半七捕物帳 山祝いの夜7

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第14話

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問題文

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(じぶんのかかりあいになるのをおそれて、おせきはやくにんにたいしてなにもこうがい)

自分のかかり合いになるのを恐れて、お関は役人に対して何も口外

(しなかったが、ぜんごのもようからかんがえると、じぶんがしちぞうのざしきに)

しなかったが、前後の模様からかんがえると、自分が七蔵の座敷に

(しのびこんだときに、きさぶろうはひとをころしてかえってきて、しちぞうとなにかそうだんして)

忍びこんだときに、喜三郎は人を殺して帰って来て、七蔵となにか相談して

(またそこをでて、なかにわからへいごしににげさったものらしくおもわれた。)

又そこを出て、中庭から塀越しに逃げ去ったものらしく思われた。

(もちろん、じぶんはそのじけんになんのかかりあいもないのであるが、ちょうどそのざしきに)

勿論、自分はその事件に何のかかり合いもないのであるが、丁度その座敷に

(いあわせたというふあんと、もうひとつはいちのすけのみをあんじて、せんこくから)

居あわせたという不安と、もう一つは市之助の身を案じて、先刻から

(そこらにうろうろしているのであった。)

そこらにうろうろしているのであった。

(「そうか。わかった」と、はんしちはそのはなしをきいてうなずいた。)

「そうか。判った」と、半七はその話を聴いてうなずいた。

(「して、そのぶけはどうした」 「いままでここにおいででしたが・・・・・・」)

「して、その武家はどうした」 「今までここにおいででしたが……」

(「かくしちゃあいけねえ。ここか」と、はんしちはおしいれをあごでしめしてきいた。)

「隠しちゃあいけねえ。ここか」と、半七は押入れを頤で示して訊いた。

(そのこえはひくかったが、かくれているひとのみみにはすぐひびいたらしい。)

その声は低かったが、隠れている人の耳にはすぐ響いたらしい。

(おせきがへんじをするまもなく、おしいれのとをさらりとあけて、わかいさむらいが)

お関が返事をする間もなく、押入れの戸をさらりとあけて、若い侍が

(あおざめたかおをだした。かれはかたてにかたなをもっていた。)

蒼ざめた顔を出した。かれは片手に刀を持っていた。

(「わたしはこもりいちのすけだ、けらいをてうちにしてせっぷくしようとするところへ、)

「わたしは小森市之助だ、家来を手討ちにして切腹しようとするところへ、

(ひとのあしおとがきこえたので、めしとられてはちじょくとぞんじて、ひとまずおしいれに)

人の足音がきこえたので、召捕られては恥辱と存じて、ひとまず押入れに

(みをかくしていたが、さとられてはいたしかたがない。どうぞなさけにせっぷくさせてくれ」)

身をかくしていたが、覚られては致し方がない。どうぞ情けに切腹させてくれ」

(かたなをとりなおそうとするひじのあたりを、はんしちはあわててつかんだ。)

刀を取り直そうとする臂のあたりを、半七はあわてて摑んだ。

(「ごたんりょでございます。まずおまちくださいまし。このしちぞうは)

「御短慮でございます。まずお待ちくださいまし。この七蔵は

(またひっかえしてまいったのでございますか」)

また引っ返して参ったのでございますか」

(「せっぷくとかくごいたしたれば、みをきよめようとぞんじてゆどのへかおをあらいにまいって、)

「切腹と覚悟いたしたれば、身を浄めようと存じて湯殿へ顔を洗いにまいって、

など

(もどってみればじゅうじゅうふらちなやつ、わたしのねどこのしたにてをいれて、どうまきを)

戻ってみれば重々不埒な奴、わたしの寝床の下に手を入れて、胴巻を

(ぬすみだそうといたしておった。しょせんたすけられぬとすぐてうちにいたした」)

ぬすみ出そうと致しておった。所詮助けられぬとすぐ手討ちにいたした」

(しちぞうのてにははたしてどうまきをつかんでいた。だきおこしてみると、)

七蔵の手には果たして胴巻をつかんでいた。抱き起こしてみると、

(まだいきがかよっているらしいので、はんしちはとりあえずきつけのくすりをふくませた。)

まだ息が通っているらしいので、半七は取りあえず気付けの薬をふくませた。

(おせきにいいつけて、つめたいみずをくんできてのませた。てあてのかいがあって、)

お関に云いつけて、冷たい水を汲んできて飲ませた。手当ての甲斐があって、

(しちぞうはようようにしょうきがついた。)

七蔵はようように正気が付いた。

(「やい、しっかりしろ」と、はんしちはかれのみみにくちをよせていった。)

「やい、しっかりしろ」と、半七は彼の耳に口をよせて云った。

(「てめえ、おれたちまでもいっぱいくわせようとしたな。わるいやつだ。)

「てめえ、おれ達までも一杯食わせようとしたな。悪い奴だ。

(てめえはあのきさぶろうというやつからいくらもらった」)

てめえはあの喜三郎という奴から幾ら貰った」

(「なんにももらわねえ」と、しちぞうはかすかにいった。)

「なんにも貰わねえ」と、七蔵は微かに云った。

(「うそをつけ。てめえはきさぶろうからいくらかわけまえをもらって、しょうちのうえ)

「嘘をつけ。てめえは喜三郎から幾らか分け前を貰って、承知のうえ

(にがしたろう。ここにいるじょちゅうがしょうにんだ。どうだ。まだかくすか」)

逃がしたろう。ここにいる女中が証人だ。どうだ。まだ隠すか」

(しちぞうはだまってくびをうなだれてしまった。)

七蔵は黙って首をうなだれてしまった。

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