狸と与太郎 夢野久作
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問題文
(よたろうはまいにちとなりむらへあそびにいって、まだひのくれぬうちにもりをとおって)
与太郎は毎日隣村へ遊びに行って、まだ日の暮れぬうちに森を通って
(かえってきました。 「あのもりはたぬきがいていろいろのものにばけるから、)
帰って来ました。 「あの森は狸がいていろいろのものに化けるから、
(ひのくれぬうちにかえらぬとおそろしいぞ」 とおかあさんがいいきかせて)
日の暮れぬうちに帰らぬと怖ろしいぞ」 とお母さんが言いきかせて
(いるからです。 あるひ、たろうはうっかりあそびすごしてまっくらになってかえって)
いるからです。 ある日、太郎はうっかり遊び過ごして真暗になって帰って
(きました。もりのなかにはいると、たちまちいちじょうもあるくらいのひとつめにゅうどうがでました。)
来ました。森の中に入ると、忽ち一丈もある位の一つ目入道が出ました。
(「やあ。おおきなおじさんがでてきた。めだまがひとつしかないんだね。おもしろいなあ。)
「ヤア。大きな伯父さんが出て来た。眼玉が一つしかないんだね。面白いなあ。
(ぼくといっしょにうちへあそびにこないかい」 とよたろうはいいました。ひとつめにゅうどうは)
僕と一緒にうちへ遊びに来ないかい」 と与太郎は言いました。一つ目入道は
(みているうちにろくろくびになりました。 「やあ。きれいなくびのながいねえさんに)
見ているうちにロクロ首になりました。 「ヤア。綺麗な首の長い姉さんに
(なった。へんだなあ。どうしてそんなにながくなるの。もっともっとながくしてごらん」)
なった。変だなあ。どうしてそんなに長くなるの。もっともっと長くして御覧」
(といいました。ろくろくびはこんどはおにのすがたになりました。 「おや、おにになった。)
と言いました。ロクロ首は今度は鬼の姿になりました。 「オヤ、鬼になった。
(おせっくのにんぎょうによくにてる。おかしいなあ。もっといろんなものになってごらん」)
お節句の人形によく似てる。可笑しいなあ。もっといろんなものになって御覧」
(ばけものはよたろうがちっともこわがらないのでつまらなくなって、たぬきになって)
化け物は与太郎がちっとも怖がらないのでつまらなくなって、狸になって
(しまいました。それをみるとよたろうはまっさおになって、 「わあたぬきがでたあ。)
しまいました。それを見ると与太郎は真青になって、 「ワア狸が出たあ。
(ばけるとたいへんだ。たすけてくれ」 といいながらいっしょけんめいにげていきました。)
化けると大変だ。助けてくれ」 と言いながら一所懸命逃げて行きました。