魯迅 阿Q正伝その17
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問題文
(だい5しょう せいけいもんだい)
第五章 生計問題
(あきゅうはおれいをすましてもとのおみやにかえってくると、たいようはおりてしまい、)
阿Qはお礼を済ましてもとのお宮に帰って来ると、太陽は下りてしまい、
(だんだんよのなかがへんになってきた。)
だんだん世の中が変になって来た。
(かれはいちいちおもいまわしたけっかついにさとるところがあった。)
彼は一々想い廻した結果ついに悟るところがあった。
(そのげんいんはつまりじぶんのはだかにあるので、)
その原因はつまり自分の裸にあるので、
(かれはやぶれあわせがまだ1まいのこっていることをおもいだし、)
彼は破れ袷がまだ1枚残っていることを想い出し、
(それをひきかけてよこになってめをあけてみると)
それを引掛けて横になって眼を開けてみると
(たいようはまだにしのまがきをてらしているのだ。)
太陽はまだ西の墻を照しているのだ。
(かれはおきあがりながら「おふくろのようなものだ」といってみた。)
彼は起き上りながら「お袋のようなものだ」と言ってみた。
(かれはそれからまたいつものようにまちにでてあそんだ。)
彼はそれからまたいつものように街に出て遊んだ。
(らじゃのみをきるようなつらさはないが、)
裸者の身を切るようなつらさはないが、
(だんだんよのなかがへんにかんじてきた。)
だんだん世の中が変に感じて来た。
(なにかしらんがみしょうのおんなはそのひからかれをきみわるがった。)
何か知らんが未荘の女はその日から彼を気味悪がった。
(かれらはあきゅうをみるとみなもんのなかへにげこんだ。)
彼等は阿Qを見ると皆門の中へ逃げ込んだ。
(きょくたんなことには50にちかいすうしちそうまで)
極端なことには50に近い鄒七嫂まで
(ひとのあとについてもぐりこみ、)
人のあとに跟いて潜り込み、
(そのうえ11になるおんなのこをよびいれた。)
その上11になる女の子を喚び入れた。
(あきゅうはふしぎでたまらない。)
阿Qは不思議でたまらない。
(「こいつらはどれもこれもおじょうさんのようなしなしていやがる。)
「こいつらはどれもこれもお嬢さんのようなしなしていやがる。
(なんだ、ばいため」)
なんだ、売女め」
(あきゅうはこらえきれなくなって)
阿Qはこらえ切れなくなって
(おなじみのうちにいってさぐりをいれた。)
おなじみの家に行って探りを入れた。
(ただしちょうけのしきいだけはまたぐことができない)
ただし趙家の敷居だけは跨ぐことが出来ない
(なにしろようすがすこぶるへんなので、どこでもきっとおとこがでてきて、)
何しろ様子がすこぶる変なので、どこでもきっと男が出て来て、
(うるさそうなかおつきをみせ、)
うるさそうな顔つきを見せ、
(まるでこじきをおっぱらうようなていさいで)
まるで乞食を追っ払うような体裁で
(「ないよないよ。むこうへいってくれ」とてをふった。)
「無いよ無いよ。向うへ行ってくれ」と手を振った。
(あきゅうはいよいよふしぎにかんじた。)
阿Qはいよいよ不思議に感じた。
(このへんのうちはまえからてつだいがいるはずなんだが、)
この辺の家は前から手伝いが要るはずなんだが、
(いまきゅうにひまになるわけがない。)
今急に暇になるわけがない。
(こりゃあきっとなにかいわくがあるはずだ、ときをつけてみると、)
こりゃあきっと何かいわくがあるはずだ、と気をつけてみると、
(かれらはようのあるときにはしょうどんをよんでいた。)
彼等は用のある時には小DONをよんでいた。
(このしょうどんはごくごくみすぼらしいやつでやせおとろえていた。)
この小Dはごくごくみすぼらしい奴で痩せ衰えていた。
(あきゅうのめからみるとわんうーよりもおとっている。)
阿Qの眼から見ると王鬍よりも劣っている。
(ところがこのこわっぱめがついにあきゅうのめしわんをとってしまったんだから、)
ところがこの小わっぱめが遂に阿Qの飯碗を取ってしまったんだから、
(あきゅうのいかりじんじょういちようのものではない。)
阿Qの怒り尋常一様のものではない。
(かれはぷんぷんしながらあるきだした。そうしてたちまちてをあげてうなった。)
彼はぷんぷんしながら歩き出した。そうしてたちまち手をあげて呻った。
(「てつのむちでてめえをひっぱたくぞ」)
「鉄の鞭で手前を引ッぱたくぞ」
(いくにちかのあとで、かれはついにせんふのてりかべ(ついたてのかべ))
幾日かのあとで、彼は遂に錢府の照壁(衝立の壁)
(のまえでしょうどんにめぐりあった。)
の前で小Dにめぐり逢った。
(「かたきのであいはかくべつはっきりみえる」)
「讎の出会いは格別ハッキリ見える」
(もので、かれはずかずかしょうどんのまえにいくとしょうどんもたちどまった。)
もので、彼はずかずか小Dの前に行くと小Dも立止った。
(「ちくしょう!」あきゅうはめにかどをたてくちのはへあわをふきだした。)
「畜生!」阿Qは眼にかどを立て口の端へ沫を吹き出した。
(「おれはむしけらだよ。いいじゃねぇか」としょうどんはいった。)
「俺は虫ケラだよ。いいじゃねぇか」と小Dは言った。
(したてにでられてあきゅうはかえってはらをたてた。)
下手に出られて阿Qはかえって腹を立てた。
(かれのてにはてつのむちがなかった。そこでただなぐるよりしようがなかった。)
彼の手には鉄の鞭が無かった。そこでただ殴るより仕様がなかった。
(かれはてをのばしてしょうどんのべんつをひっつかむと、)
彼は手を伸して小Dの辮子を引掴むと、
(しょうどんはかたっぽのてでじぶんのべんこんをまもり、)
小Dは片ッぽの手で自分の辮根を守り、
(かたっぽのてであきゅうのべんつをつかんだ。)
片ッぽの手で阿Qの辮子を掴んだ。
(あきゅうもまたあいているほうのてでじぶんのべんこんをまもった。)
阿Qもまた空いている方の手で自分の辮根を守った。
(いぜんのあきゅうのいきおいをみるとしょうどんなどもんだいにもならないが、)
以前の阿Qの勢いを見ると小Dなど問題にもならないが、
(ちかごろかれはきがのためやせおとろえているので)
近頃彼は飢餓のため痩せ衰えているので
(ごぶごぶのとりくみとなった。)
五分五分の取組となった。
(よっつのては2つのあたまをひっつかんでそうほうこしをまげ、)
四つの手は2つの頭を引掴んで双方腰を曲げ、
(はんじかんのひさしきにわたって、)
半時間の久しきに渡って、
(せんふのしらかべのうえにひとくみのあいいろのにじがたをえいしゅつした。)
錢府の白壁の上に一組の藍色の虹形を映出した。