グスコーブドリの伝記17

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タグ文学 童話

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(ふたりはつぎのあさ、さんむとりのしにつき、ひるごろさんむとりかざんのいただき)

二人はつぎの朝、サンムトリの市につき、ひるごろサンムトリ火山のいただき

(ちかく、かんそくきかいをおいてあるこやにのぼりました。そこは、さんむとりさんのふるい)

近く、観測機械をおいてある小屋にのぼりました。そこは、サンムトリ山の古い

(ふんかこうのがいりんざんが、うみのほうへむいてかけたところで、そのこやのまどから)

噴火口の外輪山が、海のほうへ向いて欠けたところで、その小屋の窓から

(ながめますと、うみはあおやはいいろのいくつものしまになってみえ、そのなかのきせんは)

ながめますと、海は青や灰いろのいくつもの縞になって見え、そのなかの汽船は

(くろいけむりをはき、ぎんいろのみおをひいていくつもすべっているのでした。)

黒いけむりをはき、銀いろの水脈を引いていくつもすべっているのでした。

(ろうぎしはしずかにすべてのかんそくきをしらべ、それからぶどりにいいました。)

老技師はしずかにすべての観測機をしらべ、それからブドリに言いました。

(「きみはこのやまはあとなんにちぐらいでふんかするとおもうか。」 「ひとつきはもたないと)

「きみはこの山はあと何日ぐらいで噴火すると思うか。」 「一月はもたないと

(おもいます。」 「ひとつきはもたない。もうとおかももたない。はやくこうさくを)

思います。」 「一月はもたない。もう十日ももたない。早く工作を

(してしまわないと、とりかえしのつかないことになる。わたしはこのやまのうみにむいた)

してしまわないと、取りかえしのつかないことになる。私はこの山の海に向いた

(ほうでは、あすこがいちばんよわいとおもう。」ろうぎしはさんぷくのたにのうえの)

ほうでは、あすこがいちばんよわいと思う。」老技師は山腹の谷の上の

(うすみどりのくさちをゆびさしました。そこをくものかげがしずかにあおくすべって)

うすみどりの草地を指さしました。そこを雲の影がしずかに青くすべって

(いるのでした。 「あすこにはようがんのそうがふたつしかない。あとはやわらかな)

いるのでした。 「あすこには溶岩の層が二つしかない。あとはやわらかな

(かざんばいとかざんれきのそうだ。それにあすこまではぼくじょうのみちもりっぱにあるから、)

火山灰と火山礫の層だ。それにあすこまでは牧場の道もりっぱにあるから、

(ざいりょうをはこぶことにぞうさない。ぼくはこうさくたいをしんせいしよう。」)

材料をはこぶことにぞうさない。ぼくは工作隊を申請しよう。」

(ろうぎしはせわしくきょくへはっしんをはじめました。そのときあしのしたでは、)

老技師はせわしく局へ発信をはじめました。そのとき足の下では、

(つぶやくようなかすかなおとがして、かんそくごやはしばらくぎしぎしきしみました。)

つぶやくようなかすかな音がして、観測小屋はしばらくぎしぎしきしみました。

(ろうぎしはきかいをはなれました。 「きょくからすぐこうさくたいをだすそうだ。)

老技師は機械をはなれました。 「局からすぐ工作隊を出すそうだ。

(こうさくたいといってもはんぶんけっしたいだ。わたしはいままでに、こんなきけんにせまった)

工作隊といってもはんぶん決死隊だ。私はいままでに、こんな危険にせまった

(しごとをしたことがない。」 「とおかのうちにできるでしょうか。」)

仕事をしたことがない。」 「十日のうちにできるでしょうか。」

(「きっとできる。そうちにはみっか、さんむとりしのはつでんしょから、でんせんをひいて)

「きっとできる。装置には三日、サンムトリ市の発電所から、電線を引いて

など

(くるにはいつかかかるな。」 ぎしはしばらくゆびをおってかんがえていましたが、)

くるには五日かかるな。」 技師はしばらく指を折って考えていましたが、

(やがてあんしんしたようにまたしずかにいいました。 「とにかくぶどりくん、ひとつ)

やがて安心したようにまたしずかに言いました。 「とにかくブドリ君、ひとつ

(ちゃをわかしてのもうではないか。あんまりいいけしきだから。」)

茶をわかして飲もうではないか。あんまりいいけしきだから。」

(ぶどりはもってきたあるこーるらんぷにひをいれてちゃをわかしはじめました。)

ブドリは持って来たアルコールランプに火を入れて茶をわかしはじめました。

(そらにはだんだんくもがでて、それにひももうおちたのか、うみはさびしいはいいろに)

空にはだんだん雲が出て、それに日ももう落ちたのか、海はさびしい灰いろに

(かわり、たくさんのしろいなみがしらは、いっせいにかざんのすそによせてきました。)

かわり、たくさんの白い波がしらは、いっせいに火山のすそによせてきました。

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