酒呑童子(大江山) 4

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(そのときさんにんのおじいさんは、)

その時三人のおじいさんは、

(「あのおにはたいそうおさけがすきで、)

「あの鬼はたいそうお酒が好きで、

(なまえまでしゅてんどうじといっております。)

名前まで酒呑童子といっております。

(こうぶつのおさけをのんで、よいたおれますと、もうからだがきかなくなって、)

好物のお酒を飲んで、酔い倒れますと、もう体が利かなくなって、

(ばけることも、にげることもできなくなります。)

化けることも、にげることもできなくなります。

(わたくしどものこのおさけは、「かみのほうべんおにのどくざけ」という)

わたくしどものこのお酒は、「神の方便鬼の毒酒」という

(ふしぎなおさけで、にんげんがのめばからだがかるくなって)

不思議なお酒で、人間が飲めば体が軽くなって

(ちからがましますが、おにがのめばからだがしびれて、)

力がましますが、鬼が飲めば体がしびれて、

(つうりきがなくなってしまって、きられても、)

通力がなくなってしまって、切られても、

(つかれても、どうすることもできません。)

つかれても、どうすることもできません。

(このおさけをあげますから、しゅてんどうじにすすめて)

このお酒をあげますから、酒呑童子にすすめて

(よいつぶしたうえ、しゅびよくおにのくびをきってください。」)

酔いつぶした上、首尾よく鬼の首を切って下さい。」

(といって、おさけのかめをわたしました。)

といって、お酒のかめをわたしました。

(それからさんにんのおじいさんはさきにたって、)

それから三人のおじいさんは先に立って、

(せんじょうがたけをのぼっていきました。)

千丈ガ岳を上って行きました。

(じゅうじょうくらいながさのある、)

十丈くらい長さのある、

(まっくらないわあなのなかをくぐってそとへでますと、)

まっくらな岩穴の中をくぐって外へ出ますと、

(さあさあとおとをたてて、)

さあさあと音を立てて、

(ちいさなたにがわのながれているところへでました。)

小さな谷川の流れている所へ出ました。

(そのときおじいさんたちはふりむいて、)

その時おじいさんたちはふり向いて、

など

(「ではこのかわについてどんどんのぼっておいでなさい。)

「ではこの川についてどんどん上っておいでなさい。

(するとかわのふちにじゅうしちはちのむすめがいますから、)

すると川のふちに十七八の娘がいますから、

(そのこにたずねて、おにのいわやへおいでなさい。」)

その子にたずねて、鬼の岩屋へおいでなさい。」

(といったとおもうと、さんにんともふいとすがたがみえなくなりました。)

といったと思うと、三人ともふいと姿が見えなくなりました。

(みんなはあのさんにんのおじいさんは、)

みんなはあの三人のおじいさんは、

(すみよしのみょうじんさまと、くまののごんげんさまと、おとこやまのはちまんさまが)

住吉の明神さまと、熊野の権現さまと、男山の八幡さまが

(かりにすがたをおあらわしになったものであることをはじめてしって、)

仮に姿をお現しになったものであることをはじめて知って、

(ふしぎにおもいながら、あとからてをあわせておがみました。)

不思議に思いながら、後から手を合わせておがみました。

(そしてこのとおりかみさまのあらたかなかごのあるうえは、)

そしてこの通り神さまのあらたかな加護のある上は、

(もうおにをたいじしたもどうぜんだとこころづよくおもいました。)

もう鬼を退治したも同然だと心強く思いました。

(そこでおそわったとおりかわについてどこまでものぼって)

そこで教わったとおり川についてどこまでも上って

(いきますと、じゅうしちはちのきれいなむすめが、)

行きますと、十七八のきれいな娘が、

(かわのふちでちのついたきものをあらいながら、しくしくないていました。)

川のふちで血のついた着物を洗いながら、しくしく泣いていました。

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