魯迅 阿Q正伝その25
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問題文
(だい7しょう かくめい)
第7章 革命
(せんとう3ねん9がつ14にち、)
宣統3年9月14日、
(すなわちあきゅうがとうれんをちょうはくがんにうってやったそのひ、まよなかすぎに、)
すなわち阿Qが搭連を趙白眼に売ってやったその日、真夜中過ぎに、
(ひとつのおおきなくろとまのふねが、ちょうやしきのかわぞいのふとうについた。)
一つの大きな黒苫の船が、趙屋敷の河添いの埠頭に着いた。
(このふねはくらやみのなかをゆられてきた。)
この船は暗闇の中を揺られて来た。
(むらびとはぐっすりねこんでいたので、みなしらなかった。)
村人はぐっすり寝込んでいたので、皆知らなかった。
(でていくときはあけがたちかかったがそれがかえってひとめをひいた。)
出て行く時は明け方近かったがそれがかえって人目を引いた。
(こっそりしらべだしたけっかによると、)
こっそり調べ出した結果によると、
(ふねはけっきょくきょじんだんなのふねであるとしれた。)
船は結局挙人老爺の船であると知れた。
(このふねはとりもなおさずだいふあんをみしょうにはこんでくれて、)
この船はとりもなおさず大不安を未荘に運んでくれて、
(ひるにもならぬうちにぜんそんのじんしんはひじょうにどうようした。)
昼にもならぬうちに全村の人心は非常に動揺した。
(ふねのしめいはもとよりちょうけのごくひであったが、)
船の使命はもとより趙家の極秘であったが、
(さかんやさかやのなかでは、かくめいとうがにゅうじょうするので、)
茶館や酒屋の中では、革命党が入城するので、
(きょじんだんながわれわれのいなかにひなんしてきたと、みないった。)
挙人老爺がわれわれの田舎に避難して来たと、皆言った。
(ただすうしちそうだけはそうとはいわず、)
ただ鄒七嫂だけはそうとは言わず、
(あれはつまらぬがらくたどうぐやぼろきものをいれたはこで、)
あれは詰らぬガラクタ道具やボロ着物を入れた箱で、
(きょじんだんながほかんをたのんできたが、ちょうだんながつきかえしてしまったんですといった。)
挙人老爺が保管を頼んで来たが、趙太爺が突返してしまったんですと言った。
(じっさいきょじんだんなとちょうしゅうさいは、)
実際挙人老爺と趙秀才は、
(もとからあんまりなかのいいほうではないので)
もとからあんまり仲のいい方ではないので
(「しんみのなきより」)
「しん身の泣き寄り」
(などするはずがない。)
などするはずがない。
(ましてすうしちそうはちょうけのとなりにいるのでけんぶんがわりあいにかくじつだ。)
まして鄒七嫂は趙家の隣にいるので見聞が割合に確実だ。
(だからたいがいかのじょのいうことにはまちがいがない。)
だから大概彼女の言うことには間違いがない。
(そうはいうものの、ようげんはなかなかさかんだ。)
そうはいうものの、謡言はなかなか盛んだ。
(きょじんだんなはじしんきたわけではないが、)
挙人老爺は自身来たわけではないが、
(ながいてがみをよこしてちょうけと「なかなおり」をしたらしい。)
長い手紙を寄越して趙家と「仲直り」をしたらしい。
(ちょうだんなははらのなかがいっぺんして、)
趙太爺は腹の中が一変して、
(どうしてもかれにわるいところがないとかんじたのではこをあずかり、)
どうしても彼に悪い処がないと感じたので箱を預り、
(げんにちょうたいたいのとこのしたをふさいでいる。)
現に趙太太の床の下を塞いでいる。
(かくめいとうのことについては、かれらはそのばん、しろにはいって、)
革命党のことについては、彼等はその晩、城に入って、
(どれもこれもしろはちまき、しろかぶとで、)
どれもこれも白鉢巻、白兜で、
(すうせいこうていのしろしょうぞくをきていたという。)
崇正皇帝の白装束を着ていたという。
(あきゅうのじだのなかにも、とうからかくめいとうというはなしをききおよんで、)
阿Qの耳朶の中にも、とうから革命党という話を聞き及んで、
(ことしまたまぢかにころされたかくめいとうをみた。)
今年また間近に殺された革命党を見た。
(かれはどこからきたかしらん、いっしゅのいけんをもっていた。)
彼はどこから来たかしらん、一種の意見を持っていた。
(かくめいとうはむほんにんだ、むほんにんはおれはいやだ、にくむべきものだ、)
革命党は謀反人だ、謀反人は俺はいやだ、憎むべき者だ、
(だんぜつすべきものだ、といちずにこうおもっていた。)
断絶すべき者だ、と一途にこう思っていた。
(ところがひゃくりのあいだになのひびいたきょじんだんなが、)
ところが百里の間に名の響いた挙人老爺が、
(このようにおそれたときいては、かれもまたいささかかんしんさせられずにはいられない。)
この様に恐れたと聞いては、彼もまたいささか感心させられずにはいられない。
(ましてむらとりのようなみしょうのだんじょがあわてまどうありさまは、)
まして村鳥のような未荘の男女が慌て惑う有様は、
(かれをしていっそうつうかいならしめた。)
彼をしていっそう痛快ならしめた。
(「かくめいもよかろう」とあきゅうはおもった。)
「革命も良かろう」と阿Qは想った。
(「ここらにいるばかやろうどものうんめいをあらためてやれ。)
「ここらにいる馬鹿野郎どもの運命を革めてやれ。
(うらむべきやつらだ。にくむべきやつらだ、そうだ、おれもかくめいとうにはいってやろう」)
恨むべき奴等だ。憎むべき奴等だ、そうだ、俺も革命党に入ってやろう」
(あきゅうはちかごろせいかつのひようにくるしみないないかなりのふへいがあった。)
阿Qは近頃生活の費用に苦しみ内々かなりの不平があった。
(おまけにひるまのんだすきっぱらのにはいのさけが、まわればまわるほどゆかいになった。)
おまけに昼間飲んだ空きっ腹の二杯の酒が、廻れば廻るほど愉快になった。
(そうおもいながらあるいていると、からだがふらりふらりとちゅうにういてきた。)
そう思いながら歩いていると、身体がふらりふらりと宙に浮いて来た。
(どうしたはずみか、ふとかくめいとうがじぶんであるようにおもわれた。)
どうした筈みか、ふと革命党が自分であるように思われた。
(みしょうのひとはみなかれのとりことなった。)
未荘の人は皆彼の虜となった。
(かれはとくいのあまりさけばずにはいられなかった。)
彼は得意のあまり叫ばずにはいられなかった。