星の王子さま 11 (13/32)

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うぬぼれ男の星
サン=テグジュペリ作 内藤濯訳 

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(にばんめのほしには、うぬぼれおとこがすんでいました。)

二番目の星には、うぬぼれ男が住んでいました。

(「やあ!やあ!おれにかんしんしてるにんげんがやってきたな」)

「やあ!やあ!おれに感心してる人間がやってきたな」

(と、うぬぼれおとこは、おうじさまをみかけるなり、とおくからさけびました。)

と、うぬぼれ男は、王子さまを見かけるなり、遠くからさけびました。

(うぬぼれおとこのめからみると、ほかのひとはみな、じぶんにかんしんしているのです。)

うぬぼれ男の目から見ると、ほかのひとはみな、自分に感心しているのです。

(「こんにちは。へんなぼうしかぶってるね。」)

「こんにちは。変な帽子かぶってるね。」

(「こりゃ、あいさつするためのぼうしなんだ。)

「こりゃ、挨拶するための帽子なんだ。

(おれをやんやとはやしてくれるひとがあるときに、あいさつするためのぼうしなんだ。)

俺をヤンヤとはやしてくれる人がある時に、挨拶するための帽子なんだ。

(でも、あいにく、だれも、こっちのほうへやってこないんでね」)

でも、あいにく、だれも、こっちのほうへやってこないんでね」

(「あ、そう?」 と、おうじさまは、いいましたが、)

「あ、そう?」 と、王子さまは、いいましたが、

(あいてがなにをいっているのか、わからなかったのです。)

あいてがなにをいっているのか、わからなかったのです。

(「てをたたきなさい、ぱちぱちと」 と、うぬぼれおとこはいいました。)

「手をたたきなさい、パチパチと」 と、うぬぼれ男はいいました。

(おうじさまは、てをぱちぱちとたたきました。)

王子さまは、手をパチパチとたたきました。

(すると、うぬぼれおとこは、ぼうしをもちあげながら、ていねいにおじぎしました。)

すると、うぬぼれ男は、帽子をもちあげながら、ていねいにおじぎしました。

(「こりゃ、おうさまをたずねるよりおもしろいな」 と、おうじさまは、おもって、)

「こりゃ、王さまをたずねるよりおもしろいな」 と、王子さまは、思って、

(また、ぱちぱちとたたきました。)

また、パチパチとたたきました。

(うぬぼれおとこは、またぼうしをもちあげながら、おじぎしました。)

うぬぼれ男は、また帽子をもちあげながら、おじぎしました。

(ごふんかんも、てをたたくけいこをしているうちに、おうじさまは、)

五分間も、手を叩くけいこをしているうちに、王子さまは、

(することがいつまでもおなじことなので、くたびれました。)

することがいつまでも同じことなので、くたびれました。

(「そのぼうし、どうしたら、したにおりるの?」)

「その帽子、どうしたら、下におりるの?」

(だけれど、うぬぼれおとこのみみにははいりません。)

だけれど、うぬぼれ男の耳にははいりません。

など

(ほめることばでなくては、うぬぼれおとこのみみには、けっしてはいらないのです。)

褒める言葉でなくては、うぬぼれ男の耳には、けっして入らないのです。

(「おまえさんは、ほんとにおれにかんしんしてるかね?」と、)

「おまえさんは、ほんとにおれに感心してるかね?」と、

(うぬぼれおとこがおうじさまにたずねました。)

うぬぼれ男が王子さまにたずねました。

(「かんしんするって、それ、いったい、どういうこと?」)

「感心するって、それ、いったい、どういうこと?」

(「かんしんするっていうのはね、おれがこのほしのうちで、いちばんうつくしくって、)

「感心するっていうのはね、おれがこの星のうちで、一番美しくって、

(いちばんりっぱなふくをきて、いちばんおかねもちで、それに、)

一番りっぱな服を着て、一番お金持ちで、それに、

(いちばんかしこいひとだとおもうことだよ」)

一番賢い人だと思うことだよ」

(「でも、このほしのうえにいるひとったら、あんたひとりっきりじゃないの!」)

「でも、この星の上にいる人ったら、あんた一人っきりじゃないの!」

(「たのむから、まあ、とにかく、おれにかんしんしておくれ」)

「たのむから、まあ、とにかく、おれに感心しておくれ」

(「ぼく、かんしんするよ」 と、おうじさまは、こころもちかたをそびやかしながら)

「ぼく、感心するよ」 と、王子さまは、心もち肩をそびやかしながら

(いいました。 「でも、ひとにかんしんされることが、なんで、そうおもしろいの?」)

いいました。 「でも、人に感心されることが、なんで、そうおもしろいの?」

(おうじさまは、そういって、そこをたちさりました。)

王子さまは、そういって、そこを立ち去りました。

(おとなって、ほんとにへんだな、とおうじさまは、たびをつづけながら、)

おとなって、ほんとにへんだな、と王子さまは、旅をつづけながら、

(むじゃきにおもいました。)

むじゃきに思いました。

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