『妖怪博士』江戸川乱歩48
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | ヌオー | 5937 | A+ | 6.3 | 94.1% | 714.8 | 4526 | 282 | 99 | 2024/12/17 |
2 | baru | 4237 | C | 4.7 | 89.8% | 957.1 | 4572 | 516 | 99 | 2024/12/04 |
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問題文
(うしろのやみのなかから、とつじょとしてわらいごえがきこえてきた)
後ろの闇の中から、突如として笑い声が聞こえてきた
(のです。しんぞうもとまるおもいで、かいちゅうでんとうをふりむけて)
のです。心臓も止まる思いで、懐中電灯を振り向けて
(みると、ご、ろくめーとるむこうのやみのなかに、あの)
みると、五、六メートル向こうの闇の中に、あの
(かいぶつがうしろあしでたちあがっていました。そして、)
怪物が後ろ足で立ち上がっていました。そして、
(おおきなくちばしをひらいて、けらけらとわらって)
大きなクチバシをひらいて、ケラケラと笑って
(います。おさないしょうじょのようなかんだかいこえで、おかしそうに)
います。幼い少女のような甲高い声で、おかしそうに
(けらけらとわらっているのです。しょうねんたちは、さーっと)
ケラケラと笑っているのです。 少年たちは、サーッと
(せすじにこおりのぼうをさしとおされたようなきがしました。)
背筋に氷の棒を差し通されたような気がしました。
(ああ、わらうこうもりです。しょうじょのようなこえでわらう)
ああ、笑うコウモリです。少女のような声で笑う
(こうもりです。これが、このよのできごとなの)
コウモリです。これが、この世の出来事なの
(でしょうか。ゆめではないでしょうか。やみのなかのまぼろしでは)
でしょうか。夢ではないでしょうか。闇の中の幻では
(ないでしょうか。それともしょうねんたちは、どうくつのようき)
ないでしょうか。それとも少年たちは、洞窟の妖気
(でひとりのこらずきがくるって、ありもしないもののけの)
で一人残らず気が狂って、ありもしない物の怪の
(すがたを、こころにえがいていたのでしょうか。)
姿を、心にえがいていたのでしょうか。
(「ものいうかいじゅう」)
「もの言う怪獣」
(しょうねんたちはあまりのふしぎさとおそろしさに、しんぞうの)
少年たちは余りの不思議さと恐ろしさに、心臓の
(こどうもとまってしまうようなきがしました。)
鼓動も止まってしまうような気がしました。
(おとなほどのおおきさのこうもりというだけでもふしぎ)
大人ほどの大きさのコウモリというだけでも不思議
(なのに、それがにんげんのこえでわらいだすなんて、まったく)
なのに、それが人間の声で笑いだすなんて、まったく
(そうぞうもできないではありませんか。ところが、)
想像も出来ないではありませんか。 ところが、
(そうしていきたここちもないしょうねんたちのみみに、さらに)
そうして生きた心地もない少年たちの耳に、更に
(おそろしいこえがきこえてきました。みなさん、その)
恐ろしい声が聞こえてきました。みなさん、その
(きょだいこうもりがものをいったのです。にんげんと)
巨大コウモリが物を言ったのです。人間と
(そっくりのことばで、ものをいったのです。「ふふふ、)
ソックリの言葉で、物を言ったのです。「フフフ、
(なさけないこどもたちだ。それでもしょうねんたんていだんいんかね。)
情けない子どもたちだ。それでも少年探偵団員かね。
(おいこばやしくん、きみまでふるえているじゃないか。)
おい小林君、きみまで震えているじゃないか。
(いつものげんきは、どこへいったのだね」おおきい)
いつもの元気は、どこへいったのだね」大きい
(こうもりが、ちのそこからひびいてくるようなこえで)
コウモリが、地の底から響いて来るような声で
(そういったのです。ほかににんげんがいるはずは)
そう言ったのです。他に人間が居るはずは
(ありません。たしかにかいじゅうがくちをきいたのです。)
ありません。確かに怪獣が口をきいたのです。
(こばやししょうねんはそれをきくと、やみのなかでむくむくとおき)
小林少年はそれを聞くと、闇の中でムクムクと起き
(あがりました。そのこえが、どこかできいたことがある)
あがりました。その声が、どこかで聞いたことがある
(ようにおもわれたからです。そしてはっとし、こばやしくんは)
ように思われたからです。そしてハッとし、 小林君は
(てにしていたかいちゅうでんとうのひかりを、さーっとこえのする)
手にしていた懐中電灯の光を、サーッと声のする
(ほうがくへむけました。すると、そのまるいひかりのなかに、)
方角へ向けました。すると、その丸い光の中に、
(おおきなうしほどもあるかいじゅうのかおが、ぬーっとあらわれ)
大きな牛ほどもある怪獣の顔が、ヌーッと現れ
(ました。きょだいこうもりはいつのまにか、いちめーとる)
ました。巨大コウモリはいつの間にか、一メートル
(ほどの、まぢかにせまっていたのです。しょうねんたちはどうじに)
ほどの、間近に迫っていたのです。 少年たちは同時に
(そのほうをみましたが、ひとめみるやいなや、あまりの)
そのほうを見ましたが、一目見るやいなや、余りの
(いやらしさに、おもわずめをふさいでしまいました。)
いやらしさに、思わず目をふさいでしまいました。
(うしほどもあるけむくじゃらのかおのなかに、まんまるな)
牛ほどもある毛むくじゃらの顔の中に、真ん丸な
(ふたつのめがぎょろっとひかっていました。そのしたに)
二つの目がギョロッと光っていました。その下に
(おおきなくろいくちばしのようなものがつきでていて、)
大きな黒いクチバシのような物が突き出ていて、
(それがぱっくりとひらいているのです。くちのなかには)
それがパックリとひらいているのです。口の中には
(きいろいきばのようなはなみがみえ、そのあいだからまっかな)
黄色い牙のような歯並が見え、その間から真っ赤な
(したがのぞいています。いまにも、しょうねんたちをあたまから)
舌がのぞいています。今にも、少年たちを頭から
(ひとのみにしようとみがまえているのです。でも)
一飲みにしようと身構えているのです。 でも
(こばやししょうねんだけは、そのおそろしいかおをみてもこわがり)
小林少年だけは、その恐ろしい顔を見ても怖がり
(ませんでした。どうぶつが、にんげんのことばをつかうはずが)
ませんでした。動物が、人間の言葉を使うはずが
(ない。ものをいうからには、このおそろしいかいぶつのなか)
ない。物を言うからには、この恐ろしい怪物の中
(には、ほんとうのにんげんがかくれているにちがいないと、)
には、本当の人間が隠れているに違いないと、
(かしこくもはんだんしたのです。「きみはだれだ。ぼくたちを)
賢くも判断したのです。「きみはだれだ。ぼくたちを
(どうしようというのだ」こばやしくんはかいちゅうでんとうをむけた)
どうしようと言うのだ」小林君は懐中電灯を向けた
(まま、きっとしてかいぶつをにらみつけました。)
まま、キッとして怪物をにらみつけました。
(「ふふふ、わからないかね。きみたちが、いっしょうけんめいに)
「フフフ、分からないかね。きみたちが、一生懸命に
(さがしているにんげんだよ」きょだいこうもりは、ひとを)
探している人間だよ」巨大コウモリは、人を
(こばかにしたようなことをいって、くすくすとわらい)
小バカにしたようなことを言って、クスクスと笑い
(ました。やっぱりにんげんなのです。きょだいこうもりの)
ました。やっぱり人間なのです。巨大コウモリの
(いしょうをつけたにんげんなのです。しょうねんたちはそうと)
衣装をつけた人間なのです。 少年たちはそうと
(わかったので、おそろしいゆめからさめたようにほっと)
分かったので、恐ろしい夢から覚めたようにホッと
(しましたが、こんどはそのかいじゅうのなかのにんげんが、いったい)
しましたが、今度はその怪獣の中の人間が、一体
(なにものかとかんがえると、またべつのおそろしさにぞーっと)
何者かと考えると、また別の恐ろしさにゾーッと
(せすじがさむくなるのでした。しょうねんたちのあたまのなかに、)
背筋が寒くなるのでした。 少年たちの頭の中に、
(あるじんぶつのながさっとひらめきました。こんな)
ある人物の名がサッとひらめきました。こんな
(おそろしいいたずらをして、しょうねんたんていだんいんをくるしめる)
恐ろしいイタズラをして、少年探偵団員を苦しめる
(やつは、そいつのほかにいないからです。こばやしくんも、すぐ)
奴は、そいつの他に居ないからです。 小林君も、すぐ
(そのなをおもいうかべましたが、このくらやみのどうくつの)
その名を思い浮かべましたが、この暗闇の洞窟の
(なかで、そいつのなをいうのにはよほど、ゆうきがいり)
中で、そいつの名を言うのには余程、勇気がいり
(ました。きょだいこうもりのばけものなんかよりも、)
ました。巨大コウモリのバケモノなんかよりも、
(かえってそのにんげんのほうがおそろしくかんじられたから)
かえってその人間のほうが恐ろしく感じられたから
(です。こばやしくんはしばらくのあいだ、むねをどきどき)
です。小林君はしばらくのあいだ、胸をドキドキ
(させながら、いおうかいうまいかと、ためらって)
させながら、言おうか言うまいかと、ためらって
(いましたが、とうとうおもいきってそのなをさけび)
いましたが、とうとう思い切ってその名を叫び
(ました。しにものぐるいでさけんだのです。「きさま、)
ました。死に物狂いで叫んだのです。「貴様、
(にじゅうめんそうだな」「ふふふ、やっとわかったね。)
二十面相だな」「フフフ、やっと分かったね。
(そのとおり、おれはにじゅうめんそうだよ。にじゅうめんそうはにんげん)
その通り、おれは二十面相だよ。二十面相は人間
(だけでなく、どうぶつにだってばけられるのだ。このよに)
だけでなく、動物にだって化けられるのだ。この世に
(いないどうぶつにだってね。ふふふ、まさかにじゅうめんそうが、)
居ない動物にだってね。フフフ、まさか二十面相が、
(こんなどうくつのなかで、きみたちをまちかまえていよう)
こんな洞窟の中で、きみたちを待ち構えていよう
(とは、きがつかなかっただろう。どうだね、この)
とは、気がつかなかっただろう。どうだね、この
(おもいつきは。ははは、これは、さいしょからおれがけいかく)
思いつきは。ハハハ、これは、最初からおれが計画
(したことさ。そのけいかくに、きみたちはまんまと)
したことさ。その計画に、きみたちはまんまと
(ひっかかったのだよ。え、わかるかね。きみたちが)
引っかかったのだよ。え、分かるかね。きみたちが
(このしょうにゅうどうのたんけんをおもいついたのは、そこにいる)
この鍾乳洞の探検を思いついたのは、そこに居る
(かつらくんとしのざきくんがねっしんにすすめたからだね。ところで、)
桂君と篠崎君が熱心にすすめたからだね。ところで、
(そのふたりに、このどうくつのことをおもしろそうにはなして)
その二人に、この洞窟のことを面白そうに話して
(きかせたどうきゅうせいがいる。そして、ふたりをむちゅうにさせて)
聞かせた同級生が居る。そして、二人を夢中にさせて
(しまったのだ。そのどうきゅうせいに、そういうはなしをさせた)
しまったのだ。その同級生に、そういう話をさせた
(のはほかでもない、おれだったのだよ。わかった)
のは他でもない、おれだったのだよ。分かった
(かね。ははは、きみたちはおれのけいかくにはまって、)
かね。ハハハ、きみたちはおれの計画にはまって、
(のこのここのしょうにゅうどうへでかけてきた。そして、)
ノコノコこの鍾乳洞へ出かけてきた。そして、
(なまいきにもじいさんのあんないをことわって、みちしるべの)
生意気にもじいさんの案内を断って、道しるべの
(ひもをたよりに、めいろのなかへふみこんだ。どうだね。)
ヒモを頼りに、迷路の中へ踏み込んだ。どうだね。
(なにもかもしっているだろう。あのひもをきったのも、)
何もかも知っているだろう。 あのヒモを切ったのも、
(おれだ。そこのあなのうえのいたのはしをとったのも、)
おれだ。そこの穴の上の板の橋を取ったのも、
(おれだ。そうしておいて、こういうかいぶつにへんそうして、)
おれだ。そうしておいて、こういう怪物に変装して、
(きみたちをおもうぞんぶん、こわがらせたのだ。ははは、)
きみたちを思う存分、怖がらせたのだ。 ハハハ、
(こんなゆかいなことはないよ。おれは、きみたちにいつ)
こんな愉快なことはないよ。おれは、きみたちにいつ
(だったかひどいめにあっているからね」)
だったか酷い目にあっているからね」