『妖怪博士』江戸川乱歩36

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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1 berry 7397 7.5 98.0% 618.6 4667 91 99 2024/10/08

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問題文

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(ろうじんはぴすとるをかまえたままじりじりと、)

老人はピストルを構えたままジリジリと、

(あとずさりをして、やがてきのかげのやみのなかへ、すがたを)

あとずさりをして、やがて木の陰の闇の中へ、姿を

(けしてしまいました。すがたはきえても、そのとおくのやみの)

消してしまいました。姿は消えても、その遠くの闇の

(なかから、あのぶきみなわらいごえが、だんだんかすかになり)

中から、あの不気味な笑い声が、段々かすかになり

(ながら、いつまでもつづいているのでした。こいずみしは)

ながら、いつまでも続いているのでした。 小泉氏は

(しばらくのあいだ、なにもかんがえるちからがなく、ぼうぜんと)

しばらくのあいだ、何も考える力がなく、ぼうぜんと

(たちつくしていましたが、やがてはっとわれにかえると、)

立ちつくしていましたが、やがてハッと我に返ると、

(いまいましそうにつぶやきました。「おお、そうだ。)

忌々しそうにつぶやきました。「おお、そうだ。

(わしはいまのいままで、にじゅうめんそうとはなしていたのだ。)

わしは今の今まで、二十面相と話していたのだ。

(いまのろうじんこそ、にじゅうめんそうのへんそうすがただったにちがいない」)

今の老人こそ、二十面相の変装姿だったに違いない」

(「めいたんていのきさく」)

「名探偵の奇策」

(それからに、さんじゅっぷんご、こいずみしんたろうしはじたくのしょさい)

それから二、三十分後、小泉信太郎氏は自宅の書斎

(にあるおおきいつくえのまえにこしをかけて、でんわのじゅわきを)

にある大きい机の前に腰をかけて、電話の受話器を

(にぎっていました。「もしもし、あけちたんていじむしょ)

握っていました。「もしもし、明智探偵事務所

(ですか。わたしはしぶやのこいずみですが、あけちさんは)

ですか。私は渋谷の小泉ですが、明智さんは

(ございたくですか」こいずみしとあけちたんていは、おなじ)

ご在宅ですか」小泉氏と明智探偵は、同じ

(しゃこうくらぶのかいいんだったものですから、したしいという)

社交クラブの会員だったものですから、親しいという

(ほどではなくても、に、さんどはなしあったこともある)

ほどではなくても、二、三度話し合ったこともある

(あいだがらでした。そういうかんけいから、のぶおくんが)

間柄でした。 そういう関係から、信雄君が

(しょうねんたんていだんにかにゅうしたときいても、べつにしんぱいもせず、)

少年探偵団に加入したと聞いても、別に心配もせず、

など

(あけちたんていをしんらいしてもくにんしていたのです。まさか、)

明智探偵を信頼して黙認していたのです。まさか、

(こんなおそろしいじけんがおころうとは、ゆめにもかんがえて)

こんな恐ろしい事件が起ころうとは、夢にも考えて

(いなかったのです。このじけんは、けいさつへうったえるわけには)

いなかったのです。 この事件は、警察へ訴える訳には

(いきません。そんなことをすれば、あのすばしっこい)

いきません。そんなことをすれば、あのすばしっこい

(にじゅうめんそうのことですから、たちまちかんづいて、どんな)

二十面相のことですから、たちまち感づいて、どんな

(おそろしいしかえしをするかしれません。そこで)

恐ろしい仕返しをするか知れません。 そこで

(こいずみしは、あけちたんていにそうだんすることをおもいつき)

小泉氏は、明智探偵に相談することを思いつき

(ました。あけちたんていならばしりあいでもあり、さらに)

ました。明智探偵ならば知り合いでもあり、さらに

(しょうねんたんていだんとはふかいかんけいなので、しんけんになって)

少年探偵団とは深い関係なので、真剣になって

(くれるにちがいないとかんがえたのです。やがて、でんわぐちに)

くれるに違いないと考えたのです。やがて、電話口に

(あけちがでたようすです。「ああ、あけちさんですか。わたし、)

明智が出た様子です。「ああ、明智さんですか。私、

(こいずみです。でんわでたいへんきょうしゅくですが、じつはしきゅう、おちからを)

小泉です。電話で大変恐縮ですが、実は至急、お力を

(おかりしたいじけんがおこったのです。じけんのないようは、)

お借りしたい事件が起こったのです。事件の内容は、

(でんわではなんですから、おあいしてくわしくもうしあげ)

電話ではなんですから、お会いして詳しく申し上げ

(ますが、ともかく、あなたのおちからにたよるほかはない)

ますが、ともかく、あなたのお力に頼る他はない

(じゅうだいなじけんです。え、おいでくださるのですか。)

重大な事件です。え、おいでくださるのですか。

(ありがとう。では、どうぞよろしくおねがいいたします。)

ありがとう。では、どうぞ宜しくお願いいたします。

(いえのばしょについては、あなたのところにいるこばやしくんが)

家の場所については、あなたの所に居る小林君が

(よくしっているはずですから。じゃあ、おまちして)

よく知っているはずですから。じゃあ、お待ちして

(います」がちゃんとじゅわきをおき、こいずみしはほっと)

います」 ガチャンと受話器を置き、小泉氏はホッと

(ためいきをつきました。あけちたんていが、ちょうどうまいぐあいに)

溜め息をつきました。明智探偵が、丁度うまい具合に

(じむしょにいたのは、なによりのしあわせでした。あけちで)

事務所に居たのは、なによりの幸せでした。明智で

(あれば、たくみにぞくをあざむいてのぶおもとりもどし、)

あれば、たくみに賊をあざむいて信雄も取り戻し、

(かほうのかけじくもわたさないですむような、すばらしい)

家宝の掛け軸も渡さないで済むような、素晴らしい

(しゅだんをかんがえてくれるかもしれません。こいずみしは)

手段を考えてくれるかもしれません。小泉氏は

(そうかんがえると、いくらかきぶんもおちつき、あおざめ)

そう考えると、いくらか気分も落ち着き、青ざめ

(きっていたかおにもなんとなくせいきがよみがえってきた)

きっていた顔にも何となく生気がよみがえってきた

(ようにみえました。ところが、こいずみしがでんわにむちゅうに)

ようにみえました。 ところが、小泉氏が電話に夢中に

(なっていたあいだ、そのしょさいのいっぽうでみょうなことが)

なっていた間、その書斎の一方でみょうなことが

(おこっていました。それはちょうど、あけちとはなしをしている)

起こっていました。それは丁度、明智と話をしている

(さいちゅうでしたが、こいずみしのよこにあるがらすまどのそとから、)

最中でしたが、小泉氏の横にあるガラス窓の外から、

(しらがあたまにしろいあごひげをはやした、あやしげなろうじんの)

しらが頭に白いあごヒゲを生やした、怪しげな老人の

(かおがじっとしつないをのぞきこんでいたのです。まどのそとは)

顔がジッと室内をのぞきこんでいたのです。 窓の外は

(ひろいにわになっているのですが、いつのまにどうやって)

広い庭になっているのですが、いつのまにどうやって

(しのびこんだのか。さっきのあやしいろうじんのへんそうをして)

忍び込んだのか。さっきの怪しい老人の変装をして

(いるにじゅうめんそうが、そのにわからこいずみしがでんわをかけて)

いる二十面相が、その庭から小泉氏が電話をかけて

(いるすがたを、まるでえものをねらうへびのような、しゅうねんぶかい)

いる姿を、まるで獲物をねらう蛇のような、執念深い

(めつきでじっとみつめていたのです。じんじゃのもりの)

目つきでジッと見つめていたのです。神社の森の

(なかへたちさったようにみせかけて、じつはこいずみしの)

中へ立ち去ったように見せかけて、実は小泉氏の

(あとをつけてきたにちがいありません。そして、)

あとをつけてきたに違いありません。 そして、

(こいずみしがじゅわきをおくのをみると、ひょいとくびを)

小泉氏が受話器を置くのを見ると、ヒョイと首を

(ひっこめて、にわのやみのなかへすがたをけしてしまいました。)

引っこめて、庭の闇の中へ姿を消してしまいました。

(もちろん、こいずみしはそれにすこしもきづかなかった)

もちろん、小泉氏はそれに少しも気づかなかった

(のです。にじゅうめんそうでもあるあやしいろうじんは、それから)

のです。 二十面相でもある怪しい老人は、それから

(にわのこだちのあいだをくぐって、うらのへいぎわに)

庭の木立ちの間をくぐって、裏の塀ぎわに

(たどりつき、まるでさるのようなみがるさで、へいを)

たどりつき、まるでサルのような身軽さで、塀を

(のりこえました。へいのそとはひとどおりもない、さびしいうらまち)

乗り越えました。塀の外は人通りもない、寂しい裏町

(です。にじゅうめんそうはなにくわぬかおで、そのまちをとおりすぎ、)

です。二十面相は何食わぬ顔で、その町を通り過ぎ、

(にぎやかなしょうてんがいのほうへといそぎました。そして、)

にぎやかな商店街のほうへと急ぎました。そして、

(そこのじゅうじろのこうしゅうでんわにとびこむと、いきなり)

そこの十字路の公衆電話に飛び込むと、いきなり

(じゅわきをつかんで、あけちたんていじむしょのばんごうをおし)

受話器をつかんで、明智探偵事務所の番号を押し

(ました。おや、これはどうしたというのでしょう。)

ました。 おや、これはどうしたというのでしょう。

(にじゅうめんそうがあけちたんていにでんわをかけるなんて、おもいも)

二十面相が明智探偵に電話をかけるなんて、思いも

(よらないへんてこなしわざではありませんか。いったい、)

よらないヘンテコな仕業ではありませんか。一体、

(これはなにをいみするのでしょう。かいとうは、どんな)

これは何を意味するのでしょう。怪盗は、どんな

(わるだくみをかんがえだしたのでしょう。なんだかひどく)

悪だくみを考え出したのでしょう。なんだか酷く

(きがかりではありませんか。それはさておき、おはなしを)

気がかりではありませんか。 それはさておき、お話を

(もとにもどして、こいずみていでそのよるどんなことが)

元に戻して、小泉邸でその夜どんなことが

(おこったか、まずそれをしるさねばなりません。)

起こったか、まずそれを記さねばなりません。

(こいずみしがあけちたんていにでんわをかけてからにじゅっぷんほど)

小泉氏が明智探偵に電話をかけてから二十分ほど

(すると、もんのまえにじどうしゃのとまるおとがして、いつも)

すると、門の前に自動車の止まる音がして、いつも

(ながらかっこうのよいくろいせびろすがたのめいたんていが、)

ながらかっこうのよい黒い背広姿の名探偵が、

(こいずみていをおとずれました。まちかまえていたこいずみしは、)

小泉邸をおとずれました。 待ち構えていた小泉氏は、

(みずからでむかえてあけちをおくのざしきにあんないし、めしつかい)

みずから出迎えて明智を奥の座敷に案内し、召し使い

(たちをとおざけておいて、ことのしだいをくわしくものがたる)

たちを遠ざけておいて、事の次第を詳しく物語る

(のでした。すっかりききおわったあけちたんていは、)

のでした。すっかり聞き終わった明智探偵は、

(しばらくのあいだむごんのままうでぐみをしてかんがえこんで)

しばらくのあいだ無言のまま腕組みをして考えこんで

(いましたが、やがてかおをあげて、なにかみょうあんがうかんだ)

いましたが、やがて顔をあげて、何か妙案が浮かんだ

(らしいたのもしげなくちょうでこたえました。「こいずみさん、)

らしい頼もしげな口調で答えました。「小泉さん、

(おひきうけしました。こんどこそあいつをつかまえて、)

お引き受けしました。今度こそあいつを捕まえて、

(おめにかけます。のぶおくんをとりもどすのはもちろん、)

お目にかけます。信雄君を取り戻すのはもちろん、

(せっしゅうのかけじくもわたさず、そのうえあいつをつかまえて)

雪舟の掛け軸も渡さず、その上あいつを捕まえて

(ごらんにいれます。じつをいうと、ぼくはこういう)

ごらんにいれます。実を言うと、ぼくはこういう

(ことがおきるのをまちかまえていたのですよ。)

ことが起きるのを待ち構えていたのですよ。

(にじゅうめんそうには、たびかさなるうらみがありますからね。)

二十面相には、度重なる恨みがありますからね。

(こんかいのじけんは、ぼくにとってねがってもないきかいです。)

今回の事件は、ぼくにとって願ってもない機会です。

(それに、のぶおくんはしょうねんたんていだんにくわわっていたせいで、)

それに、信雄君は少年探偵団に加わっていたせいで、

(こんなめにあったのですから、ぼくにもじゅうぶんせきにんが)

こんな目にあったのですから、ぼくにも充分責任が

(あるのです。かならず、ぶじにとりもどしてみせますよ」)

あるのです。必ず、無事に取り戻してみせますよ」

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