67 表面張力と水素結合

(みずは、ちじょうでもっともありふれたぶっしつでありながら、もっともふしぎな)

水は、地上で最もありふれた物質でありながら、最も不思議な

(ぶっしつでもある。たとえば、こたいになるとえきたいのときよりみつどが)

物質でもある。例えば、固体になると液体のときより密度が

(ひくくなる。こおりがみずにうくのは、そのためだ。また、たいりょうのねつを、)

低くなる。氷が水に浮くのは、そのためだ。また、大量の熱を、

(あまりへんかすることなくきゅうしゅうすることができる。だからうみにめんした)

あまり変化することなく吸収することができる。だから海に面した

(としはきおんのへんかがおだやかだ。しかも、みずには「ひふ」がある。)

都市は気温の変化が穏やかだ。しかも、水には「皮膚」がある。

(みずのぶんしが、ひょうめんでたがいにくっつこうとしてうすいそうをつくるのだ。)

水の分子が、表面で互いにくっつこうとして薄い層を作るのだ。

(みずのふしぎなせいしつは、みずぶんしのかたちがげんいんだ。みずぶんしは、)

水の不思議な性質は、水分子の形が原因だ。水分子は、

(にこのすいそげんしといっこのさんそげんしでこうせいされる)

二個の水素原子と一個の酸素原子で構成される

(（ぶんししきでかけばｈ２ｏ）。そのかたちは、みっきーまうすのかおに)

（分子式で書けばH2O）。その形は、ミッキーマウスの顔に

(にている。ふたつのすいそげんしがみみで、さんそげんしがあたまだ。)

似ている。ふたつの水素原子が耳で、酸素原子が頭だ。

(みずぶんしのないぶではでんしがきんとうにぶんぷしていないので、)

水分子の内部では電子が均等に分布していないので、

(みみはせい（ぷらす）のでんかをおび、あたまはふ（まいなす）のでんかを)

耳は正（プラス）の電荷を帯び、頭は負（マイナス）の電荷を

(おびる。ことなるでんかどうしはひきつけあうため、あるみずぶんしの)

帯びる。異なる電荷どうしは引きつけ合うため、ある水分子の

(みみは、べつのみずぶんしのあごにひきよせられる。こうしてつくられる)

耳は、別の水分子のあごに引き寄せられる。こうして作られる

(のがすいそけつごうだ。こおりでは、みずぶんしがあんていてきにけつごうして、)

のが水素結合だ。氷では、水分子が安定的に結合して、

(せいしめんたい（せいさんかっけいがよっつのぴらみっどけいのりったい）をつくる。)

正四面体（正三角形が四つのピラミッド形の立体）を作る。

(ところがえきたいでは、みずぶんしのつくるこうぞうがゆるくなる。すいそけつごうが、)

ところが液体では、水分子の作る構造が緩くなる。水素結合が、

(こわれたりけいせいされたりをたえずくりかえしているのだ。じっさい、)

壊れたり形成されたりを絶えず繰り返しているのだ。実際、

(すいそけつごうのへいきんじゅみょうは、わずかいっちょうぶんのいちびょうぐらいにすぎない。)

水素結合の平均寿命は、わずか一兆分の一秒ぐらいにすぎない。

(こっぷにはいったみずのちゅうしんぶでは、どのみずぶんしもしほうはっぽうへおなじ)

コップに入った水の中心部では、どの水分子も四方八方へ同じ