ああ玉杯に花うけて 4

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プレイ回数499難易度(4.5) 4770打 長文
佐藤紅緑の「ああ玉杯に花うけて」です。長文です。
長文です。現在では不適切とされている言葉遣いが使われていますので、ちゅういしてください。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 りっつ 4728 C++ 4.8 97.2% 965.0 4696 133 92 2024/03/21
2 Par100 3795 D++ 3.9 96.9% 1198.2 4696 148 92 2024/04/08

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問題文

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(「にげるかっ」きまたはこういちのてくびをたたいた、)

「逃げるかッ」木俣は光一の手首をたたいた、

(ひっきちょうはちじょうにおちて、さっとぺーじをひるがえした。)

筆記帳は地上に落ちて、さっとページをひるがえした。

(こういちはだまってそれをひろいあげしずかにひとむれをでた。)

光一はだまってそれを拾いあげしずかに人群れをでた。

(むろんかれはへいそひととあらそうたことがないのであった。)

むろんかれは平素人と争うたことがないのであった。

(「よわいやつだ」さんねんせいはちょうしょうした。)

「弱いやつだ」三年生は嘲笑した。

(「いったいこのいぬはだれのいぬだ」ときまたはいった。ひとびとはてづかのかおをみた。)

「いったいこの犬はだれの犬だ」と木俣はいった。人々は手塚の顔を見た。

(「ぼくのだ」「てめえににておくびょうだな」)

「ぼくのだ」「てめえに似て臆病だな」

(「なにをいってるんだ」とてづかはまけおしみをいった。)

「なにをいってるんだ」と手塚は負けおしみをいった。

(「にねんせいはいぬまでよわむしだということよ」)

「二年生は犬まで弱虫だということよ」

(さんねんせいはこえをそろえてわらった。にねんせいはたがいにかおを)

三年生は声をそろえてわらった。二年生はたがいに顔を

(みあったがなにもいうものはなかった。)

見あったがなにもいう者はなかった。

(「やっしいやっしい」ときまたはぶるどっぐのしりをたたいた。)

「やっしいやっしい」と木俣はブルドッグのしりをたたいた。

(あかいぬはおそろしいこえをだしてとっしんした、しかげはすこししりごみしたが)

赤犬はおそろしい声をだして突進した、鹿毛は少ししりごみしたが

(このときしゃもじがそのくびわをひいてあかいぬのはなにはなをつきあてた、)

このときしゃもじがその首環を引いて赤犬の鼻に鼻をつきあてた、

(こうなるとしかげもだまっていない、しっぷうのごとくあかいぬにたちかかった、)

こうなると鹿毛もだまっていない、疾風のごとく赤犬にたちかかった、

(あかはまえあしでうけとめてしかげのくびすじのよこにかみついた、)

赤は前足で受け止めて鹿毛の首筋の横にかみついた、

(かまれじとしかげはからだをかわしてあかのみみをねらった。)

かまれじと鹿毛は体をかわして赤の耳をねらった。

(いちりいちごう!さっきがあふれた。)

一離一合! 殺気があふれた。

(に、さんどおなじことをくりかえしてそうほうたがいにしもてをねらってくびをちにすえた。)

二、三度同じことをくりかえして双方たがいに下手をねらって首を地にすえた。

(「やっしいやっしい」りょうぐんのおうえんはしだいにねっした。)

「やっしいやっしい」両軍の応援は次第に熱した。

など

(このときにねんせいはかんきのこえをあげた。)

このとき二年生は歓喜の声をあげた。

(のそりのそりねむそうなめをこすりながらせいばんがやってきたからである。)

のそりのそり眠そうな目をこすりながら生蕃がやってきたからである。

(「せいばんがきた」「たのむぞ」)

「生蕃がきた」「たのむぞ」

(「やってくれ」こえごえがおこった。)

「やってくれ」声々が起こった。

(せいばんはひとこともいわずにてきぐんをじろりとみやったとき、)

生蕃は一言もいわずに敵軍をジロリと見やったとき、

(らいおんがまたおなじくじろりとかれをみた。)

ライオンがまた同じくジロリとかれを見た。

(にねんのめいよをおうてたつせいばん!)

二年の名誉を負うて立つ生蕃!

(さんねんのおうたるらいおん!)

三年の王たるライオン!

(まさにこれさんうきたらんとしてかぜろうにみつるのがい。)

正にこれ山雨きたらんとして風楼に満つるの概。

(いぬのほうはいっこうにはかどらなかった、かれらはたがいにうなりあったが、)

犬の方は一向にはかどらなかった、かれらはたがいにうなり合ったが、

(そのこえはきゅうにきはくになった、そうしてそうほうあゆみよってかぎあった。)

その声は急に稀薄になった、そうして双方歩み寄ってかぎ合った。

(たぶんかれらはこうもうしあわしたであろう。)

多分かれらはこう申しあわしたであろう。

(「このわんぱくどもにせんどうされておたがいにうらみもないものがけんかしたところで)

「この腕白どもに扇動されておたがいにうらみもないものが喧嘩したところで

(じつにつまらない、しなをみてもわかることだが、えいこくやあめりかやろしあに)

実につまらない、シナを見てもわかることだが、英国やアメリカやロシアに

(しりをおされてなんぼくたがいにせんそうしている、)

しりを押されて南北たがいに戦争している、

(こんなわりにあわないはなしはないんだよ」)

こんな割りにあわない話はないんだよ」

(あかはしかげのみみをなめるとしかげはあかのしっぽをなめた。)

赤は鹿毛の耳をなめると鹿毛は赤のしっぽをなめた。

(いぬがだきょうしたにかかわらず、にんげんのほうははんたいにこうふんがくわわった。)

犬が妥協したにかかわらず、人間の方は反対に興奮が加わった。

(「やあにげやがった」とさんねんがわらった。)

「やあ逃げやがった」と三年がわらった。

(「あかがにげた」とにねんがわらった。)

「赤が逃げた」と二年がわらった。

(「もういっぺんやろうか」とほそいがいった。)

「もう一ぺんやろうか」と細井がいった。

(「ああやるとも」とてづかがいった、がんらいせいばんはてづかをすかなかった、)

「ああやるとも」と手塚がいった、元来生蕃は手塚をすかなかった、

(てづかはいしゃのこでなかなかせいりょくがありちえとべんさいがある、)

手塚は医者の子でなかなか勢力があり智恵と弁才がある、

(が、せいばんはどうしてもしたしむきになれなかった。)

が、生蕃はどうしても親しむ気になれなかった。

(ふたたびいぬがひきだされた、しゃもじとほそいはいぬといぬとのはなをつきあてた。)

ふたたび犬がひきだされた、しゃもじと細井は犬と犬との鼻をつきあてた。

(「しなのじせいにかんがみておたがいにわぼくしたのにきさまはなんだ」)

「シナの時勢にかんがみておたがいに和睦したのにきさまはなんだ」

(としかげがいった。)

と鹿毛がいった。

(「わぼくもへちまもあるものか、きさまはおれのきちょうなはなをがんとうったね」)

「和睦もへちまもあるものか、きさまはおれの貴重な鼻をガンと打ったね」

(「きさまがさきにうったじゃないか」「いやきさまがさきだ」)

「きさまが先に打ったじゃないか」「いやきさまが先だ」

(「さあこい」「こい」「わん」「わんわん」)

「さあこい」「こい」「ワン」「ワンワン」

(すべてせんそうなるものはきをもってしょうはいがわかれるのである、)

すべて戦争なるものは気をもって勝敗がわかれるのである、

(へいのたしょうにあらずぶきのりどんにあらず、しきおうせいなるものはかち、)

兵の多少にあらず武器の利鈍にあらず、士気旺盛なるものは勝ち、

(うしろさびしいものはまける、とくにいぬのけんかをもってしかりとする、)

後ろさびしいものは負ける、とくに犬の喧嘩をもってしかりとする、

(いぬのたよるところはただしゅじんにある、せいえんがつよければいぬがつよくなる、)

犬のたよるところはただ主人にある、声援が強ければ犬が強くなる、

(ゆえにいぬをたたかわさんとすればまずしゅじんどうしがたたかわねばならぬ。)

ゆえに犬を戦わさんとすればまず主人同士が戦わねばならぬ。

(さんねんとにねん!そうほうのじんにいちどうのさっきいんいんとしてあいかくしあいました。)

三年と二年! 双方の陣に一道の殺気陰々として相格し相摩した。

(「おい」ときまたはいわおにいった。)

「おい」と木俣は巌にいった。

(「いぬにけんかをさせるのか、にんげんがやるのか」)

「犬に喧嘩をさせるのか、人間がやるのか」

(「りょうほうだ」といわおはおもいくちょうでいった。)

「両方だ」と巌は重い口調でいった。

(「うむ、いいことをいった、わすれるなよ」ときまたはいった。)

「うむ、いいことをいった、わすれるなよ」と木俣はいった。

(このときおそろしいいぬのかくとうがはじまった。)

このときおそろしい犬の格闘が始まった。

(いぬはもうふんぬにねっきょうした、いましもあかはそのへんぺいなはなをちじょうにたれて)

犬はもう憤怒に熱狂した、いましも赤はその扁平な鼻を地上にたれて

(おおかみのごときりょうみみをきっとたてた、かれのしゅうあくなるつらは)

おおかみのごとき両耳をきっと立てた、かれの醜悪なる面は

(ますますどうもうをくわえてそのまえあしをひくくしりをたかく、)

ますます獰猛を加えてその前肢を低くしりを高く、

(せなかにらんらんたるちからこぶをりゅうきしてじりじりとつめよる。)

背中にらんらんたる力こぶを隆起してじりじりとつめよる。

(しかげはそのひろいむねをぐっとひきしめてみみをこうほうへぴたりとさかだてた。)

鹿毛はその広い胸をぐっとひきしめて耳を後方へぴたりとさか立てた。

(かれはじんじょうならぬてきとみてまずまえあしをつっぱり、)

かれは尋常ならぬ敵と見てまず前足をつっぱり、

(あとあしをひくくしてあごをぜんぽうにつきでした。)

あと足を低くしてあごを前方につき出した。

(かれはあかがだいいちにみみをめがけてくることをしっていた、)

かれは赤が第一に耳をめがけてくることを知っていた、

(でかれはもしてきがとんできたらまえあしでいちげきをくらわし)

でかれはもし敵がとんできたら前足で一撃を食わし

(よろめくところをのどにかみつこうとかんがえた。)

よろめくところを喉にかみつこうと考えた。

(よっつのめはこがねいろにかがやいてははゆきのごとくしろく、)

四つの目は黄金色に輝いて歯は雪のごとく白く、

(あかとしかげのけなみはきらきらとかがやいた。)

赤と鹿毛の毛波はきらきらと輝いた。

(やっつのあしはたがいにだいちにしっかりとくいこみ)

八つの足はたがいに大地にしっかりとくいこみ

(そうほうのおはぼうのごとくきつりつした。おはいぬのれんたいきである。)

双方の尾は棒のごとく屹立した。尾は犬の聯隊旗である。

(「やっしいやっしい」にんげんどものきょうかんはこくいっこくにねっした、)

「やっしいやっしい」人間どもの叫喚は刻一刻に熱した、

(ふたつのいぬはすきをみあっていちごうにごうさんごう、よんごうめにがっきとくんでたちあがった。)

二つの犬は隙を見あって一合二合三合、四合目にがっきと組んで立ちあがった。

(このとききまたのからだがひらりとおどりでてみぎあしたかくしかげのよこばらに)

このとき木俣の身体がひらりとおどりでて右足高く鹿毛の横腹に

(とぶよとみるまもあらず、いわおのこぶしがはやくきまたのえりにかかった。)

飛ぶよと見るまもあらず、巌のこぶしが早く木俣のえりにかかった。

(「えいっ」こえとともにししおうのあしがちゅうにひるがえってばったりちじょうにたおれた。)

「えいッ」声とともにしし王の足が宙にひるがえってばったり地上にたおれた。

(「いけっ」にねんせいはこれにきをえてとっしんした。)

「いけッ」二年生はこれに気を得て突進した。

(「くるなっ」いわおがこうさけんだ、かれはたおれたてきを)

「くるなッ」巌がこうさけんだ、かれは倒れた敵を

(おさえつけようともせずだまってみていた、)

おさえつけようともせずだまって見ていた、

(かれはきまたのねわざをおそれたのである、きまたのおはこはねわざである。)

かれは木俣の寝業をおそれたのである、木俣の十八番は寝業である。

(「なまいきな」きまたはたちあがってたけりじしのごとくいわおをおそうた、)

「生意気な」木俣は立ちあがってたけりじしのごとく巌を襲うた、

(とらえられてはいわおはしちぶのそんである、かれはじゅうななさい、これはじゅうごさい、)

捕えられては巌は七分の損である、かれは十七歳、これは十五歳、

(じゅうどうにおいてもだんがちがう、だがじゅうどうやけんじゅつとじっせんとはべっこのことである。)

柔道においても段がちがう、だが柔道や剣術と実戦とは別個のことである。

(けんかになれたいわおはすすみくるきまたをみぎにすかしざまにかたてのめつぶしをくらわした。)

喧嘩になれた巌は進みくる木俣を右に透かしざまに片手の目つぶしを食わした。

(きまたのあっとひるんだひょうしにいわおはひだりへまわってむこうずねをけとばした。)

木俣のあっとひるんだ拍子に巌は左へ回って向こうずねをけとばした。

(「ちくしょう」きまたはかたひざをついた、)

「畜生」木俣は片ひざをついた、

(がこのときかれのてははやくもぽけっとにはいった、)

がこのときかれの手は早くもポケットに入った、

(いっちょうのつのえのこがたながそのてにきらりとかがやいた。)

一挺の角柄の小刀がその手にきらりと輝いた。

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