半七捕物帳 勘平の死8

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第三話

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問題文

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(「しばいのばんにはおまえさんもむろんけんぶつにいっておいでになったんでしょうね」)

「芝居の晩にはおまえさんも無論見物に行っておいでになったんでしょうね」

(と、はんしちはちょこをおいてきいた。 「はい。けんぶつしておりました」)

と、半七は猪口をおいて訊いた。 「はい。見物して居りました」

(「がくやにはおおぜいつめていたんでしょうね」)

「楽屋には大勢詰めていたんでしょうね」

(「なにしろがくやがせもうございまして、はちじょうにじゅうにんばかり、はなれのよじょうはんにふたり。)

「なにしろ楽屋が狭うございまして、八畳に十人ばかり、離れの四畳半に二人。

(やくしゃになるものはそれだけでしたが、ほかにてつだいがおおぜいで、おまけにいしょうやら)

役者になる者はそれだけでしたが、ほかに手伝いが大勢で、おまけに衣裳やら

(かつらやらがそこらいっぱいで、あしのふみたてられないようなこんざつでございました。)

鬘やらがそこら一ぱいで、足の踏み立てられないような混雑でございました。

(しかしみんなちょうにんばかりでございますから、そこにだいしょうなどのおいてあろうはずは)

しかしみんな町人ばかりでございますから、そこに大小などの置いてあろう筈は

(ないのでございます。さいしょにめいめいのこどうぐをわたされましたときに、)

ないのでございます。最初にめいめいの小道具を渡されました時に、

(かくたろうもいちいちしらべてみましたそうですから、そのときにはけっして)

角太郎も一々調べて見ましたそうですから、その時には決して

(まちがっておりませんので・・・・・・。いよいよぶたいへでるというまぎわに)

間違って居りませんので……。いよいよ舞台へ出るという間ぎわに

(たぶんとりちがったか、すりかえられたか。いったいだれがそんなことをしたのか、)

多分取り違ったか、掏り替えられたか。一体誰がそんなことをしたのか、

(まるでけんとうがつきませんのでこまっております」 「なるほど」)

まるで見当が付きませんので困って居ります」 「なるほど」

(はんしちはほとんどちょこをそのままにしてうでをくんでいた。じゅうえもんもだまって)

半七は殆ど猪口をそのままにして腕を拱んでいた。十右衛門も黙って

(じぶんのひざのうえをながめていた。いっぴきのはえがしょうじのかみをいそがしそうにわたってゆく)

自分の膝の上を眺めていた。一匹の蠅が障子の紙を忙しそうに渡ってゆく

(あしおとがかすかにひびいた。)

跫音が微かに響いた。

(「わかだんなははちじょうにいたんですか、よじょうはんのほうですか」)

「若旦那は八畳にいたんですか、四畳半の方ですか」

(「よじょうはんのほうにおりました。しょうはち、ちょうじろう、わきちというみせのものといっしょに)

「四畳半の方におりました。庄八、長次郎、和吉という店の者と一緒に

(おりました。しょうはちはいしょうのてつだいをして、ちょうじろうはゆやちゃのせわを)

居りました。庄八は衣裳の手伝いをして、長次郎は湯や茶の世話を

(していたようでした。わきちはやくしゃでございまして、せんざきやごろうを)

していたようでした。和吉は役者でございまして、千崎弥五郎を

(つとめておりました」)

勤めて居りました」

など

(「それから、おかしなことをうかがうようですが、わかだんなはしばいのほかになにか)

「それから、おかしなことを伺うようですが、若旦那は芝居のほかに何か

(どうらくはありましたかえ」と、はんしちはきいた。)

道楽はありましたかえ」と、半七は訊いた。

(ごしょうぎのたぐいのしょうぶごとはきらいである、おんなどうらくのうわさもきいたことがないと、)

碁将棋のたぐいの勝負事は嫌いである、女道楽の噂も聞いたことがないと、

(じゅうえもんはこたえた。 「およめさんのうわさもまだないんですね」)

十右衛門は答えた。 「お嫁さんの噂もまだ無いんですね」

(「それはうちうちできまっておりますので」と、じゅうえもんはなんだかめいわくそうに)

「それは内々できまって居りますので」と、十右衛門はなんだか迷惑そうに

(いった。「こうなればなにもかももうしあげますが、じつはなかばたらきのおふゆというおんなに)

云った。「こうなれば何もかも申し上げますが、実は仲働きのお冬という女に

(てをつけまして・・・・・・。もっともそのおんなはきりょうもよし、きだてもわるくないものですから、)

手をつけまして……。尤もその女は容貌も好し、気立ても悪くない者ですから、

(いっそせけんにしられないうちにそうとうのかりおやでもこしらえて、よめのひろうを)

いっそ世間に知られないうちに相当の仮親でもこしらえて、嫁の披露を

(してしまったほうがよいかもしれないなどと、おやたちもないないそうだんして)

してしまった方が好いかも知れないなどと、親達も内々相談して

(おりましたのですが、おもいもつかないこんなことになってしまいまして、)

居りましたのですが、思いもつかない斯んなことになってしまいまして、

(つまりりょうほうのうんがわるいのでございます」)

つまり両方の運が悪いのでございます」

(このこいものがたりにはんしちはみみをかたむけた。)

この恋物語に半七は耳をかたむけた。

(「そのおふゆというのはいくつで、どこのものです」 「としはじゅうしちで、しながわのものです」)

「そのお冬というのは幾つで、どこの者です」 「年は十七で、品川の者です」

(「どうでしょう、そのおふゆというおんなにもちょいとあわしてもらうわけには)

「どうでしょう、そのお冬という女にもちょいと逢わして貰うわけには

(まいりますまいか」)

参りますまいか」

(「なにしろとしはわこうございますし、かくたろうがふいにあんなことに)

「なにしろ年は若うございますし、角太郎が不意にあんなことに

(なりましたので、まるできぬけがしたようにぼんやりしておりますから、)

なりましたので、まるで気抜けがしたようにぼんやりして居りますから、

(とてもとりとめたごあいさつなどはできますまいが、おのぞみならいつでも)

とても取り留めた御挨拶などは出来ますまいが、お望みならいつでも

(おあわせもうします」)

お逢わせ申します」

(「なるたけはやいがようございますから、おさしつかえがなければ、これから)

「なるたけ早いがようございますから、お差し支えがなければ、これから

(すぐにごあんないをねがえますか」 「しょうちいたしました」)

すぐに御案内を願えますか」 「承知いたしました」

(ふたりはめしをくってしまったら、すぐいずみやへでむくことにそうだんをきめた。)

二人は飯を食ってしまったら、すぐ和泉屋へ出向くことに相談をきめた。

(じゅうえもんがまちかねててをならしたときに、あつらえのうなぎをようようはこんできた。)

十右衛門が待ちかねて手を鳴らした時に、あつらえの鰻をようよう運んで来た。

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