風の又三郎 13

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プレイ回数534難易度(4.0) 2245打 長文
九月六日 葡萄蔓
宮沢賢治 作 全文
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ばばあ 2651 E 2.8 93.3% 786.3 2245 160 54 2024/10/05

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問題文

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(すると、またさぶろうはすこしおもしろくなったようで、)

すると、又三郎は少し面白くなった様で、

(またくつくつわらいだしてたずねました。)

またくつくつ笑いだしてたずねました。

(「かぜがせかいじゅうになくってもいいって、どういうんだい。)

「風が世界中に無くってもいいって、どういうんだい。

(いいとかじょうをたてていってごらん。そら。」)

いいと箇條をたてていってごらん。そら。」

(またさぶろうはせんせいみたいなかおつきをして、ゆびをいっぽんだしました。)

又三郎は先生みたいな顔つきをして、指を一本だしました。

(こうすけはしけんのようだし、つまらないことになったとおもって、)

耕助は試験の様だし、つまらないことになったと思って、

(たいへんくやしかったのですが、しかたなくしばらくかんがえてからいいました。)

大へん口惜しかったのですが、仕方なくしばらく考えてからいいました。

(「うななどいたずらばりさな、かさぶっかしたり。」)

「汝など悪戯(イタズラ)ばりさな、傘ぶっ壊(カ)したり。」

(「それからそれから。」またさぶろうはおもしろそうに、ひとあしすすんでいいました。)

「それからそれから。」又三郎は面白そうに、一足進んでいいました。

(「それがら、きおったりおっけあしたりさな。」)

「それがら、樹折ったり転覆(オッケア)したりさな。」

(「それから、それからどうだい。」)

「それから、それからどうだい。」

(「いえもぶっこわさな。」)

「家もぶっ壊さな。」

(「それから、それから、あとはどうだい。」)

「それから、それから、あとはどうだい。」

(「あかしもけさな。」)

「あかし(灯り)も消さな。」

(「それからあとは? それからあとは? どうだい。」)

「それからあとは? それからあとは? どうだい。」

(「しゃっぷもとばさな。」)

「シャップもとばさな。」

(「それから? それからあとは? あとはどうだい。」)

「それから? それからあとは? あとはどうだい。」

(「かさもとばさな。」)

「笠もとばさな。」

(「それからそれから。」)

「それからそれから。」

(「それがら、うう、でんしんばしらもたおさな。」)

「それがら、うう、電信ばしらも倒さな。」

など

(「それから? それから? それから?」)

「それから? それから? それから?」

(「それがらやねもとばさな。」)

「それがら屋根もとばさな。」

(「ああはははやねはいえのうちだい。)

「アアハハハ屋根は家のうちだい。

(どうだいまだあるかい。それから、それから?」)

どうだいまだあるかい。それから、それから?」

(「それだがら、うう、それだがららむぷもけさな。」)

「それだがら、うう、それだがらラムプも消さな。」

(「あははははは、らむぷはあかしのうちだい。けれどそれだけかい。)

「アハハハハハ、ラムプはあかしのうちだい。けれどそれだけかい。

(え、おい。それから? それからそれから。」)

え、おい。それから? それからそれから。」

(こうすけはつまってしまいました。)

耕助はつまってしまいました。

(たいていもういってしまったのですから、いくらかんがえてももうでませんのでした。)

大抵もういってしまったのですから、いくら考えてももう出ませんのでした。

(またさぶろうはいよいよおもしろそうに、ゆびをいっぽんたてながら、)

又三郎はいよいよ面白そうに、指を一本立てながら、

(「それから? それから? ええ? それから?」というのでした。)

「それから? それから? ええ? それから?」というのでした。

(こうすけはかおをあかくして、しばらくかんがえてからやっとこたえました。)

耕助は顔を赤くして、しばらく考えてからやっと答えました。

(「ふうしゃもぶっこわさな。」)

「風車もぶっ壊さな。」

(するとまたさぶろうはこんどこそは、まるでとびあがってわらってしまいました。)

すると又三郎はこんどこそは、まるで飛び上って笑ってしまいました。

(みんなもわらいました。わらってわらってわらいました。)

みんなも笑いました。笑って笑って笑いました。

(またさぶろうはやっとわらうのをやめていいました。)

又三郎はやっと笑うのをやめていいました。

(「そらごらん、とうとうふうしゃなどをいっちゃったろう。)

「そらごらん、とうとう風車などをいっちゃったろう。

(ふうしゃならかぜをわるくおもっちゃいないんだよ。)

風車なら風を悪く思っちゃいないんだよ。

(もちろんときどきこわすこともあるけれども、まわしてやるときのほうがずっとおおいんだ。)

勿論時々こわすこともあるけれども、廻してやる時の方がずっと多いんだ。

(ふうしゃなら、ちっともかぜをわるくおもっていないんだ。)

風車なら、ちっとも風を悪く思っていないんだ。

(それにだいいちおまえのさっきからのかぞえようは、あんまりおかしいや。)

それに第一お前のさっきからの数えようは、あんまりおかしいや。

(うう、うう、でばかりいたんだろう。)

うう、うう、でばかりいたんだろう。

(おしまいにとうとうふうしゃなんかかぞえちゃった。ああおかしい。」)

おしまいにとうとう風車なんか数えちゃった。ああおかしい。」

(またさぶろうはまたなみだのでるほどわらいました。)

又三郎はまた泪の出るほど笑いました。

(こうすけもさっきからあんまりこまったために、)

耕助もさっきからあんまり困ったために、

(おこっていたのも、だんだんわすれてきました。)

怒っていたのも、だんだん忘れて来ました。

(そしてついまたさぶろうといっしょにわらいだしてしまったのです。)

そしてつい又三郎と一しょに笑い出してしまったのです。

(するとまたさぶろうもすっかりきげんをなおして、)

すると又三郎もすっかりきげんを直して、

(「こうすけくん、いたずらをしてすまなかったよ。」といいました。)

「耕助君、いたずらをして済まなかったよ。」といいました。

(「さあそれでぁいぐべな。」といちろうはいいながら、)

「さあそれでぁ行ぐべな。」と一郎はいいながら、

(またさぶろうにぶどうをごふさばかりくれました。)

又三郎にぶどうを五ふさばかりくれました。

(またさぶろうはしろいくりをみんなにふたつづつわけました。)

又三郎は白い栗をみんなに二つづつ分けました。

(そしてみんなはしたのみちまでいっしょにおりて、)

そしてみんなは下のみちまでいっしょに下りて、

(あとはめいめいのうちへかえったのです。)

あとはめいめいのうちへ帰ったのです。

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