カラマーゾフの兄弟9

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問題文

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(もっとも、ぐうぜんにもかれが)

もっとも、偶然にも彼が

(ずっとこうはんいのどくしょにとくべつなちゅういをよびおこして、ひじょうにおおくのひとから)

ずっと広範囲の読書に特別な注意をよび起こして、非常に多くの人から

(いちじにみとめられ、きおくされるようになったのは、ついさいきんのことである)

一時に認められ、記憶されるようになったのは、つい最近のことである

(。それはかなりにきょうみのあるできごとであった。すでにだいがくをそつぎょうして、)

。それはかなりに興味のある出来事であった。すでに大学を卒業して、

(れいのにせんるーぶるのきんでがいこくいきをくわだてているうちに、いわんふょー)

例の二千ルーブルの金で外国行きを企てているうちに、イワン・フョー

(どろヴぃっちはとつぜんあるだいしんぶんにひとつのきみょうなろんぶんをのせて、せんもんがいの)

ドロヴィッチは突然ある大新聞に一つの奇妙な論文を載せて、専門外の

(じんのちゅういまでひいたのであるが、なかんずくそのだいざいがはくぶつかをそつぎょうし)

人の注意まで引いたのであるが、なかんずくその題材が博物科を卒業し

(たかれにとってはまったくえんのなさそうなものであった。そのろんぶんは、そのこ)

た彼にとっては全く縁のなさそうなものであった。その論文は、そのこ

(ろあちこちでろんぎされていたきょうかいさいばんもんだいにたいしてかかれたものである)

ろあちこちで論議されていた教会裁判問題に対して書かれたものである

(。すでにこのもんだいについておおやけけにされたいくつかのいけんをけんとうしてから、)

。すでにこの問題について公けにされた幾つかの意見を検討してから、

(かれはじぶんじしんのけんかいをはっぴょうした。じゅうようなてんはぶんしょうのちょうしと、まったくひとのい)

彼は自分自身の見解を発表した。重要な点は文章の調子と、全く人の意

(ひょうにでたそのけつろんとにあった。ところで、きょうかいはのだいたすうはだんぜんかれをめ)

表に出たその結論とにあった。ところで、教会派の大多数は断然彼を目

(してじとうとかくしんしたが、それとどうじにこうみんけんろんじゃのみならずむじんろんじゃま)

して自党と確信したが、それと同時に公民権論者のみならず無神論者ま

(でがいっしょになって、かくじのたちばから、やんやとかっさいかっさいしはじめ)

でがいっしょになって、各自の立場から、やんやと喝采かっさいし始め

(た。が、つまるところ、ぐがんのしはこのろんぶんは、たんにだいたんふてきのにわかきょうげん)

た。が、つまるところ、具眼の士はこの論文は、単に大胆不敵の俄狂言

(にわかきょうげんでありちょうろうちょうろうにすぎないとだんていした。このい)

にわかきょうげんであり嘲弄ちょうろうにすぎないと断定した。このい

(きさつをとくにしょうかいしておくのは、そのころもちあがったきょうかいさいばんもんだいに)

きさつを特に紹介しておくのは、そのころもちあがった教会裁判問題に

(ついていっぱんてきなきょうみをもっていた、このまちのこうがいにあるゆうめいなしゅうどういんで)

ついて一般的な興味を持っていた、この町の郊外にある有名な修道院で

(も、たまたまこのろんぶんがもんだいになって、ひじょうなぎわくをよびおこしていた)

も、たまたまこの論文が問題になって、非常な疑惑をよび起こしていた

(からである。さてひっしゃのながわかって、それがこのまちのしゅっしんしゃで、しか)

からである。さて筆者の名がわかって、それがこの町の出身者で、しか

など

(も「あのほかならぬふょーどるぱーヴろヴぃっちのむすこである」とい)

も『あのほかならぬフョードル・パーヴロヴィッチの息子である』とい

(うことがまたひとびとのきょうみをひくのであった。ところがちょうどそのころ)

うことがまた人々の興味を引くのであった。ところがちょうどそのころ

(、ひょっくりこのまちへとうのひっしゃがすがたをあらわした。)

、ひょっくりこの町へ当の筆者が姿を現わした。

(なんのためにいわんふょーどろヴぃっちがそのときかえってきたのか)

なんのためにイワン・フョードロヴィッチがそのとき帰って来たのか

(じぶんはとうじすでにほとんどふあんにちかいきもちで、このぎもんをこころにいだ)

自分は当時すでにほとんど不安に近い気持で、この疑問を心にいだ

(いたことをおぼえている。あのようなおそろしいじけんのたんしょたんちょとなっ)

いたことを覚えている。あのような恐ろしい事件の端緒たんちょとなっ

(たこのしゅくめいてきなききょうは、じぶんにとって、そのあとながいあいだ、ほとんどつね)

たこの宿命的な帰郷は、自分にとって、その後長いあいだ、ほとんど常

(にふかかいななぞなぞとしてのこっていた。だいたい、あれほどがくもんがあり、)

に不可解な謎なぞとして残っていた。だいたい、あれほど学問があり、

(あれほどけんしきがたかくて、あれほどたいめんをおもんぱかりおもんぱかるせいねんが、いっ)

あれほど見識が高くて、あれほど体面を慮おもんぱかる青年が、一

(しょうじぶんのそんざいをむしして、じぶんをしりもしなければおぼえてもいず、もち)

生自分の存在を無視して、自分を知りもしなければ覚えてもいず、もち

(ろん、たといわがこのねがいであろうとも、いついかなるばあいにもきんなど)

ろん、たといわが子の願いであろうとも、いついかなる場合にも金など

(をだすしんぱいはぜったいにないくせに、それでいて、やはりいわんとあれくせ)

を出す心配は絶対にないくせに、それでいて、やはりイワンとアレクセ

(いがいつかかえってきて、きんをねだりはしないかと、いっしょうがいそればかりを)

イがいつか帰って来て、金をねだりはしないかと、一生涯そればかりを

(おそれているような、こんなちちおやのらんみゃくきわまるかていへとつぜんやってきたの)

恐れているような、こんな父親の乱脈きわまる家庭へ突然やって来たの

(は、ふしぎなことである。ところが、そんなちちおやのいえへもどってきてこの)

は、不思議なことである。ところが、そんな父親の家へ戻って来てこの

(せいねんはもう2がつばかりもいっしょにくらしているばかりでなく、りょうしゃの)

青年はもう二月ばかりもいっしょに暮らしているばかりでなく、両者の

(あいだはこのうえもなくおりあいがよいのである。これにはたんにわたしばか)

あいだはこのうえもなく折り合いが好いのである。これには単に私ばか

(りではなく、おおくのひとたちがとくにおどろかされた。ぴょーとるあれくさん)

りではなく、多くの人たちが特に驚かされた。ピョートル・アレクサン

(どろヴぃっちみうーそふ、このひとはすでにまえにものべたとおり、さき)

ドロヴィッチ・ミウーソフこの人はすでに前にも述べたとおり、先

(づまとのつながりでふょーどるぱーヴろヴぃっちのとおいしんせきにあたるひと)

妻とのつながりでフョードル・パーヴロヴィッチの遠い親戚に当たる人

(であるが、ちょうどそのころ、すっかりすみなれたぱりからかえってきて)

であるが、ちょうどそのころ、すっかり住み慣れたパリから帰って来て

(、ふたたびとうしにりんせつしたりょうちにいあわせた。このひとがだれにもましてとくにおどろかし)

、再び当市に隣接した領地に居合わせた。この人が誰にもまして特に驚

(いていたようにきおくする。)

いていたように記憶する。

(かれはいじょうなるきょうみをおぼえてこのせいねんとそうしきのあいだになったが、とも)

彼は異常なる興味を覚えてこの青年と相識のあいだになったが、とも

(すればないしんのくつうをかんじながら、ちしきのはりあいをすることがあった。)

すれば内心の苦痛を感じながら、知識の張り合いをすることがあった。

(「あのおとこはきぐらいはたかいし」とかれはそのころ、われわれにむかっていわん)

『あの男は気位は高いし』と彼はそのころ、われわれに向かってイワン

(のことをこんなふうにはなしていた。「いつでもこぜにはもうけるし、それに)

のことをこんな風に話していた。『いつでも小銭はもうけるし、それに

(いまでもがいこくへいくだけのきんはもっているのだから、なにもいまさらこんな)

今でも外国へ行くだけの金は持っているのだから、何もいまさらこんな

(ところへやってくるひつようはなさそうなものだが?ちちおやにきんをもらうた)

ところへやって来る必要はなさそうなものだが? 父親に金をもらうた

(めにやってきたのでないことは、だれのめにもあきらかなことだ。なんにし)

めにやって来たのでないことは、誰の眼にも明らかなことだ。なんにし

(てもかねをだすちちおやではないのだから。あのおとこはさけをのんだり、ほうらつほう)

ても金を出す父親ではないのだから。あの男は酒を飲んだり、放埒ほう

(らつなまねをしたりするのは、だいきらいなんだが、それだのにちちおやはあの)

らつなまねをしたりするのは、大嫌いなんだが、それだのに父親はあの

(おとこでなければ、よるもひもあけないありさまだ!」それはまったくじじつであっ)

男でなければ、夜も日も明けないありさまだ!』それは全く事実であっ

(た。いわんはちちおやにたいしてあきらかにいっしゅのせいりょくをもっていた。ちちはひじょう)

た。イワンは父親に対して明らかに一種の勢力を持っていた。父は非常

(にわがままで、ときにはひどくかたいじなこともあったが、しかも、ときお)

にわがままで、ときにはひどく片意地なこともあったが、しかも、時お

(りはかれのいうことをきくらしかった。そればかりではなく、どうかする)

りは彼の言うことを聞くらしかった。そればかりではなく、どうかする

(と、みもちがいくらかなおったかとおもわれることさえもあった・・・・・・。)

と、身持ちが幾らかなおったかと思われることさえもあった。

(あとになってわかったことであるが、いわんふょーどろヴぃっちがかえさ)

後になってわかったことであるが、イワン・フョードロヴィッチが帰

(ってきたいっぱんのりゆうは、あにどみとりいふょーどろヴぃっちのたのみとそ)

って来た一半の理由は、兄ドミトリイ・フョードロヴィッチの頼みとそ

(のようけんのためであった。そのころ、うまれてはじめてあにのことをしり、)

の用件のためであった。そのころ、生まれてはじめて兄のことを知り、

(かおをみたのもほとんどこのききょうのときがはじめてであったが、しかし、)

顔を見たのもほとんどこの帰郷のときがはじめてであったが、しかし、

(あるじゅうだいなじけん、といっても、しゅとしてどみとりいふょーどろヴぃ)

ある重大な事件といっても、主としてドミトリイ・フョードロヴィ

(っちにかんしたことである、のために、もすくわからききょうするまえからぶん)

ッチに関したことであるのために、モスクワから帰郷する前から文

(つうははじめていた。それがいかなるじけんであるかは、やがてどくしゃにくわしく)

通は始めていた。それがいかなる事件であるかは、やがて読者に詳しく

(わかってくるはずである。とにかく、ごじつそのとくべつなじじょうをききしった)

わかってくるはずである。とにかく、後日その特別な事情を聞き知った

(ごでさえも、わたしにはいわんふょーどろヴぃっちというひとがやはりなぞの)

後でさえも、私にはイワン・フョードロヴィッチという人がやはり謎の

(ようにかんぜられ、そのききょうのりゆうもいぜんとしてふかかいにおもわれた。)

ように感ぜられ、その帰郷の理由も依然として不可解に思われた。

(つけくわえていっておくが、いわんふょーどろヴぃっちはそのころ、)

つけ加えて言っておくが、イワン・フョードロヴィッチはそのころ、

(ちちとおおげんかをして、せいしきさいばんにまでもうったえようとしていたあにのどみとり)

父と大喧嘩をして、正式裁判にまでも訴えようとしていた兄のドミトリ

(いふょーどろヴぃっちとちちとのあいだにはさみはさまって、ちゅうさいやくといったよ)

イ・フョードロヴィッチと父との間に挾はさまって、仲裁役といったよ

(うなたちばにたっていた。)

うな立場に立っていた。

(このいちかぞくは、くりかえしていうが、このときはじめていっしょにおち)

この一家族は、くり返して言うが、このときはじめていっしょに落ち

(あったのであって、あるものはうまれてはじめてたがいにかおをみしったので)

合ったのであって、ある者は生まれてはじめて互いに顔を見知ったので

(ある。ただすえのこのあれくせいふょーどろヴぃっちだけは、1ねんほど)

ある。ただ末の子のアレクセイ・フョードロヴィッチだけは、一年ほど

(まえから、こちらでくらしていた。つまりきょうだいじゅうでもっともはやく、われわ)

前から、こちらで暮らしていた。つまり兄弟じゅうで最も早く、われわ

(れのところへすがたをあらわしたわけである。さて、このあれくせいについて)

れのところへ姿を現わしたわけである。さて、このアレクセイについて

(、しょうせつのほんぶたいへとうじょうさせるにさきだって、こうしたじょせつてきなものがたりのなかで)

、小説の本舞台へ登場させるに先立って、こうした序説的な物語の中で

(せつめいすることは、なによりもじぶんにとってはむずかしいことである。しか)

説明することは、何よりも自分にとってはむずかしいことである。しか

(し、かれについても、やはりまえがきをかかなければならぬ。すくなくとも、)

し、彼についても、やはり前書きを書かなければならぬ。少なくとも、

(あるひじょうにきみょうなてん、すなわち、このみらいのしゅじんこうを、しょうせつのだいいちまくか)

ある非常に奇妙な点、すなわち、この未来の主人公を、小説の第一幕か

(らしんぼちしんぼちのほういすがたで、どくしゃにしょうかいしなければならぬので、その)

ら新発意しんぼちの法衣姿で、読者に紹介しなければならぬので、その

(てんだけでもあらかじめせつめいしておくひつようがあるのである。じじつ、かれがこ)

点だけでもあらかじめ説明しておく必要があるのである。事実、彼がこ

(ちらのしゅうどういんにすみこんでからすでに1ねんちかくになるが、どうやらかれは)

ちらの修道院に住みこんでからすでに一年近くになるが、どうやら彼は

(いっしょうがいそのなかにとじこもるかくごでいるらしかった。)

一生涯その中に閉じこもる覚悟でいるらしかった。

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