グスコーブドリの伝記22

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タグ文学 童話

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(ぶどりはじゅわきをおいてみみをすましました。くものうみはあっちでもこっちでも)

ブドリは受話器をおいて耳をすましました。雲の海はあっちでもこっちでも

(ぶつぶつぶつぶつつぶやいているのです。よくきをつけてきくとやっぱりそれは)

ぶつぶつぶつぶつつぶやいているのです。よく気をつけてきくとやっぱりそれは

(きれぎれのかみなりのおとでした。ぶどりはすいっちをきりました。にわかにつきの)

きれぎれのかみなりの音でした。ブドリはスイッチを切りました。にわかに月の

(あかりだけになったくものうみは、やっぱりしずかにきたへながれています。)

あかりだけになった雲の海は、やっぱりしずかに北へ流れています。

(ぶどりはもうふをからだにまいてぐっすりねむりました。 そのとしの)

ブドリは毛布をからだにまいてぐっすりねむりました。 その年の

(のうさくもつのしゅうかくは、きこうのせいもありましたが、じゅうねんのあいだにもなかったほど、)

農作物の収穫は、気候のせいもありましたが、十年の間にもなかったほど、

(よくできましたので、かざんきょくはあっちからもこっちからもかんしゃじょうやげきれいのてがみが)

よくできましたので、火山局はあっちからもこっちからも感謝状や激励の手紙が

(とどきました。ぶどりははじめてほんとうにいきたかいがあるようにおもいました)

とどきました。ブドリははじめてほんとうに生きたかいがあるように思いました

(ところがあるひ、ぶどりがたちなというかざんへいったかえり、とりいれのすんで)

ところがある日、ブドリがタチナという火山へ行った帰り、とりいれのすんで

(がらんとしたぬまばたけのなかのちいさなむらをとおりかかりました。ちょうど)

がらんとした沼ばたけの中の小さな村を通りかかりました。ちょうど

(ひるころなので、ぱんをかおうとおもって、いっけんのざっかやかしをうっているみせへ)

ひるころなので、パンを買おうと思って、一軒の雑貨や菓子を売っている店へ

(よって、 「ぱんはありませんか。」とききました。するとそこにはさんにんの)

よって、 「パンはありませんか。」とききました。するとそこには三人の

(はだしのひとたちが、めをまっかにしてさけをのんでおりましたが、ひとりが)

はだしの人たちが、目をまっかにして酒をのんでおりましたが、一人が

(たちあがって、 「ぱんはあるが、どうもくわれないぱんでな。せきばんだもな。」)

立ち上がって、 「パンはあるが、どうもくわれないパンでな。石盤だもな。」

(とおかしなことをいいますと、みんなはおもしろそうにぶどりのかおをみてどっと)

とおかしなことを言いますと、みんなはおもしろそうにブドリの顔を見てどっと

(わらいました。ぶどりはいやになって、ぷいっとおもてへでましたら、むこうからかみを)

笑いました。ブドリはいやになって、ぷいっと表へ出ましたら、むこうから髪を

(かくがりにしたせいのたかいおとこがきて、いきなり、 「おい、おまえ、ことしのなつ、)

角刈りにしたせいの高い男が来て、いきなり、 「おい、おまえ、ことしの夏、

(でんきでこやしふらせたぶどりだな。」といいました。 「そうだ。」)

電気でこやしふらせたブドリだな。」と言いました。 「そうだ。」

(ぶどりはなにげなくこたえました。そのおとこはたかくさけびました。)

ブドリはなにげなく答えました。その男は高くさけびました。

(「かざんきょくのぶどりがきたぞ。みんなあつまれ」 するといまのいえのなかや)

「火山局のブドリが来たぞ。みんな集まれ」 するといまの家の中や

など

(そこらのはたけから、じゅうはちにんのひゃくしょうたちが、げらげらわらってかけてきました。)

そこらの畑から、十八人の百姓たちが、げらげらわらってかけて来ました。

(「このやろう、きさまのでんきのおかげで、おいらのおりざ、みんなたおれて)

「この野郎、きさまの電気のおかげで、おいらのオリザ、みんなたおれて

(しまったぞ。どうしてあんなまねしたんだ。」ひとりがいいました。)

しまったぞ。どうしてあんなまねしたんだ。」一人が言いました。

(ぶどりはしずかにいいました。 「たおれるなんて、きみらははるにだした)

ブドリはしずかに言いました。 「たおれるなんて、きみらは春にだした

(ぽすたーをみなかったのか。」 「なにこのやろう。」いきなりひとりが)

ポスターを見なかったのか。」 「なにこの野郎。」いきなり一人が

(ぶどりのぼうしをたたきおとしました。それからみんなはよってたかってぶどりを)

ブドリの帽子をたたき落としました。それからみんなはよってたかってブドリを

(なぐったりふんだりしました。ぶどりはとうとうなにがなんだかわからなくなって)

なぐったりふんだりしました。ブドリはとうとう何がなんだかわからなくなって

(たおれてしまいました。 きがついてみるとぶどりはどこかびょういんらしいへやの)

たおれてしまいました。 気がついてみるとブドリはどこか病院らしい室の

(しろいべっどにねていました。まくらもとにはみまいのでんぽうやたくさんのてがみが)

白いベッドに寝ていました。まくらもとには見舞の電報やたくさんの手紙が

(ありました。ぶどりのからだじゅうはいたくてあつく、うごくことが)

ありました。ブドリのからだじゅうはいたくて熱く、動くことが

(できませんでした。けれどもそれからいっしゅうかんばかりたちますと、もうぶどりは)

できませんでした。けれどもそれから一週間ばかりたちますと、もうブドリは

(もとのげんきになっていました。そしてしんぶんで、あのときのできごとは、)

もとの元気になっていました。そして新聞で、あのときの出来事は、

(ひりょうのいれようをまちがっておしえたのうぎょうぎしが、おりざのたおれたのをみんな)

肥料の入れようをまちがって教えた農業技師が、オリザのたおれたのをみんな

(かざんきょくのせいにして、ごまかしていたためだということをよんで、おおきなこえで)

火山局のせいにして、ごまかしていたためだということを読んで、大きな声で

(ひとりでわらいました。 そのつぎのひのごご、びょういんのこづかいがはいってきて、)

一人でわらいました。 その次の日の午後、病院の小使いがはいってきて、

(「ねりというごふじんがたずねておいでになりました。」といいました。)

「ネリというご婦人がたずねておいでになりました。」と言いました。

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