半七捕物帳 猫騒動11

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第12話

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(「むすこがてんびんぼうでおふくろをなぐりころしたんだといううわさで・・・・・・」)

「息子が天秤棒でおふくろをなぐり殺したんだという噂で……」

(「まあ」)

「まあ」

(おはつはめのいろまでかえて、はんしちとくまぞうとのかおをみくらべるようにうかがっていた。)

お初は眼の色まで変えて、半七と熊蔵との顔を見くらべるように窺っていた。

(「おい、おい、そんなつまらないことをうっかりいわないほうがいいぜ」と、)

「おい、おい、そんな詰まらないことをうっかり云わない方がいいぜ」と、

(はんしちはせいした。「ほかのこととちがって、おやごろしだ。ひとつまちがったひにゃあ)

半七は制した。「他の事と違って、親殺しだ。一つ間違った日にゃあ

(ほんにんはもちろんのこと、かかりあいのにんげんはみんなとんだめにあわなけりゃあ)

本人は勿論のこと、かかり合いの人間はみんな飛んだ目に逢わなけりゃあ

(ならない。めったなことをいうもんじゃあないよ」)

ならない。滅多なことを云うもんじゃあないよ」

(めでしらされて、くまぞうはあわてたようにくちをむすんだ。)

眼で知らされて、熊蔵はあわてたように口を結んだ。

(おはつもきゅうにだまってしまった。いちざがすこししらけたので、はんしちはそれをしおに)

お初も急に黙ってしまった。一座が少し白けたので、半七はそれを機(しお)に

(ざをたった。)

座を起った。

(「どうもおじゃまをしました。きょうはこんなてんきだからとうりょうはおうちかと)

「どうもお邪魔をしました。きょうはこんな天気だから棟梁はお内かと

(おもってきたんですが、それじゃあまたでなおしてうかがいます」)

思って来たんですが、それじゃあ又出直して伺います」

(おはつははんしちのうちをきいて、ていしゅがかえったらすぐにこちらからうかがわせますと)

お初は半七の家を訊いて、亭主が帰ったら直ぐにこちらから伺わせますと

(いったが、はんしちはあしたまたくるからそれにはおよばないとことわってわかれた。)

云ったが、半七はあしたまた来るからそれには及ばないと断わって別れた。

(「あのにょうぼうがはじめてねこばばのしがいをみつけたんだな」と、ろじをでると)

「あの女房がはじめて猫婆の死骸を見付けたんだな」と、路地を出ると

(はんしちはくまぞうにきいた。)

半七は熊蔵に訊いた。

(「そうです。あのかかあ、ねこばばのはなしをしたらすこしへんなつらを)

「そうです。あの嬶(かかあ)、猫婆の話をしたら少し変な面(つら)を

(していましたね」)

していましたね」

(「むむ、たいていわかった。おまえはもうこれでかえっていい。)

「むむ、大抵判った。お前はもうこれで帰っていい。

(あとはおれがひきうけるから。なに、おれひとりでだいじょうぶだ」)

あとは俺が引き受けるから。なに、おれ一人で大丈夫だ」

など

(くまぞうにわかれて、はんしちはそれからほかへようたしにいった。そうして、)

熊蔵に別れて、半七はそれから他へ用達に行った。そうして、

(ゆうななつ(ごごよじ)まえにふたたびろじのくちにたった。あめがまたひとしきり)

夕七ツ(午後四時)前に再び路地の口に立った。雨が又ひとしきり

(つよくなってきたのをさいわいに、かれはほおかむりをしてかさをかたむけて、)

強くなって来たのを幸いに、かれは頬かむりをして傘を傾けて、

(ねこばばのみなみどなりのあきやへしのびこんだ。かれはおもてのとをそっとしめて、)

猫婆の南隣りの空家へ忍び込んだ。彼は表の戸をそっと閉めて、

(しめっぽいたたみのうえにあぐらをかいて、ときどきにてんじょううらへぽとぽとおちてくる)

しめっぽい畳の上にあぐらを搔いて、時々に天井裏へぽとぽと落ちて来る

(あまもりのおとをきいていた。くずれたかべのしたにこおろぎがないて、)

雨漏(あまもり)の音を聴いていた。くずれた壁の下にこおろぎが鳴いて、

(ひのけのないあきやはうすらさむかった。)

火の気のない空家は薄ら寒かった。

(ここのうちのまえをとおるかさのおとがきこえて、だいくのにょうぼうは)

ここの家の前を通る傘の音がきこえて、大工の女房は

(そとからかえってきたらしかった。)

外から帰って来たらしかった。

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