紫式部 源氏物語 若紫 12 與謝野晶子訳
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | subaru | 7586 | 神 | 7.9 | 95.8% | 541.6 | 4297 | 188 | 61 | 2024/10/23 |
2 | berry | 7490 | 光 | 7.6 | 97.7% | 556.2 | 4262 | 96 | 61 | 2024/11/01 |
3 | おもち | 7262 | 光 | 7.6 | 95.3% | 563.6 | 4302 | 209 | 61 | 2024/11/19 |
4 | HAKU | 6898 | S++ | 7.3 | 94.6% | 589.7 | 4312 | 244 | 61 | 2024/10/21 |
5 | だだんどん | 6135 | A++ | 6.7 | 91.6% | 633.5 | 4275 | 388 | 61 | 2024/11/17 |
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問題文
(ふじつぼのみやがすこしおびょうきにおなりになってからきゅうちゅうからじていへたいしゅつしてきて)
藤壺の宮が少しお病気におなりになってから宮中から自邸へ退出して来て
(おいでになった。みかどがひびこいしくおぼしめすごようすにげんじはどうじょうしながらも、)
おいでになった。帝が日々恋しく思召す御様子に源氏は同情しながらも、
(まれにしかないおさとずまいのきかいをとらえないではまたいつこいしいおかおが)
稀にしかないお実家住まいの機会をとらえないではまたいつ恋しいお顔が
(みられるかとむちゅうになって、それいらいどのこいびとのところへもいかずきゅうちゅうの)
見られるかと夢中になって、それ以来どの恋人の所へも行かず宮中の
(とのいどころででも、にじょうのいんででも、ひるまはしゅうじつものおもいにくらして、おうみょうぶに)
宿直所ででも、二条の院ででも、昼間は終日物思いに暮らして、王命婦に
(てびきをせまることのほかはなにもしなかった。おうみょうぶがどんなほうほうをとったのか)
手引きを迫ることのほかは何もしなかった。王命婦がどんな方法をとったのか
(あたえられたむりなわずかなおうせのなかにいるときも、こうふくがげんじつのこうふくとは)
与えられた無理なわずかな逢瀬の中にいる時も、幸福が現実の幸福とは
(おもえないでゆめとしかおもわれないのが、げんじはみずからざんねんであった。みやもかこの)
思えないで夢としか思われないのが、源氏はみずから残念であった。宮も過去の
(あるよるのおもいがけぬかしつのざいあくかんがいっしょうわすれられないもののようにおもって)
ある夜の思いがけぬ過失の罪悪感が一生忘れられないもののように思って
(おいでになって、せめてこのうえのつみはかさねまいとふかくおぼしめしたのであるのに、)
おいでになって、せめてこの上の罪は重ねまいと深く思召したのであるのに、
(またもこうしたことをたどうてきにくりかえすことになったのをかなしくおおもいに)
またもこうしたことを他動的に繰り返すことになったのを悲しくお思いに
(なって、うらめしいふうでおありになりながら、やわらかなみりょくがあって、しかも)
なって、恨めしいふうでおありになりながら、柔らかな魅力があって、しかも
(うちとけておいでにならないさいこうのきじょのたいどがうつくしくおもわれるげんじは、やはり)
打ち解けておいでにならない最高の貴女の態度が美しく思われる源氏は、やはり
(だれよりもすぐれたじょせいである、なぜひとところでもけってんをもっておいでに)
だれよりもすぐれた女性である、なぜ一所でも欠点を持っておいでに
(ならないのであろう、それであればじぶんのこころはこうしてしぬほどにまで)
ならないのであろう、それであれば自分の心はこうして死ぬほどにまで
(ひかれないでらくであろうとおもうとげんじはこのひとのそんざいをじぶんにしらせた)
惹かれないで楽であろうと思うと源氏はこの人の存在を自分に知らせた
(うんめいさえもうらめしくおもわれるのである。げんじのこいのまんぶんのひとつもつげるじかんの)
運命さえも恨めしく思われるのである。源氏の恋の万分の一も告げる時間の
(あるわけはない。えいきゅうのよるがほしいほどであるのに、あわないときよりもうらめしい)
あるわけはない。永久の夜が欲しいほどであるのに、逢わない時よりも恨めしい
(わかれのときがいたった。 )
別れの時が至った。
(みてもまたあうよまれなるゆめのうちにやがてまぎるるわがみともがな )
見てもまた逢ふ夜稀なる夢の中にやがてまぎるるわが身ともがな
(なみだにむせかえっていうげんじのようすをみると、さすがにみやもかなしくて、 )
涙にむせ返って言う源氏の様子を見ると、さすがに宮も悲しくて、
(よがたりにひとやつたえんたぐいなくうきみをさめぬゆめになしても )
世語りに人やつたへん類ひなく憂き身をさめぬ夢になしても
(とおいいになった。みやがはんもんしておいでになるのもどうりなことで、こいにくらんだ)
とお言いになった。宮が煩悶しておいでになるのも道理なことで、恋にくらんだ
(げんじのめにももったいなくおもわれた。げんじのうわぎなどはおうみょうぶがかきあつめて)
源氏の目にももったいなく思われた。源氏の上着などは王命婦がかき集めて
(しんしつのそとへもってきた。げんじはにじょうのいんへかえってなきねにいちにちをくらした。)
寝室の外へ持ってきた。源氏は二条の院へ帰って泣き寝に一日を暮らした。
(てがみをだしても、れいのとおりごらんにならぬというおうみょうぶのへんじいがいには)
手紙を出しても、例のとおり御覧にならぬという王命婦の返事以外には
(えられないのがひじょうにうらめしくて、げんじはごしょへもでずに、さんにち)
得られないのが非常に恨めしくて、源氏は御所へも出ず二、三日
(ひきこもっていた。これをまたびょうきのようにかいしゃくあそばしてみかどがおあんじになるに)
引きこもっていた。これをまた病気のように解釈あそばして帝がお案じになるに
(ちがいないとおもうともったいなくそらおそろしいきばかりがされるのであった。)
違いないと思うともったいなく空恐ろしい気ばかりがされるのであった。
(みやもごじしんのうんめいをおなげきになってはんもんがつづき、そのためにごびょうきのけいかも)
宮も御自身の運命をお歎きになって煩悶が続き、そのために御病気の経過も
(よろしくないのである。きゅうちゅうのおつかいがしじゅうきてごしょへおかえりになることを)
よろしくないのである。宮中のお使いが始終来て御所へお帰りになることを
(うながされるのであったが、なおみやはさといをつづけておいでになった。みやはじっさい)
促されるのであったが、なお宮は里居を続けておいでになった。宮は実際
(おからだがなやましくて、しかもそのなやましさのなかにせいりてきなげんしょうらしいものも)
おからだが悩ましくて、しかもその悩ましさの中に生理的な現象らしいものも
(あるのを、みやごじしんだけにはおもいあたることがないのではなかった。)
あるのを、宮御自身だけには思いあたることがないのではなかった。
(なさけなくて、これでじぶんはこをうむのであろうかとはんもんをしておいでになった。)
情けなくて、これで自分は子を産むのであろうかと煩悶をしておいでになった。
(ましてなつのあついあいだはおきあがることもできずにおやすみになったきりだった。)
まして夏の暑い間は起き上がることもできずにお寝みになったきりだった。
(ごにんしんがみつきであるからにょうぼうたちもきがついてきたようである。しゅくめいの)
御妊娠が三月であるから女房たちも気がついてきたようである。宿命の
(おそろしさをみやはおおもいになっても、ひとはしらぬことであったから、こんなにつきが)
恐ろしさを宮はお思いになっても、人は知らぬことであったから、こんなに月が
(かさなるまでごないそうもあそばされなかったとみなおどろいてささやきあった。)
重なるまで御内奏もあそばされなかったと皆驚いてささやき合った。
(みやのごにゅうよくのおせわなどもきまってしていたみやのめのとのむすめであるべんとか、)
宮の御入浴のお世話などもきまってしていた宮の乳母の娘である弁とか、
(おうみょうぶとかだけはふしぎにおもうことはあっても、このふたりのあいだでさえ)
王命婦とかだけは不思議に思うことはあっても、この二人の間でさえ
(はなしあうべきもんだいではなかった。みょうぶはにんげんがどうどりょくしてもさけがたい)
話し合うべき問題ではなかった。命婦は人間がどう努力しても避けがたい
(しゅくめいというもののちからにおどろいていたのである。きゅうちゅうへはごびょうきやらもののけやらで)
宿命というものの力に驚いていたのである。宮中へは御病気やら物怪やらで
(きのつくことのおくれたようにそうじょうしたはずである。だれもみなそうおもっていた。)
気のつくことのおくれたように奏上したはずである。だれも皆そう思っていた。
(みかどはいっそうのねつあいをみやへおよせになることになって、いぜんよりも)
帝はいっそうの熱愛を宮へお寄せになることになって、以前よりも
(おつかわしになるおつかいのどすうのおおくなったことも、みやにとってはそらおそろしく)
おつかわしになるお使いの度数の多くなったことも、宮にとっては空恐ろしく
(おおもわれになることだった。はんもんのあいまというものがなくなったげんじのちゅうじょうも)
お思われになることだった。煩悶の合い間というものがなくなった源氏の中将も
(かわったゆめをみてゆめときをよんであわさせてみたが、およびもない、おもいもかけぬ)
変わった夢を見て夢解きを呼んで合わさせてみたが、及びもない、思いもかけぬ
(うらないをした。そして、 「しかしじゅんちょうにそこへおたっしになろうとするのは)
占いをした。そして、 「しかし順調にそこへお達しになろうとするのは
(おつつしみにならなければならぬこしょうがひとつございます」 といった。ゆめをげんじつに)
お慎みにならなければならぬ故障が一つございます」 と言った。夢を現実に
(まざまざつづいたことのようにいわれて、げんじはきょうふをおぼえた。 「わたくしのゆめでは)
まざまざ続いたことのように言われて、源氏は恐怖を覚えた。 「私の夢では
(ないのだ。あるひとのゆめをといてもらったのだ。いまのうらないがしんじつせいをおびるまでは)
ないのだ。ある人の夢を解いてもらったのだ。今の占いが真実性を帯びるまでは
(だれにもひみつにしておけ」 とそのおとこにいったのであるが、げんじはそれいらい、)
だれにも秘密にしておけ」 とその男に言ったのであるが、源氏はそれ以来、
(どんなことがおこってくるのかとおもっていた。そののちにげんじはふじつぼのみやの)
どんなことがおこってくるのかと思っていた。その後に源氏は藤壺の宮の
(ごかいにんをきいて、そんなことがあのうらないのおとこにいわれたことなのではないかと)
御懐妊を聞いて、そんなことがあの占いの男に言われたことなのではないかと
(おもうと、こいびととじぶんのあいだにこがうまれてくるということにわかいげんじはこうふんして、)
思うと、恋人と自分の間に子が生れてくるということに若い源氏は昂奮して、
(いぜんにもましてことばをつくしておうせをのぞむことになったが、おうみょうぶもみやの)
以前にもまして言葉を尽くして逢瀬を望むことになったが、王命婦も宮の
(ごかいにんになっていらい、いぜんにじしんが、はげしいこいにみをほろぼしかねないげんじに)
御懐妊になって以来、以前に自身が、はげしい恋に身を亡しかねない源氏に
(どうじょうしてとったこういがじゅうだいせいをおびていることにきがついて、さくをしてげんじを)
同情してとった行為が重大性を帯びていることに気がついて、策をして源氏を
(みやにちかづけようとすることをさけたのである。げんじはたまさかにみやから)
宮に近づけようとすることを避けたのである。源氏はたまさかに宮から
(いちぎょうたらずのおへんじのえられたこともあるが、それもたえてしまった。)
一行足らずのお返事の得られたこともあるが、それも絶えてしまった。