紫式部 源氏物語 末摘花 5 與謝野晶子訳

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3 subaru 7459 7.9 93.7% 294.0 2350 157 33 2024/10/31
4 りつ 4160 C 4.3 95.6% 549.9 2398 110 33 2024/10/31

問題文

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(「どんなふうにおもっているのだろう。わたくしはまだこんなたいどをとりつづけるおんなに)

「どんなふうに思っているのだろう。私はまだこんな態度を取り続ける女に

(であったことはないよ」 ふかいそうにげんじのいうのをきいて)

出逢ったことはないよ」 不快そうに源氏の言うのを聞いて

(みょうぶもきのどくがった。 「わたくしはかくべつこのごえんはよろしくございませんとも)

命婦も気の毒がった。 「私は格別この御縁はよろしくございませんとも

(いっておりませんよ。ただあまりうちきすぎるかたでおとこのかたとのこうしょうに)

言っておりませんよ。ただあまり内気過ぎる方で男の方との交渉に

(てがでないのでしょうと、おへんじのこないことをわたくしはそうかいしゃくしております」)

手が出ないのでしょうと、お返事の来ないことを私はそう解釈しております」

(「それはまちがっているじゃないか。とてもとしがわかいとか、またおやがいて)

「それはまちがっているじゃないか。とても年が若いとか、また親がいて

(じぶんのいしではなにもできないというようなひとたちこそ、それがもっともだとは)

自分の意志では何もできないというような人たちこそ、それがもっともだとは

(いえるが、あんなひとりぼっちのこころぼそいせいかつをしているひとというものは、)

言えるが、あんな一人ぼっちの心細い生活をしている人というものは、

(いせいのともだちをつくって、それからやさしいなぐさめをいわれたり、じぶんのことも)

異性の友だちを作って、それから優しい慰めを言われたり、自分のことも

(ひとにきかせたりするのがよいことだとおもうがね。わたくしはもうめんどうなけっこんなんか)

人に聞かせたりするのがよいことだと思うがね。私はもう面倒な結婚なんか

(どうでもいい。あのふるいいえをほうもんして、きのどくなようなあれたえんがわへあがって)

どうでもいい。あの古い家を訪問して、気の毒なような荒れた縁側へ上がって

(はなすだけのことをさせてほしいよ。あのひとがよいといわなくても、ともかくも)

話すだけのことをさせてほしいよ。あの人がよいと言わなくても、ともかくも

(わたくしをあのひとにせっきんさせるようにしてくれないか。きみじかになって)

私をあの人に接近させるようにしてくれないか。気短になって

(とりかえしのならないようなこういにでるようなことはだんじてないだろう」)

取り返しのならないような行為に出るようなことは断じてないだろう」

(などとげんじはいうのであった。おんなのうわさをかんしんももたないようにきいていながら、)

などと源氏は言うのであった。女の噂を関心も持たないように聞いていながら、

(そのなかのあるものにとくべつなきょうみをもつようなくせがげんじにできたころ、)

その中のある者に特別な興味を持つような癖が源氏にできたころ、

(げんじのとのいどころのつれづれなやわに、みょうぶがなんのきなしにかたったひたちのみやの)

源氏の宿直所のつれづれな夜話に、命婦が何の気なしに語った常陸の宮の

(にょおうのことをしじゅうこんなふうにせきにんのあるもののようにいわれるのを)

女王のことを始終こんなふうに責任のあるもののように言われるのを

(みょうぶはめいわくにおもっていた。にょおうのようすをおもってみると、)

命婦は迷惑に思っていた。女王の様子を思ってみると、

(それがにつかわしいこととはかりにもおもえないのであったから、よけいなばいかいやくを)

それが似つかわしいこととは仮にも思えないのであったから、よけいな媒介役を

など

(つとめて、けっきょくにょおうをふこうにしてしまうのではないかともおもえたが、げんじが)

勤めて、結局女王を不幸にしてしまうのではないかとも思えたが、源氏が

(きわめてまじめにいいだしていることであったから、どういのできないりゆうもまた)

きわめてまじめに言い出していることであったから、同意のできない理由もまた

(ないきがした。ひたちのたいしゅのみやがございせいちゅうでもふるいみよののこりのみやさまとして)

ない気がした。常陸の太守の宮が御在世中でも古い御代の残りの宮様として

(せけんはあつかって、ごせいかつもゆたかでなかった。おたずねするひとなどはそのじだいから)

世間は扱って、御生活も豊かでなかった。お訪ねする人などはその時代から

(かいむといってよいじょうたいだったのだから、いまになってはましてくさぶかいにょおうのやしきへ)

皆無といってよい状態だったのだから、今になってはまして草深い女王の邸へ

(でいりしようとするものはなかった。そのいえへひかるげんじのてがみがきたのであるから、)

出入りしようとする者はなかった。その家へ光源氏の手紙が来たのであるから、

(にょうぼうらはいちようらいふくのゆめをつくって、にょおうにへんじをかくこともすすめたが、せけんの)

女房らは一陽来復の夢を作って、女王に返事を書くことも勧めたが、世間の

(あらゆるうちきのひとのなかのもっともひっこみじあんのにょおうは、てがみにかたられるげんじのこころに)

あらゆる内気の人の中の最も引っ込み思案の女王は、手紙に語られる源氏の心に

(ふれてみるきもなにもなかったのである。みょうぶはそんなにげんじののぞむことなら、)

触れてみる気も何もなかったのである。命婦はそんなに源氏の望むことなら、

(じぶんがてびきしてものごしにおあわせしよう、おきにいらなければそれきりに)

自分が手引きして物越しにお逢わせしよう、お気に入らなければそれきりに

(すればいいし、またえんがあってじょうじんかんけいになっても、それをかんしょうしてとめるひとは)

すればいいし、また縁があって情人関係になっても、それを干渉して止める人は

(みやけにないわけであるなどと、みょうぶじしんがれんあいをかるいものとしてかんがえつけている)

宮家にないわけであるなどと、命婦自身が恋愛を軽いものとして考えつけている

(わかいこころにおもって、にょおうのあににあたるじしんのちちにもはなしておこうとはしなかった。)

若い心に思って、女王の兄にあたる自身の父にも話しておこうとはしなかった。

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