駆込み訴え7

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(かくしてあのひとはみやにはいり、ろばからおりて、)

かくしてあの人は宮に入り、驢馬から降りて、

(なにおもったか、なわをひろいこれをふりまわし、)

何思ったか、縄を拾い之(これ)を振りまわし、

(みやのけいだいの、りょうがえするもののだいやら、)

宮の境内の、両替する者の台やら、

(はとうるもののこしかけやらをうちたおし、)

鳩売る者の腰掛けやらを打ち倒し、

(また、うりものにでているうし、ひつじをも、)

また、売り物に出ている牛、羊をも、

(そのなわのむちでもってぜんぶ、みやからおいだして、)

その縄の鞭(むち)でもって全部、宮から追い出して、

(けいだいにいるおおぜいのしょうにんたちにむかい、)

境内にいる大勢の商人たちに向い、

(「おまえたち、みなでてうせろ、)

「おまえたち、みな出て失せろ、

(わたしのちちのいえを、あきないのいえにしてはならぬ」)

私の父の家を、商いの家にしてはならぬ」

(とかんだかいこえでどなるのでした。)

と甲高い声で怒鳴るのでした。

(あのやさしいおかたが、)

あの優しいお方が、

(こんなよっぱらいのような、つまらぬらんぼうをはたらくとは、)

こんな酔っぱらいのような、つまらぬ乱暴を働くとは、

(どうしてもすこしきがふれているとしか、わたしにはおもわれませんでした。)

どうしても少し気がふれているとしか、私には思われませんでした。

(そばのひともみなおどろいて、)

傍の人もみな驚いて、

(これはどうしたことですか、とあのひとにたずねると、)

これはどうしたことですか、とあの人に訊ねると、

(あのひとのいきせききってこたえるには、)

あの人の息せき切って答えるには、

(「おまえたち、このみやをこわしてしまえ、)

「おまえたち、この宮をこわしてしまえ、

(わたしはみっかのあいだに、またたてなおしてあげるから」)

私は三日の間に、また建て直してあげるから」

(ということだったので、さすがぐちょくのでしたちも、)

ということだったので、さすが愚直の弟子たちも、

(あまりにむてっぽうなそのことばには、しんじかねて、)

あまりに無鉄砲なその言葉には、信じかねて、

など

(ぽかんとしてしまいました。)

ぽかんとしてしまいました。

(けれどもわたしはしっていました。)

けれども私は知っていました。

(しょせんはあのひとの、おさないつよがりにちがいない。)

所詮はあの人の、幼い強がりにちがいない。

(あのひとのしんこうとやらでもって、)

あの人の信仰とやらでもって、

(ばんじならざるはなしというきがいのほどを、)

万事成らざるは無しという気概のほどを、

(ひとびとにみせたかったのにちがいないのです。)

人々に見せたかったのに違いないのです。

(それにしても、なわのむちをふりあげて、)

それにしても、縄の鞭を振りあげて、

(むりょくなしょうにんをおいまわしたりなんかして、)

無力な商人を追い廻したりなんかして、

(なんて、まあ、けちなつよがりなんでしょう。)

なんて、まあ、けちな強がりなんでしょう。

(あなたにできるせいいっぱいのはんこうは、たったそれだけなのですか、)

あなたに出来る精一ぱいの反抗は、たったそれだけなのですか、

(はとうりのこしかけをけちらすだけのことなのですか、)

鳩売りの腰掛けを蹴散らすだけのことなのですか、

(とわたしはびんしょうしておたずねしてみたいとさえおもいました。)

と私は憫笑(びんしょう)しておたずねしてみたいとさえ思いました。

(もはやこのひとはだめなのです。)

もはやこの人は駄目なのです。

(やぶれかぶれなのです。じちょうじあいをわすれてしまった。)

破れかぶれなのです。自重自愛を忘れてしまった。

(じぶんのちからでは、このうえもうなにもできぬということを)

自分の力では、この上もう何も出来ぬということを

(このごろそろそろしりはじめたようすゆえ、)

此の頃そろそろ知り始めた様子ゆえ、

(あまりぼろのでぬうちに、わざとさいしちょうにとらえられ、)

あまりボロの出ぬうちに、わざと祭司長に捕えられ、

(このよからおさらばしたくなってきたのでありましょう。)

この世からおさらばしたくなって来たのでありましょう。

(わたしは、それをおもったとき、はっきりあのひとをあきらめることができました。)

私は、それを思った時、はっきりあの人を諦めることが出来ました。

(そうして、あんなきどりやのぼっちゃんを、)

そうして、あんな気取り屋の坊ちゃんを、

(これまでいちずにあいしてきたわたしじしんのおろかさをも、)

これまで一途に愛して来た私自身の愚かさをも、

(よういにわらうことができました。)

容易に笑うことが出来ました。

(やがてあのひとはみやにあつまるたいぐんのたみをまえにして、)

やがてあの人は宮に集る大群の民を前にして、

(これまでのべたことばのうちでいちばんひどい、)

これまで述べた言葉のうちで一ばんひどい、

(ぶれいごうまんのぼうげんを、めちゃくちゃに、わめきちらしてしまったのです。)

無礼傲慢の暴言を、滅茶苦茶に、わめき散らしてしまったのです。

(さよう、たしかに、やけくそです。)

左様、たしかに、やけくそです。

(わたしはそのすがたをうすぎたなくさえおもいました。)

私はその姿を薄汚くさえ思いました。

(ころされたがって、うずうずしていやがる。)

殺されたがって、うずうずしていやがる。

(「わざわいなるかな、ぎぜんなるがくしゃ、ぱりさいびとよ、)

「禍害(わざわい)なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、

(なんじらはさかずきとさらとのそとをきよくす、)

汝らは酒杯(さかずき)と皿との外を潔くす、

(されどもうちはどんよくとほうしょうとにてみつるなり。)

然れども内は貪慾(どんよく)と放縦とにて満つるなり。

(かがいなるかな、ぎぜんなるがくしゃ、ぱりさいびとよ、)

禍害なるかな、偽善なる学者、パリサイ人よ、

(なんじらはしろくぬりたるはかににたり、)

汝らは白く塗りたる墓に似たり、

(そとはうつくしくみゆれども、)

外は美しく見ゆれども、

(うちはしにんのほねとさまざまのけがれとにみつ。)

内は死人の骨とさまざまの穢(けがれ)とに満つ。

(かくのごとくなんじらもそとはただしくみゆれども、)

斯(かく)のごとく汝らも外は正しく見ゆれども、

(うちはぎぜんとふほうとにてみつるなり。)

内は偽善と不法とにて満つるなり。

(へびよ、まむしのすえよ、)

蛇よ、蝮(まむし)の裔(すえ)よ、

(なんじらあらそいかで、げへなのけいばつをさけえんや。)

なんじら争いかで、ゲヘナの刑罰を避け得んや。

(ああえるされむ、えるされむ、)

ああエルサレム、エルサレム、

(よげんしゃたちをころし、つかわされたるひとびとをいしにてうつものよ、)

予言者たちを殺し、遣(つかわ)されたる人々を石にて撃つ者よ、

(めんどりのそのひなをつばさのしたにあつまむるごとく、)

牝鶏(めんどり)のその雛を翼の下に集むるごとく、

(われなんじのこらをあつめんとなせしこといくたびぞや、)

我なんじの子らを集めんと為せしこと幾度ぞや、

(されど、なんじらはこのまざりき」)

然(さ)れど、汝らは好まざりき」

(ばかなことです。ふんぱんものだ。)

馬鹿なことです。噴飯ものだ。

(くちまねするのさえ、いまわしい。)

口真似するのさえ、いまわしい。

(たいへんなことをいうやつだ。あのひとは、くるったのです。)

たいへんな事を言う奴だ。あの人は、狂ったのです。

(まだそのほかに、ききんがあるの、じしんがおこるの、)

まだそのほかに、饑饉(ききん)があるの、地震が起るの、

(ほしはそらよりおち、つきはひかりをはなたず、)

星は空より堕(お)ち、月は光を放たず、

(ちにみつひとのしがいのまわりに、それをついばむわしがあつまるの、)

地に満つ人の死骸のまわりに、それをついばむ鷲が集るの、

(ひとはそのときなげき、はがみすることがあろうだの、)

人はそのとき哀哭(なげき)、切歯(はがみ)することがあろうだの、

(じつに、とんでもないぼうげんをくちからでまかせにいいはなったのです。)

実に、とんでも無い暴言を口から出まかせに言い放ったのです。

(なんというしりょのないことを、いうのでしょう。)

なんという思慮のないことを、言うのでしょう。

(おもいあがりもはなはだしい。ばかだ。みのほどしらぬ。いいきなものだ。)

思い上りも甚しい。ばかだ。身のほど知らぬ。いい気なものだ。

(もはや、あのひとのつみは、まぬかれぬ。)

もはや、あの人の罪は、まぬかれぬ。

(かならずじゅうじか。それにきまった。)

必ず十字架。それにきまった。

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