100 | 2024/12/01 |
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問題文
(「ふーん、たいしたものですね。ぼくは、えのほうは)
「ふーん、大したものですね。ぼくは、絵のほうは
(まったくのしろうとですが、これほどのめいがになると、)
まったくの素人ですが、これほどの名画になると、
(やはりこころをうたれますね。この、みごとなふでづかいは)
やはり心を打たれますね。この、見事な筆遣いは
(どうでしょう。なるほど、これならにじゅうめんそうが)
どうでしょう。なるほど、これなら二十面相が
(ほしがるのもむりはありませんよ。あいつは、びじゅつに)
欲しがるのも無理はありませんよ。あいつは、美術に
(かけてはくろうとのかんしょうがんをもっているのですからね」)
かけては玄人の鑑賞眼を持っているのですからね」
(あけちは、こいずみしがひろげているかけじくのうえに)
明智は、小泉氏がひろげている掛け軸の上に
(かいちゅうでんとうをかざしながら、ふかくかんどうしたようにみいる)
懐中電灯をかざしながら、深く感動したように見入る
(のでした。「なにしろ、ななだいまえのせんぞからつたわって)
のでした。「なにしろ、七代前の先祖から伝わって
(いる、ゆいしょただしいしなですからね。わたしも、このかほうを)
いる、由緒正しい品ですからね。私も、この家宝を
(わたさずにすめば、こんなありがたいことはない)
渡さずに済めば、こんなありがたいことはない
(のです。もし、しゅびよくいきましたら、じゅうぶんおれいする)
のです。もし、首尾よくいきましたら、充分お礼する
(つもりです」「いや、そんなことは、ごしんぱいください)
つもりです」「いや、そんなことは、ご心配ください
(ませんように。こんかいのじけんは、あなたのためという)
ませんように。今回の事件は、あなたのためという
(よりは、ぼくじしんのふくしゅうのために、ぜがひでも)
よりは、ぼく自身の復讐のために、是が非でも
(あいつをやっつけなければがまんができないのです。)
あいつをやっつけなければ我慢が出来ないのです。
(では、このかけじくとおなじすんぽうの、なるべくがいけんのにた)
では、この掛け軸と同じ寸法の、なるべく外見の似た
(かえだまをさがしていただきましょうか」あけちがえのまえを)
替え玉を探していただきましょうか」 明智が絵の前を
(はなれると、こいずみしはかけじくをていねいにまきながら、)
離れると、小泉氏は掛け軸をていねいに巻きながら、
(「いや、それならば、もうちゃんとめぼしをつけて)
「いや、それならば、もうちゃんと目星をつけて
(います。まってください。えーと、これですよ。)
います。待ってください。えーと、これですよ。
(これはひょうそうだけりっぱですが、なもないがかのさくです。)
これは表装だけ立派ですが、名もない画家の作です。
(あいつにとられても、ぜんぜんおしくないしろものです」と、)
あいつに取られても、全然惜しくない代物です」と、
(くらのかべにとりつけたたなのうえから、うすぐろくよごれたきりの)
蔵の壁に取りつけた棚の上から、薄黒く汚れたキリの
(はこをとって、あけちにてわたすのです。あけちは、それを)
箱を取って、明智に手渡すのです。 明智は、それを
(ひらいてなかのかけじくをすこしひろげ、かいちゅうでんとうのまえで)
ひらいて中の掛け軸を少しひろげ、懐中電灯の前で
(ちょっとみたあともとのようにまいて、せっしゅうのじくの)
ちょっと見たあと元のように巻いて、雪舟の軸の
(そばにならべました。「うん、じくもおなじようないろあいの)
そばに並べました。「うん、軸も同じような色合いの
(ぞうげだし、ひょうそうのふるいかんじもよくにています。)
象牙だし、表装の古い感じもよく似ています。
(これならもうしぶんありません。これにきめましょう。)
これなら申し分ありません。これに決めましょう。
(おや、りょうほうともはこのうえにがだいがかいてありますね。)
おや、両方とも箱の上に画題が書いてありますね。
(これじゃあはこだけはほんものをつかわないと、すぐ)
これじゃあ箱だけは本物を使わないと、すぐ
(みやぶられてしまう。ではまちがわないように、この)
見破られてしまう。では間違わないように、この
(にせものをほんもののはこへ、せっしゅうのほうをにせもののはこへ)
偽物を本物の箱へ、雪舟のほうを偽物の箱へ
(いれかえておきましょう。さあ、これでよしと。)
入れ替えておきましょう。さあ、これでよしと。
(こちらがほんもののせっしゅうです。はこがかわっているので、)
こちらが本物の雪舟です。箱が変わっているので、
(なんだかへんですが、まちがいありません。もとのばしょへ)
なんだか変ですが、間違いありません。元の場所へ
(もどしてください」こいずみしはあけちがさしだすきりのはこを)
戻してください」 小泉氏は明智が差し出すキリの箱を
(そのままうけとって、こうてつせいのはこにおさめてとびらをしめ、)
そのまま受け取って、鋼鉄製の箱に収めて扉をしめ、
(きごうのもじばんをまわしました。そしてふたりはくらをでて、)
記号の文字盤を回しました。そして二人は蔵を出て、
(かぎをかけると、またもとのざしきにもどり、あけちは)
カギを掛けると、また元の座敷に戻り、明智は
(しようにんがもってきたふろしきに、にせもののきりのはこをたいせつ)
使用人が持って来た風呂敷に、偽物のキリの箱を大切
(そうにつつみました。そうしてすっかりじゅんびがととのった)
そうに包みました。そうしてすっかり準備が整った
(のは、もうじゅうじごろでした。それからしゅじんのじまんのふるい)
のは、もう十時頃でした。それから主人の自慢の古い
(ぶどうしゅをあけ、かんたんなせいようふうのつまみがはこばれて、)
ブドウ酒をあけ、簡単な西洋風のつまみが運ばれて、
(ぐらすをてにしながら、なにかとはなしているうちに、)
グラスを手にしながら、何かと話している内に、
(やがてしゅっぱつするじかんがきました。「おお、もう)
やがて出発する時間がきました。「おお、もう
(じゅういちじはんです。ぼちぼちでかけなければなりません。)
十一時半です。ボチボチ出かけなければなりません。
(やくそくのじかんにおくれてはたいへんですからね。それじゃ、)
約束の時間に遅れては大変ですからね。それじゃ、
(いってきます。かならず、のぶおくんはつれてかえりますから、)
行ってきます。必ず、信雄君は連れて帰りますから、
(どうかごあんしんください」こいずみしになりすました)
どうかご安心ください」小泉氏になりすました
(あけちは、あいさつをしてたちあがりました。)
明智は、あいさつをして立ち上がりました。
(こいずみしは、くれぐれもまちがいのないようにとねんを)
小泉氏は、くれぐれも間違いのないようにと念を
(おしながら、わざわざもんのそとまでめいたんていをみおくる)
押しながら、わざわざ門の外まで名探偵を見送る
(のでした。)
のでした。
(「にじゅうめんそうのまじゅつ」)
「二十面相の魔術」
(あけちをみおくってざしきにもどったこいずみしは、もうきがき)
明智を見送って座敷に戻った小泉氏は、もう気が気
(ではありません。うまくのぶおをとりもどしてくれるか、)
ではありません。うまく信雄を取り戻してくれるか、
(もしやかけじくがにせものとわかって、あのこがおそろしい)
もしや掛け軸が偽物と分かって、あの子が恐ろしい
(めにあうようなことはないかと、たったりすわったり、)
目にあうようなことはないかと、立ったり座ったり、
(とけいのはりばかりながめるのでした。のぶおくんの)
時計の針ばかりながめるのでした。信雄君の
(おかあさんの、こいずみふじんもおなじです。こいずみしのそばに)
お母さんの、小泉夫人も同じです。小泉氏のそばに
(すわって、おたがいのあおいかお、おびえためをみながら、)
座って、お互いの青い顔、おびえた目を見ながら、
(ものをいうげんきもなく、ときがたつのをまつのみです。)
物を言う元気もなく、時が経つのを待つのみです。
(じゅっぷん、にじゅっぷん、さんじゅっぷん、ああ、なんとまちどおしく、)
十分、二十分、三十分、ああ、なんと待ち遠しく、
(ながいながいじかんだったでしょう。おかあさんにいたっては、)
長い長い時間だったでしょう。お母さんに至っては、
(あまりにもむねがどきどきするものですから、このまま)
あまりにも胸がドキドキするものですから、このまま
(おもいびょうきにかかってしんでしまうのではないかと)
重い病気にかかって死んでしまうのではないかと
(おもったほどです。しかし、とまっているのではないか)
思ったほどです。しかし、止まっているのではないか
(とおもうほどのろいとけいも、いつのまにかはりはすすみ、)
と思うほどノロい時計も、いつの間にか針は進み、
(やがてよなかのいちじまぢかになったときでした。まちに)
やがて夜中の一時間近になった時でした。待ちに
(まった、げんかんのこうしどのべるのおとがして、しようにんの)
待った、玄関の格子戸のベルの音がして、使用人の
(さわぐけはいがしたかとおもうと、だれかがろうかを)
騒ぐ気配がしたかと思うと、だれかが廊下を
(ばたばたはしってくるおとがきこえました。「まあ、)
バタバタ走って来る音が聞こえました。「まあ、
(のぶおさんじゃありませんか」おかあさんは、いきなり)
信雄さんじゃありませんか」お母さんは、いきなり
(えんがわのしょうじをひらいて、ころぶようにそのほうへはしり)
縁側の障子をひらいて、転ぶようにそのほうへ走り
(よりました。「おかあさん」うわずったしょうねんのさけびごえが)
寄りました。「お母さん」うわずった少年の叫び声が
(して、おかあさんともつれあうようにしながら、ざしきへ)
して、お母さんともつれあうようにしながら、座敷へ
(とびこんできたのは、やっぱりのぶおくんでした。)
飛び込んできたのは、やっぱり信雄君でした。
(「おお、のぶおか」こいずみしもおもわずたちあがりました。)
「おお、信雄か」小泉氏も思わず立ち上がりました。
(「よくかえってきたねえ。どんなにしんぱいしたかしれや)
「よく帰ってきたねえ。どんなに心配したか知れや
(しないよ。で、あけちさんはどうしたの」「え、)
しないよ。で、明智さんはどうしたの」「え、
(あけちさんですか」のぶおくんは、けげんなかおでききかえし)
明智さんですか」信雄君は、怪訝な顔で聞き返し
(ました。「おや、それじゃ、おまえはあけちさんには)
ました。「おや、それじゃ、お前は明智さんには
(あわなかったのかい。あけちさんはね、おとうさんと)
会わなかったのかい。明智さんはね、お父さんと
(そっくりのすがたにへんそうして、にじゅうめんそうのところへ、おまえを)
ソックリの姿に変装して、二十面相の所へ、お前を
(とりもどしにいったのだよ。おまえ、それに)
取り戻しに行ったのだよ。お前、それに
(きづかなかったのかい」のぶおくんは、ゆうがたからのひろう)
気づかなかったのかい」 信雄君は、夕方からの疲労
(により、ぐったりとへやのまんなかにすわったまま、)
により、グッタリと部屋の真ん中に座ったまま、
(おとうさんをみあげて、いっそうふしぎそうなかおを)
お父さんを見上げて、一層不思議そうな顔を
(しました。「ぼく、そんなひとにはあっていません。)
しました。「ぼく、そんな人には会っていません。
(おかしいな」「それじゃ、おまえはどうして、)
おかしいな」「それじゃ、お前はどうして、
(にげだしてくることができたのだい。むろん、おまえは)
逃げ出してくることが出来たのだい。無論、お前は
(いままでにじゅうめんそうのところにいたんだろう」「ええ、そう)
今まで二十面相の所に居たんだろう」「ええ、そう
(なんです、おとうさん。ぼくのかいたてがみを、ごらんに)
なんです、お父さん。ぼくの書いた手紙を、ご覧に
(なりましたか。あれはにじゅうめんそうにきょうはくされて、むりに)
なりましたか。あれは二十面相に脅迫されて、無理に
(かかされたんです。でも、かいてあることはうそじゃ)
書かされたんです。でも、書いてあることはウソじゃ
(ないのです。ぼくはおもいだしてもぞっとするような、)
ないのです。ぼくは思い出してもゾッとするような、
(おそろしいめにあわされたんです」そしてのぶおくんは、)
恐ろしい目にあわされたんです」 そして信雄君は、
(ゆうがたからのできごとを、かいつまんでかたりました。)
夕方からの出来事を、かいつまんで語りました。