『妖怪博士』江戸川乱歩33

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少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
※分かりやすくする為、表記等を一部改変しております

○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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第1作品→https://typing.twi1.me/game/314206
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7091 7.2 97.6% 587.9 4272 103 98 2024/10/08
2 みき 6039 A++ 6.1 97.4% 698.6 4331 112 98 2024/09/14

関連タイピング

問題文

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(「おそろしいへや」)

「恐ろしい部屋」

(こいずみくんは、なにがなんだかわけがわかりませんでした。)

小泉君は、何がなんだか訳が分かりませんでした。

(まいごのしょうじょをしんせつしんでつれてきてやったのに、)

迷子の少女を親切心で連れて来てやったのに、

(いきなりこんなみょうなへやへとじこめてしまう)

いきなりこんなみょうな部屋へ閉じ込めてしまう

(なんて、ここのしゅじんはきちがいなのでしょうか。)

なんて、ここの主人はキチガイなのでしょうか。

(でもしゅじんはみたところ、なかなかにりっぱなしんしです。)

でも主人は見たところ、なかなかに立派な紳士です。

(あごひげをさんかっけいにはやし、おおきなべっこうぶちの)

あごヒゲを三角形に生やし、大きなベッコウ縁の

(めがねをかけて、えらいがくしゃのようなふうぼうです。)

眼鏡をかけて、偉い学者のような風貌です。

(そのりっぱなおじさんが、しょうじょのおんじんでもあるこいずみくんを)

その立派なおじさんが、少女の恩人でもある小泉君を

(こんなめにあわせるなんて、いったいどうしたの)

こんな目にあわせるなんて、一体どうしたの

(でしょう。しばらくすると、どこかかべのむこうがわで、)

でしょう。しばらくすると、どこか壁の向こう側で、

(じじじという、もーたーでもまわりはじめたような)

ジジジという、モーターでも回り始めたような

(うすきみわるいものおとがきこえてきました。こいずみくんは、)

薄気味悪い物音が聞こえてきました。 小泉君は、

(げかびょういんのしゅじゅつだいにでものせられているような、)

外科病院の手術台にでも乗せられているような、

(なんともいえないおそろしさに、くちのなかがからからに)

なんともいえない恐ろしさに、口の中がカラカラに

(かわいてしまって、ものもいえないほどでした。きっと)

かわいてしまって、物も言えないほどでした。きっと

(かおいろも、まっさおにかわっていたにちがいありません。)

顔色も、真っ青に変わっていたに違いありません。

(そうしているうちにも、もーたーらしいおとにまじり、)

そうしているうちにも、モーターらしい音に混じり、

(はぐるまとはぐるまがかみあうような、そうぞうしいひびきが)

歯車と歯車が噛み合うような、騒々しい響きが

(おこり、きのせいかてつばりのへやが、こきざみに)

起こり、気のせいか鉄張りの部屋が、小刻みに

など

(しんどうしはじめたようにおもわれます。こいずみくんのしんぞうは、)

震動し始めたように思われます。 小泉君の心臓は、

(はやがねをつくようにどきどきしてきました。ああ、)

早鐘をつくようにドキドキしてきました。ああ、

(ぼくはどうなるのだろう。いまに、どんなおそろしい)

ぼくはどうなるのだろう。今に、どんな恐ろしい

(ことがおこるのだろうとおもうと、もうじっとしては)

ことが起こるのだろうと思うと、もうジッとしては

(いられません。にげみちがないのはわかっていても、)

いられません。逃げ道がないのは分かっていても、

(どうにかしてにげだせないかと、おいつめられた)

どうにかして逃げ出せないかと、追い詰められた

(けだもののようにきょろきょろと、あたりをみまわし)

ケダモノのようにキョロキョロと、あたりを見回し

(ました。そして、ふとてんじょうをみあげると、おお、)

ました。 そして、ふと天井を見上げると、おお、

(なんということでしょう。そのくろいてつばりのてんじょうが、)

なんということでしょう。その黒い鉄張りの天井が、

(すこしずつすこしずつ、まるでむしがはうようなのろさで、)

少しずつ少しずつ、まるで虫が這うようなノロさで、

(したへしたへとおりてくるではありませんか。こいずみくんは、)

下へ下へと下りてくるではありませんか。 小泉君は、

(このあくまのようなできごとを、きゅうにはしんじるきに)

この悪魔のような出来事を、急には信じる気に

(なれませんでした。じぶんのめが、どうかしている)

なれませんでした。自分の目が、どうかしている

(のではないかとうたがいました。でもじっとみあげて)

のではないかと疑いました。でもジッと見上げて

(いると、てんじょうはたしかにじりじりとおりてきます。)

いると、天井は確かにジリジリと下りてきます。

(いちびょうかんに、ほんのいちみりほどのおそいそくどですが、)

一秒間に、ほんの一ミリほどの遅い速度ですが、

(かくじつにすこしのやすみもなく、こいずみくんのずじょうをめがけて)

確実に少しの休みもなく、小泉君の頭上を目がけて

(おりてくるのです。「おじさん、ここをあけて)

下りてくるのです。「おじさん、ここをあけて

(ください。はやくあけてください」こいずみくんは)

ください。早くあけてください」小泉君は

(しにものぐるいで、てつばりのどあをたたきつづけました。)

死に物狂いで、鉄張りのドアを叩き続けました。

(「ははは、やっとわかったようだね。てんじょうをみた)

「ハハハ、やっと分かったようだね。天井を見た

(かね。そのてんじょうは、つうじょうのてんじょうじゃないんだよ。)

かね。その天井は、通常の天井じゃないんだよ。

(あつさがいちめーとるもある、おもいおもいてんじょうなんだよ。)

厚さが一メートルもある、重い重い天井なんだよ。

(そのてんじょうが、どんどんきみのうえへおちてくるんだ。)

その天井が、ドンドンきみの上へ落ちてくるんだ。

(すると、おしまいには、どういうことになるとおもう)

すると、おしまいには、どういうことになると思う

(かね。え、こいずみくん、きみにはそれがわかるかね」)

かね。え、小泉君、きみにはそれが分かるかね」

(はぐるまのひびきにまじって、しわがれたこえがきみわるく)

歯車の響きに混じって、しわがれた声が気味悪く

(きこえてきました。こいずみくんはぞっとして、その)

聞こえてきました。 小泉君はゾッとして、その

(おもそうなてつばりのてんじょうをみあげました。すると)

重そうな鉄張りの天井を見上げました。すると

(どうでしょう。てんじょうはいつのまにか、もとのたかさから)

どうでしょう。天井はいつの間にか、元の高さから

(ご、ろくせんちひくくなっているではありませんか。)

五、六センチ低くなっているではありませんか。

(そして、なおもしたへしたへとすこしのやすみもなく、おりて)

そして、なおも下へ下へと少しの休みもなく、下りて

(くるではありませんか。「おじさん、もうわかり)

くるではありませんか。「おじさん、もう分かり

(ました。おじさんのはつめいはわかりましたから、はやく)

ました。おじさんの発明は分かりましたから、早く

(きかいをとめてください。そして、ぼくをそとへだして)

機械を止めてください。そして、ぼくを外へ出して

(ください」こいずみくんがいっしょうけんめいにこえをふりしぼって)

ください」小泉君が一生懸命に声をふりしぼって

(さけぶと、すぐさまそとからしわがれたこえがこたえ)

叫ぶと、すぐさま外からしわがれた声が答え

(ました。「ははは、きみは、そこをでるつもりで)

ました。「ハハハ、きみは、そこを出るつもりで

(いるのかい。ははは、ところが、わしはけっして)

いるのかい。ハハハ、ところが、わしは決して

(このどあをひらかないのだよ」「え、なぜです。)

このドアをひらかないのだよ」「え、なぜです。

(なぜ、ぼくをこんなひどいめにあわせるのですか。)

なぜ、ぼくをこんな酷い目にあわせるのですか。

(おじさんは、いったいだれなのですか」「うふふ、だれ)

おじさんは、一体だれなのですか」「ウフフ、だれ

(だとおもうね。ひとつ、あててごらん。きみは)

だと思うね。一つ、当ててごらん。きみは

(しょうねんたんていだんのだんいんだろう。そのたんていのちえを)

少年探偵団の団員だろう。その探偵の知恵を

(しぼって、ひとつかんがえてごらん。わしがだれだか、)

しぼって、一つ考えてごらん。わしがだれだか、

(なぜきみをおそろしいきかいのへやのなかへとじこめたか」)

なぜきみを恐ろしい機械の部屋の中へ閉じこめたか」

(「え、おじさんは、ぼくがしょうねんたんていだんいんだという)

「え、おじさんは、ぼくが少年探偵団員だという

(ことをしっているのですか」「しっているとも。)

ことを知っているのですか」「知っているとも。

(しっていたから、あのしょうじょをおとりにつかって、ここへ)

知っていたから、あの少女をおとりに使って、ここへ

(おびきよせたのだよ。かわいそうだが、ちんぴら)

おびき寄せたのだよ。可哀想だが、チンピラ

(たんていさん、まんまといっぱいくらったねえ。ははは」)

探偵さん、まんまと一杯食らったねえ。ハハハ」

(「え、それじゃ、きみはにじゅうめんそうなのか」「ははは、)

「え、それじゃ、きみは二十面相なのか」「ハハハ、

(やっとわかったかね。あたまのわるいたんていさんだ。わしは)

やっと分かったかね。頭の悪い探偵さんだ。わしは

(にじゅうめんそうともいうし、ひるたはかせともとのむらたんていとも、)

二十面相とも言うし、ヒルタ博士とも殿村探偵とも、

(まだほかにもいろいろななをもっているよ。で、わしが、)

まだ他にも色々な名を持っているよ。で、わしが、

(なぜきみをここへとじこめたのか、よくわかった)

なぜきみをここへ閉じこめたのか、よく分かった

(だろう。つまり、ふくしゅうさ。わしは、いつだったか、)

だろう。つまり、復讐さ。わしは、いつだったか、

(きみたちちんぴらたんていにひどいめにあわされた。)

きみたちチンピラ探偵に酷い目にあわされた。

(その、おれいをしようというのだよ。まあ、そこで)

その、お礼をしようというのだよ。まあ、そこで

(ゆっくり、わしのきかいをけんぶつしてくれたまえ」)

ゆっくり、わしの機械を見物してくれたまえ」

(そういいすてたまま、しわがれたどくどくしいわらいごえが、)

そう言い捨てたまま、しわがれた毒々しい笑い声が、

(だんだんむこうのほうへとおざかっていきました。にじゅうめんそうは)

段々向こうの方へ遠ざかっていきました。二十面相は

(きかいをうんてんしたまま、そのばをさってしまった)

機械を運転したまま、その場を去ってしまった

(のです。こいずみくんは、もうしにものぐるいです。なにかわめき)

のです。 小泉君は、もう死に物狂いです。何かわめき

(ながら、からだぜんたいでどしんどしんと、どあにぶつかって)

ながら、体全体でドシンドシンと、ドアにぶつかって

(みました。しかしてつばりのどあは、びくとも)

みました。しかし鉄張りのドアは、びくとも

(しません。そうしているうちに、なにかかたいものがあたまに)

しません。そうしているうちに、何か硬い物が頭に

(ふれているようなきがして、ひょいとうえをみると)

ふれているような気がして、ヒョイと上を見ると

(どうでしょう。てんじょうはもう、まっすぐにたって)

どうでしょう。天井はもう、真っすぐに立って

(いられないほどさがってきているのです。こいずみくんは)

いられないほど下がってきているのです。小泉君は

(むだとしりながらも、りょうてでそのつめたいてつばりの)

無駄と知りながらも、両手でその冷たい鉄張りの

(てんじょうを、ちからいっぱいおしあげてみました。しかし、)

天井を、力一杯押し上げてみました。しかし、

(このきかいはにんげんのちからでとめれるとはおもえません。)

この機械は人間の力で止めれるとは思えません。

(ちからいっぱいにおしあげているりょうてが、じりりじりりと)

力一杯に押し上げている両手が、ジリリジリリと

(したへさがってきます。しばらくするとこいずみくんは、)

下へ下がってきます。 しばらくすると小泉君は、

(そこへしゃがまなければなりませんでした。)

そこへしゃがまなければなりませんでした。

(しゃがんでいても、そのあたまを、おもいてんじょうがぐんぐんと)

しゃがんでいても、その頭を、重い天井がグングンと

(おしつけてくるのです。)

押し付けてくるのです。

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