探偵少年5 消えた黄金の黄金のトラ/江戸川乱歩

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問題文

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(「うん、かんしん、かんしん。のろちゃんは、おくびょうものかとおもっていたが、)

「うん、感心、感心。ノロちゃんは、おくびょうものかと思っていたが、

(なかなかゆうきがあるね。こばやしくん、だんちょうのきみは、このもうしこみを、)

なかなか勇気があるね。小林君、団長のきみは、このもうしこみを、

(うけるかね。」)

うけるかね。」

(「あけちせんせいにそうだんしてから、きめます。」)

「明智先生に相談してから、きめます。」

(「いや、それなら、しんぱいしないでいい。あけちさんには、ちゃんと、)

「いや、それなら、心配しないでいい。明智さんには、ちゃんと、

(わしからはなしておいた。あけちさんはしっているのだ。)

わしから話しておいた。明智さんは知っているのだ。

(もし、きみたちがこまったときには、あけちさんに、ちえをかりても)

もし、きみたちがこまったときには、明智さんに、知恵をかりても

(いいというやくそくもしてある。」)

いいという約束もしてある。」

(「そうですか、それなら、もうしこみをうけます。しょうねんたんていだんいんは)

「そうですか、それなら、もうしこみをうけます。少年探偵団員は

(にじゅうさんにんおりますが、そのうち、うちで、ゆるしてくださるものだけが、)

二十三人おりますが、そのうち、うちで、ゆるしてくださるものだけが、

(しあいにさんかすることにします。じゃあ、このおうごんのとらを、)

試合にさんかすることにします。じゃあ、この黄金のトラを、

(のろちゃんとふたりで、もってかえりますよ。」)

ノロちゃんとふたりで、持って帰りますよ。」

(にしょうねんは、おうごんのとらをもって、あけちたんていじむしょにかえり、あけちせんせいに、)

二少年は、黄金のトラを持って、明智探偵事務所に帰り、明智先生に、

(そのことをはなしますと、)

そのことを話しますと、

(「あれはくもいりょうたという、おかねもちのかわりものだ。けっして)

「あれは雲井良太という、お金持ちの変わりものだ。けっして

(わるいひとではないから、ちえくらべをやってみるがいい。」)

悪い人ではないから、知恵くらべをやってみるがいい。」

(と、おゆるしがでましたので、すぐにでんわれんらくでだんいんたちに)

と、おゆるしが出ましたので、すぐに電話れんらくで団員たちに

(しらせますと、そのひは、じゅうごにんのだんいんが、あつまってきました。)

知らせますと、その日は、十五人の団員が、集まってきました。

(こばやししょうねんと、のろちゃんと、じゅうごにんのしょうねんは、あけちたんていじむしょの)

小林少年と、ノロちゃんと、十五人の少年は、明智探偵事務所の

(おうせつまにあつまって、おうごんのとらのかくしばしょについてそうだんしました。)

応接間に集まって、黄金のトラのかくし場所について相談しました。

など

(すると、ひとりのしょうねんが、)

すると、ひとりの少年が、

(「いのうえくんのうちがいいよ。いのうえくんのおとうさんは、もとぼくしんぐの)

「井上くんのうちがいいよ。井上君のおとうさんは、もとボクシングの

(せんしゅだから、あんしんだし、それにほかのうちでは、おとうさんか、)

選手だから、安心だし、それにほかのうちでは、おとうさんか、

(おかあさんが、ゆるしてくれないだろうからね。」)

おかあさんが、ゆるしてくれないだろうからね。」

(「うん、いのうえくんのおとうさんは、ぼうけんずきだからね。それがいいよ。」)

「うん、井上君のおとうさんは、冒険ずきだからね。それがいいよ。」

(みんなが、さんせいしましたので、いのうえくんが、うちにかえって、)

みんなが、さんせいしましたので、井上君が、うちに帰って、

(おとうさんに、そうだんしますと、)

おとうさんに、相談しますと、

(「まほうはかせとちえくらべとはおもしろい。よし、おとうさんも、)

「魔法博士と知恵くらべとはおもしろい。よし、おとうさんも、

(てつだってやるぞ。」)

てつだってやるぞ。」

(と、だいさんせいでした。そこで、おうごんのとらのかくしばしょがきまりました。)

と、だいさんせいでした。そこで、黄金のトラのかくし場所がきまりました。

(こばやしだんちょうといのうえいちろうしょうねんとが、おうごんのとらをもって、いのうえくんの)

小林団長と井上一郎少年とが、黄金のトラを持って、井上君の

(うちへいき、いのうえくんのおとうさんとさんにんで、ひそひそとそうだんしました。)

うちへいき、井上君のおとうさんと三人で、ヒソヒソと相談しました。

(それから、よるになるのをまって、こばやし、いのうえのにしょうねんはくわをかついで、)

それから、夜になるのをまって、小林、井上の二少年はクワをかついで、

(そっといのうえくんのうちのにわにでると、きのしげったにわのすみを、ろくじゅっせんち)

ソッと井上君のうちの庭に出ると、木のしげった庭のすみを、六十センチ

(めーとるほどのふかさにほって、そこへ、なにかをうずめ、)

メートルほどの深さにほって、そこへ、なにかをうずめ、

(ていねいにつちをかけました。)

ていねいに土をかけました。

(こばやしくんといのうえいちろうしょうねんは、にわのつちのなかへ、くろいものをうずめてから、)

小林君と井上一郎少年は、庭の土のなかへ、黒いものをうずめてから、

(にかいのいちろうくんのべんきょうべやにとじこもって、なにかやっていましたが、)

二階の一郎君の勉強部屋にとじこもって、なにかやっていましたが、

(しばらくすると、いちろうくんは、しろいけんしのけをはやしたおおきなおもちゃのしろいぬを、)

しばらくすると、一郎君は、白い絹糸の毛をはやした大きなオモチャの白犬を、

(だいじそうにかかえて、こばやしくんといっしょに、にかいからおりてきました。)

だいじそうにかかえて、小林君といっしょに、二階からおりてきました。

(これは、いちろうくんがまだちいさかったころのおもちゃです。)

これは、一郎君がまだ小さかったころのオモチャです。

(まほうはかせのことだから、きっと、どこかでみはっているだろうと)

魔法博士のことだから、きっと、どこかで見はっているだろうと

(おもったので、くろいはこだけを、にわにうずめてみせて、おうごんのとらは、)

思ったので、黒い箱だけを、庭にうずめて見せて、黄金のトラは、

(きれでこしらえたしろいぬのなかへ、ぬいこんでしまったのです。)

きれでこしらえた白犬のなかへ、ぬいこんでしまったのです。

(それからは、まいにち、いちろうのおかあさんか、ねえさんなどが、)

それからは、毎日、一郎のおかあさんか、ねえさんなどが、

(たえまなく、このしろいぬをだいていることにしました。がっこうからかえれば、)

たえまなく、この白犬をだいていることにしました。学校から帰れば、

(むろんいちろうくんがだくのです。)

むろん一郎君がだくのです。

(すると、それからよっかめのにちようびに、いちろうくんにあてて、)

すると、それから四日目の日曜日に、一郎君にあてて、

(みょうなてがみがきました。)

みょうな手紙がきました。

(あさってのかようびのごごよじに、れいのものを、もらいにいく。)

あさっての火曜日の午後四時に、例のものを、もらいにいく。

(かならずてにいれてみせるから、じゅうぶんようじんするがいい。)

かならず手にいれてみせるから、じゅうぶん用心するがいい。

(まほうはかせ)

魔法博士

(それには、こんなきみのわるいもんくが、かいてあったのです。)

それには、こんな気味のわるいもんくが、書いてあったのです。

(いちろうくんが、そのてがみをおとうさんにみせますと、)

一郎君が、その手紙をおとうさんに見せますと、

(「よし、わしがまもってやる。むかしのぼくしんぐのでしを、)

「よし、わしがまもってやる。むかしのボクシングの弟子を、

(ふたりよびよせて、まほうはかせがきたら、ひっとらえてやる。」)

ふたりよびよせて、魔法博士がきたら、ひっとらえてやる。」

(と、ふというでをさすってわらいました。いちろうくんはこばやしだんちょうにも、)

と、ふとい腕をさすって笑いました。一郎君は小林団長にも、

(でんわでしらせました。すると、)

電話でしらせました。すると、

(「だいじょうぶだよ。ぼくにもかんがえがあるから。」)

「だいじょうぶだよ。ぼくにも考えがあるから。」

(というへんじでした。)

という返事でした。

(さて、いよいよかようびです。さんじになると、いちろうくんががっこうから)

さて、いよいよ火曜日です。三時になると、一郎君が学校から

(かえってきました。おとうさんは、おうせつまで、おもちゃのしろいぬをだいて、)

帰ってきました。おとうさんは、応接間で、オモチャの白犬をだいて、

(がんばっていました。ぼくさーのせいねんが、どあのそとと、にわに、)

がんばっていました。ボクサーの青年が、ドアの外と、庭に、

(ひとりずつたちばんをしています。いのうえさんは、しろいぬをいちろうくんにわたすとき、)

ひとりずつ立ち番をしています。井上さんは、白犬を一郎君にわたすとき、

(ぬいめを、すこしひらいて、のぞいてみましたが、おうごんのとらは)

ぬいめを、すこし開いて、のぞいて見ましたが、黄金のトラは

(たしかに、はいっていました。)

たしかに、はいっていました。

(「だいじょうぶ、まだぬすまれてはいない。いまからよじまで、なにごとも)

「だいじょうぶ、まだ盗まれてはいない。いまから四時まで、なにごとも

(なければ、いちろう、おまえのかちだぞ。これほど、げんじゅうにばんをしていれば、)

なければ、一郎、おまえの勝ちだぞ。これほど、厳重に番をしていれば、

(いくらまほうつかいでも、どうすることもできないだろうよ。」)

いくら魔法使いでも、どうすることもできないだろうよ。」

(おとうさんは、そういってにこにこしていました。いちろうくんはしろいぬを、)

おとうさんは、そういってにこにこしていました。一郎君は白犬を、

(ぐっとだきしめて、ゆだんなくあたりをみまわします。)

グッとだきしめて、ゆだんなくあたりを見まわします。

(よじまでは、なにもあやしいことはなかったのです。いちろうくんは)

四時までは、なにもあやしいことはなかったのです。一郎君は

(おもちゃのしろいぬをだきしめたまま、すこしもてからはなしません。)

オモチャの白犬をだきしめたまま、すこしも手からはなしません。

(おとうさんは、いちど、てあらいにたちましたが、すぐかえって、おおきなめをむいて、)

おとうさんは、一度、手洗いに立ちましたが、すぐ帰って、大きな目をむいて、

(しろいぬをみつめています。どあのそとと、にわにいる、ふたりのぼくさーも、)

白犬を見つめています。ドアの外と、庭にいる、ふたりのボクサーも、

(ちゃんと、もちばについています。ありのはいいるすきまもないのです。)

ちゃんと、もちばについています。アリのはい入るすきまもないのです。

(おうせつまのたなのうえには、おおきなおきどけいが、ちくたくとびょうをきざんでいます。)

応接間のたなの上には、大きな置き時計が、チクタクと秒をきざんでいます。

(よじいっぷんまえです。)

四時一分まえです。

(「あといっぷんかんですね。」)

「あと一分間ですね。」

(「うん、いっぷんたてば、こっちのかちだ。もうだいじょうぶだよ。」)

「うん、一分たてば、こっちの勝ちだ。もうだいじょうぶだよ。」

(そういいながらも、おとうさんもいちろうくんも、あおいかおをしていました。)

そういいながらも、おとうさんも一郎君も、青い顔をしていました。

(そのいっぷんかんが、なんだか、おそろしいからです。)

その一分間が、なんだか、おそろしいからです。

(そのとき、ちりりりり・・・と、けたたましく、たくじょうでんわのべるが)

そのとき、チリリリリ・・・と、けたたましく、たくじょう電話のベルが

(なりました。おとうさんが、じゅわきをみみにあてますと、きみのわるい、)

なりました。おとうさんが、受話器を耳にあてますと、気味のわるい、

(しわがれごえがきこえてきました。)

しわがれ声が聞こえてきました。

(「いのうえさんですか。いちろうくんのおとうさんですね。わしはまほうはかせです。)

「井上さんですか。一郎君のおとうさんですね。わしは魔法博士です。

(もうさんじゅうびょうでよじですよ。よじかっきりに、あれをもらいますよ。)

もう三十秒で四時ですよ。四時かっきりに、あれをもらいますよ。

(あとにじゅうびょうです。うふふふ・・・そら、もうじゅうびょうしかない・・・。」)

あと二十秒です。ウフフフ・・・そら、もう十秒しかない・・・。」

(おきどけいが、ちん、ちん、ちん、ちんと、うつくしいおとでよじをほうじました。)

置き時計が、チン、チン、チン、チンと、うつくしい音で四時をほうじました。

(おとうさんは、それをきくと、ほっとして、)

おとうさんは、それをきくと、ほっとして、

(でんわのむこうのまほうはかせによびかけました。)

電話のむこうの魔法博士に呼びかけました。

(「いまよじをうったのが、きこえましたか。どうやら、いちろうのほうがかった)

「いま四時をうったのが、聞こえましたか。どうやら、一郎のほうが勝った

(ようですね。あんたは、やくそくをまもらなかった。おうごんのとらは、)

ようですね。あんたは、約束をまもらなかった。黄金のトラは、

(ちゃんとここにありますよ。」)

ちゃんとここにありますよ。」

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