銀河鉄道の夜 28
宮沢賢治 作
と思ったら、もうそこに鳥とりの形はなくなって、
「ああせいせいした。どうもからだにちょうど合うほどかせいでいるくらい、いいことはありませんな。」
というききおぼえのある声が、ジョバンニのとなりにしました。
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問題文
(とりとりはにじゅっぴきばかり、ふくろにいれてしまうと、)
鳥とりは二十ぴきばかり、袋に入れてしまうと、
(きゅうにりょうてをあげて、へいたいがてっぽうだまにあたって、しぬときのようなかたちをしました。)
急に両手をあげて、兵隊が鉄砲弾にあたって、死ぬときのような形をしました。
(とおもったら、もうそこにとりとりのかたちはなくなって、かえって、)
と思ったら、もうそこに鳥とりの形はなくなって、かえって、
(「ああせいせいした。どうもからだにちょうどあうほどかせいでいるくらい、)
「ああせいせいした。どうもからだにちょうど合うほどかせいでいるくらい、
(いいことはありませんな。」)
いいことはありませんな。」
(というききおぼえのあるこえが、じょばんにのとなりにしました。)
というききおぼえのある声が、ジョバンニのとなりにしました。
(みるととりとりは、もうそこでとってきたさぎを、きちんとそろえて、)
見ると鳥とりは、もうそこでとってきたさぎを、きちんとそろえて、
(ひとつずつかさねなおしているのでした。)
一つずつ重ねなおしているのでした。
(「どうしてあすこから、いっぺんにここへきたんですか。」)
「どうしてあすこから、いっぺんにここへきたんですか。」
(じょばんにが、なんだかあたりまえのような、あたりまえでないような、)
ジョバンニが、なんだかあたりまえのような、あたりまえでないような、
(おかしなきがしてといました。)
おかしな気がして問いました。
(「どうしてって、こようとしたからきたんです。)
「どうしてって、こようとしたからきたんです。
(ぜんたいあなたがたは、どちらからおいでですか。」)
ぜんたいあなた方は、どちらからおいでですか。」
(じょばんには、すぐへんじしようとおもいましたけれども、)
ジョバンニは、すぐ返事しようと思いましたけれども、
(さあ、ぜんたいどこからきたのか、もうどうしてもかんがえつきませんでした。)
さあ、ぜんたいどこからきたのか、もうどうしても考えつきませんでした。
(かむぱねるらも、かおをまっかにしてなにかおもいだそうとしているのでした。)
カムパネルラも、顔をまっ赤にして何か思い出そうとしているのでした。
(「ああ、とおくからですね。」)
「ああ、遠くからですね。」
(とりとりは、わかったというようにぞうさなくうなずきました。)
鳥とりは、わかったというようにぞうさなくうなずきました。