半七捕物帳 勘平の死12

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問題文
(「ええ、うるせえ。なにをしやがるんだ。てめえたちのようなはりつけやろうの)
「ええ、うるせえ。何をしやがるんだ。てめえ達のような磔刑野郎の
(おせわになるんじゃねえ。やい、やい、なんでひとのつらをにらみやがるんだ。)
お世話になるんじゃねえ。やい、やい、なんで他の面を睨みやがるんだ。
(てめえたちもしっているんだろう。はりつけになるやつははだかうまにのせられて、)
てめえ達も知っているんだろう。磔刑になる奴は裸馬に乗せられて、
(えどじゅうをひきまわしになるんだ。それからすずがもりかこづかっぱらでたかいきのうえへ)
江戸じゅうを引き廻しになるんだ。それから鈴ヶ森か小塚ッ原で高い木の上へ
(しばりつけられると、つきてがりょうほうからやりをしごいて、とがにんのめのさきへ)
縛り付けられると、突手が両方から槍をしごいて、科人の眼のさきへ
(つきつけて、ありゃありゃとこえをかける。それをみせやりというんだ、)
突き付けて、ありゃありゃと声をかける。それを見せ槍というんだ、
(よくおぼえておけ。みせやりがすむと、こんどはほんとうにみぎとひだりのわきのしたを)
よく覚えておけ。見せ槍が済むと、今度はほんとうに右と左の脇の下を
(なんべんもずぶりずぶりつくんだ」)
何遍もずぶりずぶり突くんだ」
(このおそろしいけいばつのせつめいをきくにたえないように、じゅうえもんはかおをしかめた。)
この恐ろしい刑罰の説明を聞くに堪えないように、十右衛門は顔をしかめた。
(わきちもまっさおになった。ほかのものもみないきをのんで、いいしれぬきょうふに)
和吉も真っ蒼になった。ほかの者もみな息を嚥んで、云い知れぬ恐怖に
(みをすくめていた。どのひとも、しのせんこくをうけたように、またたきもしないで)
身をすくめていた。どの人も、死の宣告を受けたように、眼たたきもしないで
(しばしはちんもくをつづけていた。)
少時は沈黙をつづけていた。
(ふゆのそらはあおあおとはれて、おもてのおうらいにはあかるいひのひかりがみちていた。)
冬の空は青々と晴れて、表の往来には明るい日のひかりが満ちていた。
(はんしちはとうとうそこによいたおれてしまった。みせのまんなかにねそべって)
四 半七はとうとうそこに酔い倒れてしまった。店のまん中に寝そべって
(いられてははなはだめいわくだとはおもったが、だれもうかつにさわることはできなかった。)
いられては甚だ迷惑だとは思ったが、誰も迂闊にさわることは出来なかった。
(「まあ、しかたがない。ちっとのあいだ、そうしておくがいい」)
「まあ、仕方がない。ちっとの間、そうして置くが好い」
(じゅうえもんはおくへはいって、しゅじんふうふとなにかはなしていた。みせのものは)
十右衛門は奥へはいって、主人夫婦と何か話していた。店のものは
(おもいおもいにじぶんのうけもちのようむきにとりかかった。やがてこはんときも)
思い思いに自分の受け持ちの用向きに取りかかった。やがて小半時も
(たったかとおもうと、いままでねむっているようにみせかけていたはんしちは、)
経ったかと思うと、今まで眠っているように見せかけていた半七は、
(にわかにおきあがった。)
俄かに起き上がった。
(「ああ、よった。だいどころへいってみずでものんでこよう。なに、おかまいなさるな。)
「ああ、酔った。台所へ行って水でも飲んで来よう。なに、おかまいなさるな。
(わっしがじぶんでいきます」)
わっしが自分で行きます」
(はんしちはだいどころへいかずにまっすぐにおくへまわった。なかにわのえんから)
半七は台所へ行かずにまっすぐに奥へまわった。中庭の縁から
(ひらりととびおりて、おおきいなんてんのはのかげにかえるのようにはらばってかくれていた。)
ひらりと飛び降りて、大きい南天の葉の蔭に蛙のように腹這って隠れていた。
(それからすこしまをおいて、わきちのすがたがおなじくこのえんさきにあらわれた。)
それから少し間を置いて、和吉の姿がおなじくこの縁先にあらわれた。
(かれはぬきあしをしながらよじょうはんのしょうじのまえにしのびよって、うちのようすを)
彼は抜き足をしながら四畳半の障子の前に忍び寄って、内の様子を
(うかがっているらしかった。やがてかれがそっとしょうじをあけたとき、なんてんのかげから)
窺っているらしかった。やがて彼がそっと障子をあけた時、南天の蔭から
(はんしちがかおをだした。)
半七が顔を出した。
(しょうじのうちではおとこのうるんだこえがきこえた。そのこえがあまりにひくいので、)
障子の内では男のうるんだ声がきこえた。その声があまりに低いので、
(はんしちにはよくききとれなかった。しまいにはじれったくなったので、)
半七にはよく聴き取れなかった。しまいには焦れったくなったので、
(かれはそろそろとかくればしょからぬけだして、どろぼうねこのようにえんにはいあがった。)
彼はそろそろと隠れ場所から抜け出して、泥坊猫のように縁に這い上がった。
(わきちのこえはやはりひくかった。しかもなみだにふるえているらしかった。)
和吉の声はやはり低かった。しかも涙にふるえているらしかった。