「やまなし」宮沢賢治(4/5頁)

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(に、じゅうにがつ)

二、十二月

(かにのこどもらはもうよほどおおきくなり、)

蟹の子供らはもうよほど大きくなり、

(そこのけしきもなつからあきのあいだにすっかりかわりました。)

底の景色も夏から秋の間にすっかり変りました。

(しろいやわらかなまるいしもころがってき、)

白い柔らかな円石もころがって来、

(ちいさなきりのかたちのすいしょうのつぶや、)

小さな錐の形の水晶の粒や、

(きんうんものかけらもながれてきてとまりました。)

金雲母のかけらもながれて来てとまりました。

(そのつめたいみずのそこまで、)

そのつめたい水の底まで、

(らむねのびんのげっこうがいっぱいにすきとおり)

ラムネの瓶の月光がいっぱいに透きとおり

(てんじょうではなみがあおじろいひを、)

天井では波が青じろい火を、

(もやしたりけしたりしているよう、あたりはしんとして、)

燃やしたり消したりしているよう、あたりはしんとして、

(ただいかにもとおくからというように、)

ただいかにも遠くからというように、

(そのなみのおとがひびいてくるだけです。)

その波の音がひびいて来るだけです。

(かにのこどもらは、あんまりつきがあかるく)

蟹の子供らは、あんまり月が明るく

(みずがきれいなのでねむらないでそとにでて、)

水がきれいなので睡らないで外に出て、

(しばらくだまってあわをはいて)

しばらくだまって泡をはいて

(てんじょうのほうをみていました。)

天上の方を見ていました。

(やっぱりぼくのあわはおおきいね。)

『やっぱり僕の泡は大きいね。』

(にいさん、わざとおおきくはいてるんだい。)

『兄さん、わざと大きく吐いてるんだい。

(ぼくだってわざとならもっとおおきくはけるよ。)

僕だってわざとならもっと大きく吐けるよ。』

(はいてごらん。おや、たったそれきりだろう。)

『吐いてごらん。おや、たったそれきりだろう。

など

(いいかい、にいさんがはくからみておいで。)

いいかい、兄さんが吐くから見ておいで。

(そら、ね、おおきいだろう。)

そら、ね、大きいだろう。』

(おおきかないや、おんなじだい。)

『大きかないや、おんなじだい。』

(ちかくだからじぶんのがおおきくみえるんだよ。)

『近くだから自分のが大きく見えるんだよ。

(そんならいっしょにはいてみよう。いいかい、そら。)

そんなら一緒に吐いてみよう。いいかい、そら。』

(やっぱりぼくのほうおおきいよ。)

『やっぱり僕の方大きいよ。』

(ほんとうかい。じゃ、もひとつはくよ。)

『本当かい。じゃ、も一つはくよ。』

(だめだい、そんなにのびあがっては。)

『だめだい、そんなにのびあがっては。』

(またおとうさんのかにがでてきました。)

またお父さんの蟹が出て来ました。

(もうねろねろ。おそいぞ、あしたいさどへつれていかんぞ。)

『もうねろねろ。遅いぞ、あしたイサドへ連れて行かんぞ。』

(おとうさん、ぼくたちのあわどっちおおきいの)

『お父さん、僕たちの泡どっち大きいの』

(それはにいさんのほうだろう)

『それは兄さんの方だろう』

(そうじゃないよ、ぼくのほうおおきいんだよ)

『そうじゃないよ、僕の方大きいんだよ』

(おとうとのかにはなきそうになりました。)

弟の蟹は泣きそうになりました。

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