紫式部 源氏物語 若紫 13 與謝野晶子訳

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問題文

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(しょしゅうのしちがつになってみやはごしょへおはいりになった。さいあいのかたがかいにんされたので)

初秋の七月になって宮は御所へおはいりになった。最愛の方が懐妊されたので

(あるから、みかどのおこころざしはますますふじつぼのみやにそそがれるばかりであった。すこし)

あるから、帝のお志はますます藤壺の宮にそそがれるばかりであった。少し

(おなかがふっくりとなってつわりのなやみにかおのすこしおやせになったみやのおうつくしさは、)

お腹がふっくりとなって悪阻の悩みに顔の少しお痩せになった宮のお美しさは、

(まえよりもましたのではないかとみえた。いぜんもそうであったようにみかどはあけくれ)

前よりも増したのではないかと見えた。以前もそうであったように帝は明け暮れ

(ふじつぼにばかりきておいでになって、もうおんがくのあそびをするのにもてきしたきせつにも)

藤壺にばかり来ておいでになって、もう音楽の遊びをするのにも適した季節にも

(なっていたから、げんじのちゅうじょうをもしじゅうそこへおよびだしになって、ことやふえのやくを)

なっていたから、源氏の中将をも始終そこへお呼び出しになって、琴や笛の役を

(おめいじになった。ものおもわしさをげんじはきょくりょくおさえていたが、ときどきにはしのびがたい)

お命じになった。物思わしさを源氏は極力おさえていたが、時々には忍びがたい

(ようすもうかがわれるのを、みやもおかんじになって、さすがにそのひとにまつわる)

様子もうかがわれるのを、宮もお感じになって、さすがにその人にまつわる

(もののうれわしさをおおぼえになった。 きたやまへようじょうにいっていたあぜちだいなごんの)

ものの愁わしさをお覚えになった。 北山へ養生に行っていた按察使大納言の

(みぼうじんはやまいがよくなってきょうへかえってきていた。げんじはこれみつなどにきょうのいえを)

未亡人は病が快くなって京へ帰って来ていた。源氏は惟光などに京の家を

(たずねさせてときどきてがみなどをおくっていた。せんぽうのたいどははるもいまもかわったところが)

訪ねさせて時々手紙などを送っていた。先方の態度は春も今も変わったところが

(ないのである。それもどうりにおもえることであったし、またこのすうげつかんと)

ないのである。それも道理に思えることであったし、またこの数月間と

(いうものは、かこのいくねんかんにもまさったこいのはんもんがげんじにあって、ほかのことは)

いうものは、過去の幾年間にもまさった恋の煩悶が源氏にあって、ほかのことは

(なにひとつねっしんにしようとはおもわれないのでもあったりして、よりいじょうせっきょくせいを)

何一つ熱心にしようとは思われないのでもあったりして、より以上積極性を

(おびていくようでもなかった。 あきのすえになって、こいするげんじはこころぼそさを)

帯びていくようでもなかった。 秋の末になって、恋する源氏は心細さを

(ひとよりもふかくしみじみとあじわっていた。あるつきよにあるおんなのところをたずねるきに)

人よりも深くしみじみと味わっていた。ある月夜にある女の所を訪ねる気に

(やっとなったげんじがでかけようとするとさっとしぐれがした。げんじのいくところは)

やっとなった源氏が出かけようとするとさっと時雨がした。源氏の行く所は

(ろくじょうのきょうごくへんであったから、ごしょからでてきたのではややとおいきがする。あれた)

六条の京極辺であったから、御所から出て来たのではやや遠い気がする。荒れた

(いえのにわのこだちがたいけらしくふかいそのどべいのそとをとおるときに、れいのそばさらずの)

家の庭の木立ちが大家らしく深いその土塀の外を通る時に、例の傍去らずの

(これみつがいった。 「これがまえのあぜちだいなごんのいえでございます。せんじつちょっと)

惟光が言った。 「これが前の按察使大納言の家でございます。先日ちょっと

など

(このちかくへきましたときによってみますと、あのあまさんからは、びょうきによわって)

この近くへ来ました時に寄ってみますと、あの尼さんからは、病気に弱って

(しまっていまして、なにもかんがえられませんというあいさつがありました」)

しまっていまして、何も考えられませんという挨拶がありました」

(「きのどくだね。みまいにいくのだった。なぜそのときにそういって)

「気の毒だね。見舞いに行くのだった。なぜその時にそう言って

(くれなかったのだ。ちょっとわたくしがほうもんにきたがといってやれ」)

くれなかったのだ。ちょっと私が訪問に来たがと言ってやれ」

(げんじがこういうのでこれみつはじゅうしゃのひとりをやった。このほうもんがもくてきできたとさいしょ)

源氏がこう言うので惟光は従者の一人をやった。この訪問が目的で来たと最初

(いわせたので、そのあとでまたこれみつがはいっていって、)

言わせたので、そのあとでまた惟光がはいって行って、

(「あるじがじしんでおみまいにおいでになりました」)

「主人が自身でお見舞いにおいでになりました」

(といった。だいなごんけではおどろいた。 「こまりましたね。ちかごろはいぜんよりもずっと)

と言った。大納言家では驚いた。 「困りましたね。近ごろは以前よりもずっと

(よわっていらっしゃるから、おあいにはなれないでしょうが、おことわりするのは)

弱っていらっしゃるから、お逢いにはなれないでしょうが、お断りするのは

(もったいないことですから」 などとにょうぼうはいって、みなみむきのえんざしきを)

もったいないことですから」 などと女房は言って、南向きの縁座敷を

(きれいにしてげんじをむかえたのである。 「みぐるしいところでございますが、せめて)

きれいにして源氏を迎えたのである。 「見苦しい所でございますが、せめて

(ごこうしのおれいをもうしあげませんではとぞんじまして、おぼしめしも)

御厚志のお礼を申し上げませんではと存じまして、思召しも

(ございませんでしょうが、こんなへやなどにおとおしいたしまして」)

ございませんでしょうが、こんな部屋などにお通しいたしまして」

(というあいさつをいえのものがした。そのとおりで、いがいなところへきているというきが)

という挨拶を家の者がした。そのとおりで、意外な所へ来ているという気が

(げんじにはした。 「いつもごほうもんをしたくおもっているのでしたが、わたくしのおねがいを)

源氏にはした。 「いつも御訪問をしたく思っているのでしたが、私のお願いを

(とっぴなものかなにかのようにこちらではおあつかいになるので、きまりが)

とっぴなものか何かのようにこちらではお扱いになるので、きまりが

(わるかったのです。それでしぜんごびょうきもこんなにすすんでいることを)

悪かったのです。それで自然御病気もこんなに進んでいることを

(しりませんでした」 とげんじがいった。)

知りませんでした」 と源氏が言った。

(「わたくしはびょうきであることがいまではふつうなようになっております。しかしもう)

「私は病気であることが今では普通なようになっております。しかしもう

(このいのちのおわりにちかづきましたおりから、かたじけないおみまいをうけました)

この命の終わりに近づきましたおりから、かたじけないお見舞いを受けました

(よろこびをじぶんでもうしあげませんしつれいをおゆるしくださいませ。あのはなしはこんごも)

喜びを自分で申し上げません失礼をお許しくださいませ。あの話は今後も

(おわすれになりませんでしたら、もうすこしとしのゆきましたときにおねがいいたします。)

お忘れになりませんでしたら、もう少し年のゆきました時にお願いいたします。

(ひとりぼっちになりますあのこにのこるこころが、わたくしのまいりますみちのさわりになることかと)

一人ぼっちになりますあの子に残る心が、私の参ります道の障りになることかと

(おもわれます」 とりつぎのひとにあまぎみがいいつけていることばがりんしつであったから、)

思われます」 取り次ぎの人に尼君が言いつけている言葉が隣室であったから、

(そのこころぼそそうなこえもたえだえきこえてくるのである。 「しつれいなことで)

その心細そうな声も絶え絶え聞こえてくるのである。 「失礼なことで

(ございます。まごがせめておれいをもうしあげるとしになっておればよろしいので)

ございます。孫がせめてお礼を申し上げる年になっておればよろしいので

(ございますのに」 ともいう。げんじはあわれにおもってきいていた。)

ございますのに」 とも言う。源氏は哀れに思って聞いていた。

(「いまさらそんなごあいさつはなさらないでください。とおりいっぺんなかんがえでしたなら、)

「今さらそんな御挨拶はなさらないでください。通り一遍な考えでしたなら、

(ふうがわりなすいきょうものとごかいされるのもかまわずに、こんなごそうだんはつづけません。)

風変わりな酔狂者と誤解されるのも構わずに、こんな御相談は続けません。

(どんなぜんしょうのいんねんでしょうか、にょおうさんをちょっとおみかけいたしました)

どんな前生の因縁でしょうか、女王さんをちょっとお見かけいたしました

(ときから、にょおうさんのことをどうしてもわすれられないようなことになりましたのも)

時から、女王さんのことをどうしても忘れられないようなことになりましたのも

(ふしぎなほどで、どうしてもこのせかいだけのことでない、やくそくごととしか)

不思議なほどで、どうしてもこの世界だけのことでない、約束事としか

(おもわれません」 などとげんじはいって、また、)

思われません」 などと源氏は言って、また、

(「じぶんをりかいしていただけないてんでわたくしはくるしんでおります。あのちいさいかたがなにか)

「自分を理解していただけない点で私は苦しんでおります。あの小さい方が何か

(ひとことおいいになるのをうかがえればとおもうのですが」 とのぞんだ。)

一言お言いになるのを伺えればと思うのですが」 と望んだ。

(「それはひめぎみはなにもごぞんじなしに、もうおやすみになっていまして」)

「それは姫君は何もご存じなしに、もうお寝みになっていまして」

(にょうぼうがこんなふうにいっているときに、むこうからこのりんしつへくるあしおとがして、)

女房がこんなふうに言っている時に、向こうからこの隣室へ来る足音がして、

(「おばあさま、あのおてらにいらっしったげんじのきみがきていらっしゃるのですよ。)

「お祖母様、あのお寺にいらっしった源氏の君が来ていらっしゃるのですよ。

(なぜごらんにならないの」 とにょおうはいった。にょうぼうたちはこまってしまった。)

なぜ御覧にならないの」 と女王は言った。女房たちは困ってしまった。

(「しずかにあそばせよ」 といっていた。)

「静かにあそばせよ」 と言っていた。

(「でもげんじのきみをみたのでびょうきがよくなったといっていらしたからよ」)

「でも源氏の君を見たので病気がよくなったと言っていらしたからよ」

(じぶんのおぼえているそのことがやくにたつときだとにょおうはかんがえている。)

自分の覚えているそのことが役に立つ時だと女王は考えている。

(げんじはおもしろくおもってきいていたが、にょうぼうたちのこまりきったふうがきのどくに)

源氏はおもしろく思って聞いていたが、女房たちの困りきったふうが気の毒に

(なって、きかないかおをして、まじめなみまいのことばをのこしてさった。こどもらしい)

なって、聞かない顔をして、まじめな見舞いの言葉を残して去った。子供らしい

(こどもらしいというのはほんとうだ。けれどもじぶんはよくおしえていけるきがすると)

子供らしいというのはほんとうだ。けれども自分はよく教えていける気がすると

(げんじはおもったのであった。)

源氏は思ったのであった。

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