銀河鉄道の夜 16
六、銀河ステーション (4/4)
宮沢賢治 作
宮沢賢治 作
「それにこの汽車、石炭をたいていないねえ。」
ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながらいいました。
「アルコールか電気だろう。」
カムパネルラがいいました。
ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながらいいました。
「アルコールか電気だろう。」
カムパネルラがいいました。
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問題文
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(するとほんとうに、そのきれいなのはらじゅうのあおやだいだいや、)
するとほんとうに、そのきれいな野原中の青や橙や、
(いろいろかがやくさんかくひょうも、)
いろいろかがやく三角標も、
(てんでにいきをつくように、ちらちらゆれたりふるえたりしました。)
てんでに息をつくように、ちらちらゆれたりふるえたりしました。
(「ぼくはもう、すっかりてんののはらにきた。」)
「ぼくはもう、すっかり天の野原にきた。」
(じょばんにはいいました。)
ジョバンニはいいました。
(「それにこのきしゃ、せきたんをたいていないねえ。」)
「それにこの汽車、石炭をたいていないねえ。」
(じょばんにがひだりてをつきだしてまどからまえのほうをみながらいいました。)
ジョバンニが左手をつき出して窓から前の方を見ながらいいました。
(「あるこーるかでんきだろう。」)
「アルコールか電気だろう。」
(かむぱねるらがいいました。)
カムパネルラがいいました。
(ごとごとごとごと、そのちいさなきれいなきしゃは、)
ごとごとごとごと、その小さなきれいな汽車は、
(そらのすすきのかぜにひるがえるなかを、)
そらのすすきの風にひるがえる中を、
(あまのがわのみずや、さんかくてんのあおじろいびこうのなかを、)
天の川の水や、三角点の青じろい微光の中を、
(どこまでもどこまでもと、はしっていくのでした。)
どこまでもどこまでもと、走って行くのでした。
(「ああ、りんどうのはながさいている。もうすっかりあきだねえ。」)
「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ。」
(かむぱねるらが、まどのそとをゆびさしていいました。)
カムパネルラが、窓の外を指さしていいました。
(せんろのへりになったみじかいしばくさのなかに、)
線路のへりになったみじかい芝草の中に、
(げっちょうせきででもきざまれたような、)
月長石ででもきざまれたような、
(すばらしいむらさきのりんどうのはながさいていました。)
すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。
(「ぼく、とびおりて、あいつをとって、またとびのってみせようか。」)
「ぼく、飛び下りて、あいつをとって、また飛び乗ってみせようか。」
(じょばんにはむねをおどらせていいました。)
ジョバンニは胸をおどらせていいました。
など
(「もうだめだ。あんなにうしろへいってしまったから。」)
「もうだめだ。あんなにうしろへ行ってしまったから。」
(かむぱねるらが、そういってしまうかしまわないうち、)
カムパネルラが、そういってしまうかしまわないうち、
(つぎのりんどうのはなが、いっぱいにひかってすぎていきました。)
つぎのりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
(とおもったら、もうつぎからつぎから、)
と思ったら、もうつぎからつぎから、
(たくさんのきいろなそこをもったりんどうのはなのこっぷが、)
たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、
(わくように、あめのように、めのまえをとおり、)
湧くように、雨のように、目の前を通り、
(さんかくひょうのれつは、けむるようにもえるように、いよいよひかってたったのです。)
三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。