紫式部 源氏物語 桐壺 1 與謝野晶子訳

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2 おもち 6880 S++ 7.1 95.8% 567.4 4081 177 58 2024/09/30
3 kkk 6575 S+ 6.9 95.0% 586.1 4068 214 58 2024/11/09
4 BEASTななせ 6495 S 6.7 95.7% 607.5 4128 182 58 2024/11/07
5 だだんどん 5972 A+ 6.5 91.8% 615.7 4037 360 58 2024/10/26

問題文

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(むらさきのかがやくはなとひのひかりおもいあわざる ことわりもなし      (あきこ))

紫のかがやく花と日の光思ひあはざる ことわりもなし      (晶子)

(どのてんのうさまのみよであったか、にょごとかこういとかいわれるこうきゅうが)

どの天皇様の御代であったか、女御とか更衣とかいわれる後宮が

(おおぜいいたなかに、さいじょうのきぞくしゅっしんではないがふかいごあいちょうを)

おおぜいいた中に、最上の貴族出身ではないが深い御愛寵を

(えているひとがあった。さいしょからじぶんこそはというじしんと、おやきょうだいのせいりょくに)

得ている人があった。最初から自分こそはという自信と、親兄弟の勢力に

(たのむところがあってきゅうちゅうにはいったにょごたちからはしっけいなおんなとしてねたまれた。)

恃む所があって宮中にはいった女御たちからは失敬な女としてねたまれた。

(そのひととどうとう、もしくはそれよりちいのひくいこういたちはましてしっとのほのおを)

その人と同等、もしくはそれより地位の低い更衣たちはまして嫉妬の焔を

(もやさないわけもなかった。よるのおとどのとのいどころからさがるあさ、)

燃やさないわけもなかった。夜の御殿の宿直所から退る朝、

(つづいてそのひとばかりがめされるよる、めにみみみにきいてくちおしがらせた)

続いてその人ばかりが召される夜、目に見耳に聞いて口惜しがらせた

(うらみのせいもあったかからだがよわくなって、こころぼそくなったこういはおおくじっかへ)

恨みのせいもあったかからだが弱くなって、心細くなった更衣は多く実家へ

(さがっていがちということになると、いよいよみかどはこのひとにばかりこころを)

下がっていがちということになると、いよいよ帝はこの人にばかり心を

(おひかれになるというごようすで、ひとがなんとひひょうをしようともそれにごえんりょなどと)

お引かれになるという御様子で、人が何と批評をしようともそれに御遠慮などと

(いうものがおできにならない。ごせいとくをつたえるれきしのうえにもくらいかげの)

いうものがおできにならない。御聖徳を伝える歴史の上にも暗い影の

(ひとところのこるようなことにもなりかねないじょうたいになった。こうかんたちもてんじょうやくにんたちも)

一所残るようなことにもなりかねない状態になった。高官たちも殿上役人たちも

(こまって、ごかくせいになるのをきしながら、とうぶんはみぬかおをしていたいというたいどを)

困って、御覚醒になるのを期しながら、当分は見ぬ顔をしていたいという態度を

(とるほどのごちょうあいぶりであった。とうのくにではこのしゅるいのちょうき、ようかのじょの)

とるほどの御寵愛ぶりであった。唐の国ではこの種類の寵姫、楊家の女の

(しゅつげんによってらんがかもされたなどとかげではいわれる。いまやこのじょせいがいちてんかの)

出現によって乱が醸されたなどと蔭ではいわれる。今やこの女性が一天下の

(わざわいだとされるにいたった。ばかいのえきがいつさいげんされるかもしれぬ。)

煩いだとされるに至った。馬嵬の駅がいつ再現されるかもしれぬ。

(そのひとにとってはこらえがたいようなくるしいふんいきのなかでも、)

その人にとっては堪えがたいような苦しい雰囲気の中でも、

(ただふかいごあいじょうだけをたよりにくらしていた。ちちのだいなごんはもうこじんであった。)

ただ深い御愛情だけをたよりに暮らしていた。父の大納言はもう故人であった。

(ははのみぼうじんがうまれのよいけんしきのあるおんなで、わがむすめをげんだいにせいりょくのあるはでな)

母の未亡人が生まれのよい見識のある女で、わが娘を現代に勢力のある派手な

など

(いえのむすめたちにひけをとらせないよきほごしゃたりえた。それでもたいかんのこうえんしゃを)

家の娘たちにひけをとらせないよき保護者たりえた。それでも大官の後援者を

(もたぬこういは、なにかのばあいにいつもこころぼそいおもいをするようだった。)

持たぬ更衣は、何かの場合にいつも心細い思いをするようだった。

(ぜんしょうのえんがふかかったか、またもないようなうつくしいおうじまでがこのひとから)

前生の縁が深かったか、またもないような美しい皇子までがこの人から

(おうまれになった。ちょうきをははとしたみこをはやくごらんになりたいおぼしめしから、)

お生まれになった。寵姫を母とした御子を早く御覧になりたい思召しから、

(せいきのにっすうがたつとすぐにこういおやこをきゅうちゅうへおまねきになった。)

正規の日数が立つとすぐに更衣母子を宮中へお招きになった。

(しょうおうじはいかなるびなるものよりもうつくしいおかおをしておいでになった。)

小皇子はいかなる美なるものよりも美しいお顔をしておいでになった。

(みかどのだいいちおうじはうだいじんのむすめのにょごからおうまれになって、おもいがいせきがはいけいに)

帝の第一皇子は右大臣の娘の女御からお生まれになって、重い外戚が背景に

(なっていて、うたがいもないみらいのこうたいしとしてよのひとはそんけいをささげているが、)

なっていて、疑いもない未来の皇太子として世の人は尊敬をささげているが、

(だいにのおうじのびぼうにならぶことがおできにならぬため、それはこうかのちょうしとして)

第二の皇子の美貌にならぶことがおできにならぬため、それは皇家の長子として

(だいじにあそばされ、これはごじしんのあいしとしてひじょうにだいじがって)

大事にあそばされ、これは御自身の愛子として非常に大事がって

(おいでになった。こういははじめからふつうのちょうていのにょかんとしてほうしするほどの)

おいでになった。更衣は初めから普通の朝廷の女官として奉仕するほどの

(かるいみぶんではなかった。ただおあいしになるあまりに、そのひとじしんはさいこうのきじょと)

軽い身分ではなかった。ただお愛しになるあまりに、その人自身は最高の貴女と

(いってよいほどのりっぱなおんなではあったが、しじゅうおそばへおおきに)

言ってよいほどのりっぱな女ではあったが、始終おそばへお置きに

(なろうとして、てんじょうでおんがくそのたのおもよおしごとをあそばすさいには、だれよりもまず)

なろうとして、殿上で音楽その他のお催し事をあそばす際には、だれよりもまず

(さきにこのひとをつねにおとどへおよびになり、またあるときはおひきとめになって)

先にこの人を常に御殿へお呼びになり、またある時はお引き留めになって

(こういがよるのおとどからあさのたいしゅつができずそのままひるもじしているようなことに)

更衣が夜の御殿から朝の退出ができずそのまま昼も侍しているようなことに

(なっていごめにたっておもおもしくおあつかいになったから、とうぐうにもどうかすれば)

なって以後目に立って重々しくお扱いになったから、東宮にもどうかすれば

(このおうじをおたてになるかもしれぬと、だいいちのおうじのごせいぼのにょごはうたがいを)

この皇子をお立てになるかもしれぬと、第一の皇子の御生母の女御は疑いを

(もっていた。このひとはみかどのもっともおわかいときにじゅだいしたさいしょのにょごであった。)

持っていた。この人は帝の最もお若い時に入内した最初の女御であった。

(このにょごがするひなんとうらみごとだけはむかんしんにしておいでになれなかった。)

この女御がする批難と恨み言だけは無関心にしておいでになれなかった。

(このにょごへすまないというきもじゅうぶんにもっておいでになった。みかどのふかいあいを)

この女御へ済まないという気も十分に持っておいでになった。帝の深い愛を

(しんじながらも、わるくいうものと、なにかのけってんをさがしだそうとするものばかりの)

信じながらも、悪く言う者と、何かの欠点を捜しだそうとする者ばかりの

(きゅうちゅうに、びょうしんな、そしてむりょくないえをはいけいとしているこころぼそいこういは、)

宮中に、病身な、そして無力な家を背景としている心細い更衣は、

(あいされればあいされるほどくるしみがふえるふうであった。)

愛されれば愛されるほど苦しみがふえるふうであった。

(すんでいるおとどはごしょのなかのとうほくのすみのようなきりつぼであった。いくつかのにょごや)

住んでいる御殿は御所の中の東北の隅のような桐壺であった。幾つかの女御や

(こういたちのおとどのろうをかよいみちにしてみかどがしばしばそこへおいでになり、)

更衣たちの御殿の廊を通い路にして帝がしばしばそこへおいでになり、

(とのいをするこういがあがりさがりしていくきりつぼであったから、しじゅうながめて)

宿直をする更衣が上がり下がりして行く桐壺であったから、始終ながめて

(いねばならぬおとどのじゅうにんたちのうらみがかさんでいくのもどうりといわねばならない。)

いねばならぬ御殿の住人たちの恨みが量んでいくのも道理と言わねばならない。

(めされることがあまりつづくころは、うちはしとかかよいろうかのあるとぐちとかに)

召されることがあまり続くころは、打ち橋とか通い廊下のある戸口とかに

(いじのわるいしかけがされて、おくりむかえをするにょうぼうたちのきもののすそが)

意地の悪い仕掛けがされて、送り迎えをする女房たちの着物の裾が

(いちどでいたんでしまうようなことがあったりする。またあるときはどうしても)

一度でいたんでしまうようなことがあったりする。またある時はどうしても

(そこをとおらねばならぬろうかのとにじょうがさされてあったり、そこがとおれねば)

そこを通らねばならぬ廊下の戸に錠がさされてあったり、そこが通れねば

(こちらをいくはずのおとどのひとどうしがいいあわせて、きりつぼのこういのとおりみちを)

こちらを行くはずの御殿の人どうしが言い合わせて、桐壺の更衣の通り路を

(なくしてはずかしめるようなこともしばしばあった。かぞえきれぬほどのくるしみを)

なくして辱しめるようなこともしばしばあった。数え切れぬほどの苦しみを

(うけて、こういがこころをめいらせているのをごらんになるとみかどはいっそうあわれをおおく)

受けて、更衣が心をめいらせているのを御覧になると帝はいっそう憐れを多く

(おくわえになって、せいりょうでんにつづいたこうりょうでんにすんでいたこういをほかへおうつしなって)

お加えになって、清涼殿に続いた後涼殿に住んでいた更衣をほかへお移しなって

(きりつぼのこういへきゅうそくしつとしておあたえになった。)

桐壺の更衣へ休息室としてお与えになった。

(うつされたひとのうらみはどのこうきゅうよりもまたふかくなった。)

移された人の恨みはどの後宮よりもまた深くなった。

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