グスコーブドリの伝記6

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(そのばんぶどりは、むかしのじぶんのうち、いまはてぐすこうじょうになっているたてものの)

その晩ブドリは、昔のじぶんのうち、いまはてぐす工場になっている建物の

(すみに、ちいさくなってねむりました。 さっきのおとこは、さん、よにんのしらない)

すみに、小さくなってねむりました。 さっきの男は、三、四人の知らない

(ひとたちとおそくまでろばたでひをたいて、なにかのんだりしゃべったりして)

人たちとおそくまで炉ばたで火をたいて、何かのんだりしゃべったりして

(いました。つぎのあさはやくから、ぶどりはもりにでて、きのうのようにはたらき)

いました。つぎの朝早くから、ブドリは森に出て、きのうのようにはたらき

(ました。 それからひとつきばかりたって、もりじゅうのくりのきにあみがかかって)

ました。 それからひと月ばかりたって、森じゅうの栗の木に網がかかって

(しまいますと、てぐすかいのおとこは、こんどはくりのようなものがいっぱいついた)

しまいますと、てぐす飼いの男は、こんどは栗のようなものがいっぱいついた

(いたきれを、どのきにもご、ろくまいずつつるさせました。そのうちにきはめを)

板きれを、どの木にも五、六枚ずつつるさせました。そのうちに木は芽を

(だしてもりはまっさおになりました。すると、きにつるしたいたきれから、)

だして森はまっさおになりました。すると、木につるした板きれから、

(たくさんのちいさなあおじろいむしが、いとをつたわってれつになってえだへはいあがって)

たくさんの小さな青じろい虫が、糸をつたわって列になって枝へはいあがって

(いきました。ぶどりたちはこんどはまいにちたきぎとりをさせられました。)

行きました。ブドリたちはこんどはまいにちたきぎとりをさせられました。

(そのたきぎが、いえのまわりにこやまのようにつみかさなり、くりのきがあおじろい)

そのたきぎが、家のまわりに小山のように積みかさなり、栗の木が青じろい

(ひものかたちのはなをえだいちめんにつけるころになりますと、あのいたから)

ひものかたちの花を枝いちめんにつけるころになりますと、あの板から

(はいあがっていったむしも、ちょうどくりのはなのようないろとかたちになりました。)

はいあがって行った虫も、ちょうど栗の花のような色とかたちになりました。

(そしてもりじゅうのくりのはは、まるでかたちもなくそのむしにくいあらされて)

そして森じゅうの栗の葉は、まるでかたちもなくその虫に食い荒らされて

(しまいました。それからまもなくむしは、おおきなきいろなまゆをあみのめごとに)

しまいました。それからまもなく虫は、大きな黄いろなまゆを網の目ごとに

(かけはじめました。 するとてぐすかいのおとこは、きょうきのようになって、)

かけはじめました。 するとてぐす飼いの男は、狂気のようになって、

(ぶどりたちをしかりとばして、そのまゆをかごにあつめさせました。)

ブドリたちをしかりとばして、そのまゆをかごに集めさせました。

(それをこんどはかたっぱしからなべにいれてぐらぐらにて、てでくるまを)

それをこんどはかたっぱしからなべにいれてぐらぐら煮て、手で車を

(まわしながらいとをとりました。よるもひるもがらがらがらがらみっつのいとぐるまをまわして)

まわしながら糸をとりました。夜も昼もがらがらがらがら三つの糸車をまわして

(いとをとりました。こうしてこしらえたきいろないとがこやにはんぶんばかり)

糸をとりました。こうしてこしらえた黄いろな糸が小屋に半分ばかり

など

(たまったころ、そとにおいたまゆからは、おおきなしろいががぽろぽろぽろぽろ)

たまったころ、外においたまゆからは、大きな白いががぽろぽろぽろぽろ

(とびだしはじめました。てぐすかいのおとこは、まるでおにみたいなかおつきになって、)

飛びだしはじめました。てぐす飼いの男は、まるで鬼みたいな顔つきになって、

(じぶんもいっしょうけんめいいとをとりましたし、のはらのほうからもよにん)

じぶんもいっしょうけんめい糸をとりましたし、野原のほうからも四人

(ひとをつれてきてはたらかせました。けれども、がのほうはひましにおおく)

ひとをつれてきて働かせました。けれども、がのほうは日ましに多く

(でるようになって、しまいにはもりじゅうまるでくもでもとんでいるように)

でるようになって、しまいには森じゅうまるで雲でも飛んでいるように

(なりました。するとあるひ、ろく、しちだいのにばしゃがきて、いままでにできたいとを)

なりました。するとある日、六、七台の荷馬車がきて、いままでにできた糸を

(みんなつけて、まちのほうへかえりはじめました。みんなもひとりずつにばしゃに)

みんなつけて、町のほうへ帰りはじめました。みんなもひとりずつ荷馬車に

(ついていきました。いちばんしまいのにばしゃがたつとき、てぐすかいのおとこが、)

ついて行きました。いちばんしまいの荷馬車がたつとき、てぐす飼いの男が、

(ぶどりに、 「おい、おまえのらいはるまでくうくらいのものはいえのなかに)

ブドリに、 「おい、おまえの来春まで食うくらいのものは家の中に

(おいてやるからな、それまでここでもりとこうじょうのばんをしているんだぞ。」)

おいてやるからな、それまでここで森と工場の番をしているんだぞ。」

(といってへんににやにやしながら、にばしゃについてさっさといってしまいました)

といってへんににやにやしながら、荷馬車についてさっさと行ってしまいました

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