銀河鉄道の夜 24

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プレイ回数1505難易度(3.8) 1206打 長文
八、鳥をとる人 (2/6)
宮沢賢治 作
「わっしはすぐそこで降ります。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。」
「何鳥ですか。」
「ツルやガンです。サギも白鳥もです。」

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問題文

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(「わっしはすぐそこでおります。わっしは、とりをつかまえるしょうばいでね。」)

「わっしはすぐそこで降ります。わっしは、鳥をつかまえる商売でね。」

(「なにどりですか。」)

「何鳥ですか。」

(「つるやがんです。さぎもはくちょうもです。」)

「ツルやガンです。サギも白鳥もです。」

(「つるはたくさんいますか。」)

「ツルはたくさんいますか。」

(「いますとも、さっきからないてまさあ。きかなかったのですか。」)

「いますとも、さっきから鳴いてまさあ。聞かなかったのですか。」

(「いいえ。」)

「いいえ。」

(「いまでもきこえるじゃありませんか。)

「いまでも聞こえるじゃありませんか。

(そら、みみをすましてきいてごらんなさい。」)

そら、耳をすまして聞いてごらんなさい。」

(ふたりはめをあげ、みみをすましました。)

ふたりは目をあげ、耳をすましました。

(ごとごとなるきしゃのひびきと、すすきのかぜとのあいだから、)

ごとごと鳴る汽車のひびきと、すすきの風との間から、

(ころんころんとみずのわくようなおとがきこえてくるのでした。)

ころんころんと水のわくような音が聞こえてくるのでした。

(「つる、どうしてとるんですか。」)

「ツル、どうしてとるんですか。」

(「つるですか、それともさぎですか。」)

「ツルですか、それともサギですか。」

(「さぎです。」)

「サギです。」

(じょばんには、どっちでもいいとおもいながらこたえました。)

ジョバンニは、どっちでもいいとおもいながら答えました。

(「そいつはな、ぞうさない。さぎというものは、)

「そいつはな、ぞうさない。サギというものは、

(みんなあまのがわのすながかたまって、ぽおっとできるもんですからね、)

みんな天の川の砂がかたまって、ぽおっとできるもんですからね、

(そしてしじゅうかわへかえりますからね、)

そして始終川へ帰りますからね、

(かわらでまっていて、さぎがみんな、あしをこういうふうにして)

川原で待っていて、サギがみんな、脚をこういうふうにして

(おりてくるところを、そいつがじべたへつくかつかないうちに、)

下りてくるところを、そいつが地べたへつくかつかないうちに、

など

(ぴたっとおさえちまうんです。)

ぴたっと押さえちまうんです。

(するともうさぎは、かたまってあんしんしてしんじまいます。)

するともうサギは、かたまって安心して死んじまいます。

(あとはもう、わかりきってまさあ。おしばにするだけです。」)

あとはもう、わかり切ってまさあ。押し葉にするだけです。」

(「さぎをおしばにするんですか。ひょうほんですか。」)

「サギを押し葉にするんですか。標本ですか。」

(「ひょうほんじゃありません。みんなたべるじゃありませんか。」)

「標本じゃありません。みんなたべるじゃありませんか。」

(「おかしいねえ。」)

「おかしいねえ。」

(かむぱねるらがくびをかしげました。)

カムパネルラが首をかしげました。

(「おかしいもふしんもありませんや。そら。」)

「おかしいも不審もありませんや。そら。」

(そのおとこはたって、あみだなからつつみをおろして、てばやくくるくるとときました。)

その男は立って、網棚から包をおろして、手ばやくくるくると解きました。

(「さあ、ごらんなさい。いまとってきたばかりです。」)

「さあ、ごらんなさい。いまとってきたばかりです。」

(「ほんとうにさぎだねえ。」)

「ほんとうにサギだねえ。」

(ふたりはおもわずさけびました。)

ふたりは思わず叫びました。

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