「やまなし」宮沢賢治(5/5頁)

関連タイピング
-
短編名作を数多くのこした、芥川龍之介の「羅生門」の前編です。
プレイ回数9927長文かな6052打 -
北海道の民話です
プレイ回数70長文180秒 -
青森県の民話です
プレイ回数207長文180秒 -
少年探偵団シリーズ1作目
プレイ回数2166長文2769打 -
少年探偵団シリーズ1作目
プレイ回数3151長文3220打 -
水害の前日、不安に包まれる一家を描いた短編。
プレイ回数1485長文5414打 -
級友の父が出勤途中に修学旅行の様子を見に来ていた短編小説。
プレイ回数2482長文7164打 -
該当の男性を呼ぶため機転をきかせた案内係のユーモアある小説。
プレイ回数8318長文1732打
問題文
(そのとき、とぶん。)
そのとき、トブン。
(くろいまるいおおきなものが、てんじょうからおちて)
黒い円い大きなものが、天井から落ちて
(ずうっとしずんでまたうえへのぼっていきました。)
ずうっとしずんで又上へのぼって行きました。
(きらきらっときんのぶちがひかりました。)
キラキラッと黄金のぶちがひかりました。
(かわせみだ)
『かわせみだ』
(こどもらのかにはくびをすくめていいました。)
子供らの蟹は頸をすくめて云いました。
(おとうさんのかには、とおめがねのようなりょうほうのめを)
お父さんの蟹は、遠めがねのような両方の眼を
(あらんかぎりのばして、)
あらん限り延ばして、
(よくよくみてからいいました。)
よくよく見てから云いました。
(そうじゃない、あれはやまなしだ、)
『そうじゃない、あれはやまなしだ、
(ながれていくぞ、ついていってみよう、)
流れて行くぞ、ついて行って見よう、
(ああいいにおいだな)
ああいい匂においだな』
(なるほど、そこらのつきあかりのみずのなかは、)
なるほど、そこらの月あかりの水の中は、
(やまなしのいいにおいでいっぱいでした。)
やまなしのいい匂いでいっぱいでした。
(さんびきはぼかぼかながれていく)
三疋はぼかぼか流れて行く
(やまなしのあとをおいました。)
やまなしのあとを追いました。
(そのよこあるきと、そこのくろいみっつのかげぼうしが、)
その横あるきと、底の黒い三つの影法師が、
(あわせてむっつおどるようにして、)
合せて六つ踊るようにして、
(やまなしのまるいかげをおいました。)
やまなしの円い影を追いました。
(まもなくみずはさらさらなり、)
間もなく水はサラサラ鳴り、
(てんじょうのなみはいよいよあおいほのおをあげ、)
天井の波はいよいよ青い焔をあげ、
(やまなしはよこになってきのえだにひっかかってとまり、)
やまなしは横になって木の枝にひっかかってとまり、
(そのうえにはげっこうのにじがもかもかあつまりました。)
その上には月光の虹がもかもか集まりました。
(どうだ、やっぱりやまなしだよ、)
『どうだ、やっぱりやまなしだよ、
(よくじゅくしている、いいにおいだろう。)
よく熟している、いい匂いだろう。』
(おいしそうだね、おとうさん)
『おいしそうだね、お父さん』
(まてまて、もうふつかばかりまつとね、)
『待て待て、もう二日ばかり待つとね、
(こいつはしたへしずんでくる、)
こいつは下へ沈んで来る、
(それからひとりでにおいしいおさけができるから、)
それからひとりでにおいしいお酒ができるから、
(さあ、もうかえってねよう、おいで)
さあ、もう帰って寝よう、おいで』
(おやこのかにはさんびきじぶんらのあなにかえっていきます。)
親子の蟹は三疋自分等の穴に帰って行きます。
(なみはいよいよあおじろいほのおをゆらゆらとあげました、)
波はいよいよ青じろい焔をゆらゆらとあげました、
(それはまたこんごうせきのこなをはいているようでした。)
それは又金剛石の粉をはいているようでした。
(わたしのげんとうはこれでおしまいであります。)
私の幻燈はこれでおしまいであります。