夜長姫と耳男19
坂口安吾の小説です。青空文庫から引用
底本:「坂口安吾全集 12」筑摩書房
1999(平成11)年1月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潮 第四九巻第六号」
1952(昭和27)年6月1日発行
初出:「新潮 第四九巻第六号」
1952(昭和27)年6月1日発行
入力:砂場清隆
校正:田中敬三
2006年2月21日作成
青空文庫作成ファイル
1999(平成11)年1月20日初版第1刷発行
底本の親本:「新潮 第四九巻第六号」
1952(昭和27)年6月1日発行
初出:「新潮 第四九巻第六号」
1952(昭和27)年6月1日発行
入力:砂場清隆
校正:田中敬三
2006年2月21日作成
青空文庫作成ファイル
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問題文
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(しらじらあけに、ちゃんとめがさめた。)
しらじら明けに、ちゃんと目がさめた。
(ひめのいいつけがみにしみて、)
ヒメのいいつけが身にしみて、
(ちょうどそのじかんにめがさめるほどおれのこころはしばられていた。)
ちょうどその時間に目がさめるほどオレの心は縛られていた。
(おれはこころのおもさにたえがたかったが、)
オレは心の重さにたえがたかったが、
(ふくろをおうてあけきらぬやまへわけこまずにもいられなかった。)
袋を負うて明けきらぬ山へわけこまずにもいられなかった。
(そしてやまへわけこむと、おれはへびをとることにひっしであった。)
そして山へわけこむと、オレは蛇をとることに必死であった。
(すこしもはやく、すこしでもおおく、とあせっていた。)
少しも早く、少しでも多く、とあせっていた。
(ひめのきたいにそうてやりたいいちねんがいちずにおれをかりたててやまなかった。)
ヒメの期待に添うてやりたい一念が一途にオレをかりたててやまなかった。
(おおきなふくろをおうてもどると、ひめはこうろうにまっていた。)
大きな袋を負うて戻ると、ヒメは高楼に待っていた。
(それをみんなつるしおわると、ひめのかおはかがやいて、)
それをみんな吊し終ると、ヒメの顔はかがやいて、
(「まだとてもはやいわ。ようやくのらへひとびとがでてきたばかり。)
「まだとても早いわ。ようやく野良へ人々がでてきたばかり。
(きょうはなんべんも、なんべんも、とってきてね。はやく、できるだけせいをだしてね」)
今日は何べんも、何べんも、とってきてね。早く、できるだけ精をだしてね」
(おれはだまってからのふくろをにぎるとやまへいそいだ。)
オレは黙ってカラの袋を握ると山へ急いだ。
(おれはけさからまだひとこともひめにくちをきかなかった。)
オレは今朝からまだ一言もヒメに口をきかなかった。
(ひめにむかってものをいうちからがなかったのだ。)
ヒメに向って物を言う力がなかったのだ。
(いまにこうろうのてんじょういっぱいにへびのしたいがぶらさがるにそういないが、)
今に高楼の天井いっぱいに蛇の死体がぶらさがるに相違ないが、
(そのとき、どうなるのだろうとかんがえると、おれはくるしくてたまらなかった。)
そのとき、どうなるのだろうと考えると、オレは苦しくてたまらなかった。
(ひめがしていることはおれがしごとごやでしていたことの)
ヒメがしていることはオレが仕事小屋でしていたことの
(まねごとにすぎないようだが、おれはたんじゅんにそうおもうわけにはいかなかった。)
マネゴトにすぎないようだが、オレは単純にそう思うわけにはいかなかった。
(おれがあんなことをしたのはちいさなよぎないひつようによってであったが、)
オレがあんなことをしたのは小さな余儀ない必要によってであったが、
など
(ひめがしていることはにんげんがおもいつくことではなかった。)
ヒメがしていることは人間が思いつくことではなかった。
(たまたまおれのこやをみたからそれににせているだけで、)
たまたまオレの小屋を見たからそれに似せているだけで、
(おれのこやをみていなければ、ほかのなにかににせて)
オレの小屋を見ていなければ、他の何かに似せて
(おなじようなおそろしいことをやっているはずなのだ。)
同じような怖ろしいことをやっている筈なのだ。
(しかも、かほどのことも、まだひめにとってはじょのくちであろう。)
しかも、かほどのことも、まだヒメにとっては序の口であろう。
(ひめのしょうがいに、このさきなにをおもいつき、なにをおこなうか、)
ヒメの生涯に、この先なにを思いつき、なにを行うか、
(それはとてもにんげんどものしりょうしうることではない。)
それはとても人間どもの思量しうることではない。
(とてもおれのてにおえるひめではないし、)
とてもオレの手に負えるヒメではないし、
(おれののみもとうていひめをつかむことはできないのだと)
オレのノミもとうていヒメをつかむことはできないのだと
(おれはしみじみおもいしらずにいられなかった。)
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あんまり怖ろしいものを見てしまったとオレは思った。
(こんなものをみておいて、このさきなにをささえにしごとをつづけていけるだろうかと)
こんな物を見ておいて、この先なにを支えに仕事をつづけて行けるだろうかと
(おれはなげかずにいられなかった。)
オレは嘆かずにいられなかった。