「やまなし」宮沢賢治(3/5頁)

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プレイ回数681難易度(3.0) 684打 長文 かな

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(おとうさんのかにがでてきました。)

お父さんの蟹が出て来ました。

(どうしたい。ぶるぶるふるえているじゃないか。)

『どうしたい。ぶるぶるふるえているじゃないか。』

(おとうさん、いまおかしなものがきたよ。)

『お父さん、いまおかしなものが来たよ。』

(どんなもんだ。)

『どんなもんだ。』

(あおくてね、ひかるんだよ。)

『青くてね、光るんだよ。

(はじがこんなにくろくとがってるの。)

はじがこんなに黒く尖ってるの。

(それがきたらおさかながうえへのぼっていったよ。)

それが来たらお魚が上へのぼって行ったよ。』

(そいつのめがあかかったかい。)

『そいつの眼が赤かったかい。』

(わからない。)

『わからない。』

(ふうん。しかし、そいつはとりだよ。)

『ふうん。しかし、そいつは鳥だよ。

(かわせみというんだ。)

かわせみと云うんだ。

(だいじょうぶだ、あんしんしろ。)

大丈夫だ、安心しろ。

(おれたちはかまわないんだから。)

おれたちはかまわないんだから。』

(おとうさん、おさかなはどこへいったの。)

『お父さん、お魚はどこへ行ったの。』

(さかなかい。さかなはこわいところへいった。)

『魚かい。魚はこわい所へ行った』

(こわいよ、おとうさん。)

『こわいよ、お父さん。』

(いいいい、だいじょうぶだ。しんぱいするな。)

『いいいい、大丈夫だ。心配するな。

(そら、かばのはながながれてきた。)

そら、樺の花が流れて来た。

(ごらん、きれいだろう。)

ごらん、きれいだろう。』

(あわといっしょに、しろいかばのはなびらが)

泡と一緒に、白い樺の花びらが

など

(てんじょうをたくさんすべってきました。)

天井をたくさんすべって来ました。

(こわいよ、おとうさん。おとうとのかにもいいました。)

『こわいよ、お父さん。』弟の蟹も云いました。

(ひかりのあみはゆらゆら、のびたりちぢんだり、)

光の網はゆらゆら、のびたりちぢんだり、

(はなびらのかげはしずかにすなをすべりました。)

花びらの影はしずかに砂をすべりました。

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