銀河鉄道の夜 27
宮沢賢治 作
ふたりは顔を見合わせましたら、燈台守は、にやにや笑って、少し伸び上がるようにしながら、ふたりの横の窓の外をのぞきました。
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問題文
(「どこへいったんだろう。」)
「どこへ行ったんだろう。」
(ふたりはかおをみあわせましたら、)
ふたりは顔を見合わせましたら、
(とうだいもりは、にやにやわらって、すこしのびあがるようにしながら、)
燈台守は、にやにや笑って、少し伸び上がるようにしながら、
(ふたりのよこのまどのそとをのぞきました。)
ふたりの横の窓の外をのぞきました。
(ふたりもそっちをみましたら、たったいまのとりとりが、)
ふたりもそっちを見ましたら、たったいまの鳥とりが、
(きいろとあおじろの、うつくしいりんこうをだす、)
黄いろと青じろの、うつくしい燐光を出す、
(いちめんのかわらははこぐさのうえにたって、)
いちめんのかわらははこぐさの上に立って、
(まじめなかおをしてりょうてをひろげて、じっとそらをみていたのです。)
まじめな顔をして両手をひろげて、じっとそらを見ていたのです。
(「あすこへいってる。ずいぶんきたいだねえ。)
「あすこへ行ってる。ずいぶん奇体だねえ。
(きっとまたとりをつかまえるとこだねえ。)
きっとまた鳥をつかまえるとこだねえ。
(きしゃがはしっていかないうちに、はやくとりがおりるといいな。」)
汽車が走って行かないうちに、早く鳥がおりるといいな。」
(といったとたん、がらんとしたききょういろのそらから、)
といったとたん、がらんとしたききょういろの空から、
(さっきみたようなさぎが、まるでゆきのふるように、)
さっき見たようなさぎが、まるで雪の降るように、
(ぎゃあぎゃあさけびながら、いっぱいにまいおりてきました。)
ぎゃあぎゃあ叫びながら、いっぱいに舞いおりてきました。
(するとあのとりとりは、すっかりちゅうもんどおりだというようにほくほくして、)
するとあの鳥とりは、すっかり注文通りだというようにほくほくして、
(りょうあしをかっきりろくじゅうどにひらいてたって、)
両足をかっきり六十度にひらいて立って、
(さぎのちぢめておりてくるくろいあしをりょうてでかたっぱしからおさえて、)
サギのちぢめて降りてくる黒い脚を両手で片っ端から押さえて、
(ぬののふくろのなかにいれるのでした。)
布の袋の中に入れるのでした。
(するとさぎは、ほたるのように、ふくろのなかでしばらく、)
するとサギは、ほたるのように、袋の中でしばらく、
(あおくぺかぺかひかったりきえたりしていましたが、)
青くぺかぺか光ったり消えたりしていましたが、
(おしまいとうとう、みんなぼんやりしろくなって、めをつぶるのでした。)
おしまいとうとう、みんなぼんやり白くなって、目をつぶるのでした。
(ところが、つかまえられるとりよりは、)
ところが、つかまえられる鳥よりは、
(つかまえられないでぶじにあまのがわのすなのうえに)
つかまえられないで無事に天の川の砂の上に
(おりるもののほうがおおかったのです。)
降りるものの方が多かったのです。
(それはみていると、あしがすなへつくやいなや、)
それは見ていると、足が砂へつくや否や、
(まるでゆきのとけるように、ちぢまってひらべったくなって、)
まるで雪のとけるように、ちぢまってひらべったくなって、
(まもなくようこうろからでたどうのしるのように、すなやじゃりのうえにひろがり、)
間もなく熔鉱炉から出た銅の汁のように、砂や砂利の上にひろがり、
(しばらくはとりのかたちが、すなについているのでしたが、)
しばらくは鳥の形が、砂についているのでしたが、
(それもに、さんどあかるくなったりくらくなったりしているうちに、)
それも二、三度明るくなったり暗くなったりしているうちに、
(もうすっかりまわりとおなじいろになってしまうのでした。)
もうすっかりまわりと同じいろになってしまうのでした。