森鴎外 大塩平八郎その2

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(もんばんはふたりのわかものにたいして、こんなもんどうをした。) 門番は二人の若者に対して、こんな問答をした。 (よしみのちちがしょうねんふたりをよこしてみつそにおよんだので、) 吉見の父が少年二人をよこして密訴に及んだので、 (もんばんもさいぎしんをおこさずにおうたいして、かえってはこびがよかった。) 門番も猜疑心を起さずに応対して、却って運びが好かった。 (もんばんのききとったところを、とうばんのものがなかいずみにとどける。なかいずみがほりにもうしあげる。) 門番の聞き取った所を、当番のものが中泉に届ける。中泉が堀に申し上げる。 (まもなくほりのさしずで、なかいずみがふたりをながやによびいれて、) 間もなく堀の指図で、中泉が二人を長屋に呼び入れて、 (いちおうとりしらべたうえ、そじょうをうけとった。) 一応取り調べた上、訴状を受け取った。 (ほりはぜんやく・やべするがのかみさだのりのあとをついで、きょねんじゅういちがつににしまちぶぎょうになって、) 堀は前役・矢部駿河守定謙の跡をついで、去年十一月に西町奉行になって、 (ようやくこんげつふつかにとうちゃくした。) ようやく今月二日に到着した。 (とうざいのまちぶぎょうはつきばんこうたいをしてしょくむをおこなっていて、こんげつはほりがひばんである。) 東西の町奉行は月番交代をして職務を行っていて、今月は堀が非番である。 (ひがしまちぶぎょう・あとべやましろのかみよしすけもきょねんしがつにぶぎょうににんぜられて、) 東町奉行・跡部山城守良弼も去年四月に奉行に任ぜられて、
(しちがつにとうちゃくしたのだから、まだおおさかにははんとししかおらぬが、) 七月に到着したのだから、まだ大坂には半年しか居らぬが、 (とにかくいちじつのちょうがあるので、ほりはひきまわしてもらうというふうになっている。) 兎に角一日の長があるので、堀は引き廻して貰うと云う風になっている。 (まちぶぎょうになっておおさかにきたものは、しょにゅうしきといって、) 町奉行になって大坂に来たものは、初入式と云って、 (まえからいるまちぶぎょうといっしょにさんどにわけてしちゅうをじゅんけんする。) 前から居る町奉行と一緒に三度に分けて市中を巡見する。 (しょどがきたぐみ、にどめがみなみぐみ、さんどめがてんまぐみである。) 初度が北組、二度目が南組、三度目が天満組である。 (きたぐみ、みなみぐみとはおおてまえはほんまちどおりきたがわ、せんばはあづちちょうどおり、) 北組、南組とは大手前は本町通北側、船場は安土町通、 (にしよこぼりいせいはかんだちょうどおりをさかいにして、しちゅうをにぶんしてあるのである。) 西横堀以西は神田町通を境にして、市中を二分してあるのである。 (てんまぐみとはきたぐみのきたざかいになっているおおかわよりさらにほっぽうにあたるちいきで、) 天満組とは北組の北境になっている大川より更に北方に当る地域で、 (ひがしはざいもくぐらからにしはどうじまのこめいちばまでのあいだ、) 東は材木蔵から西は堂島の米市場までの間、 (てんまのあおものしじょう、てんまんぐう、そうかいじょとうをふくんでいる。) 天満の青物市場、天満宮、総会所等を含んでいる。

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