半七捕物帳 槍突き10

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岡本綺堂 半七捕物帳シリーズ 第18話

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問題文

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(「そのりょうしはなんというおとこで、てめえはどうしてしっているんだ」)

「その猟師はなんという男で、てめえはどうして識っているんだ」

(「なまえはさくさんといっています。たしかさくべえというんでしょう」と、)

「名前は作さんと云っています。たしか作兵衛と云うんでしょう」と、

(ちょうざぶろうはいった。「わたくしがさくさんとこんいになったのは、このつきのはじめに)

長三郎は云った。「わたくしが作さんと懇意になったのは、この月の初めに

(おやかたのつかいで、ももんじいをすこしばかりないしょでかいにいったときに、さくさんは)

親方の使いで、猪肉を少しばかり内証で買いに行ったときに、作さんは

(みせにこしをかけていて、おたがいにふたことみことあいさつしたのがはじめてです。)

店に腰をかけていて、おたがいに二タ言三言挨拶したのが初めてです。

(それからに、さんにちたって、わたくしがよいのくちによこあみのかしをとおると、)

それから二、三日経って、わたくしが宵の口に横網の河岸を通ると、

(かたがわのたけやぶのなかへさくさんがはいっていこうとするところで、いまそこできつねを)

片側の竹藪のなかへ作さんがはいって行こうとするところで、今そこで狐を

(いっぴきみつけたからおっかけていこうとするんだといいました」)

一匹見つけたから追っかけて行こうとするんだと云いました」

(「きつねはつかまえたのか」と、しちべえはきいた。)

「狐はつかまえたのか」と、七兵衛は訊いた。

(「わたくしとはなしているうちに、もうとおくへにげてしまったから)

「わたくしと話しているうちに、もう遠くへ逃げてしまったから

(だめだといってやめました」)

駄目だと云ってやめました」

(「そのりょうしにはばくちでいくらばかりとられた」)

「その猟師には博奕で幾らばかり取られた」

(「わたしらのこばくちですからたかがしひゃくかごひゃくで、いっかんとまとまったことは)

「わたしらの小博奕ですから多寡が四百か五百で、一貫と纏まったことは

(ありません。それでもほかのものからいくらかずつとっていますから、とうにんの)

ありません。それでもほかの者から幾らかずつ取っていますから、当人の

(ふところにはそうとうはいっているかもしれません。ふしぎにじょうずなんですから」)

ふところには相当はいっているかも知れません。不思議に上手なんですから」

(「まいばんばくちをうつのか」)

「毎晩博奕をうつのか」

(「わたしらはまいばんじゃありません。でもさくさんはたいていまいばんどこかへ)

「わたしらは毎晩じゃありません。でも作さんは大抵毎晩どこかへ

(でていくようです。やまのてにもちいさいとばがたくさんあるそうですから、)

出て行くようです。山の手にも小さい賭場がたくさんあるそうですから、

(おおかたそこへいくんでしょう」)

大方そこへ行くんでしょう」

(「よし、わかった。てめえもいろいろのことをおしえてくれた。そのごほうびに)

「よし、判った。てめえもいろいろのことを教えてくれた。その御褒美に

など

(おじひをねがってやるぞ」 「ありがとうございます」)

御慈悲をねがってやるぞ」 「ありがとうございます」

(ちょうざぶろうはすぐてんまちょうへおくられた。しちべえはこんどのじけんにかんけいのあるいわぞう、)

長三郎はすぐ伝馬町へ送られた。七兵衛は今度の事件に関係のある岩蔵、

(たみじろう、とらしちのさんにんをよんで、ほんじょのきちんやどにとまっているこうしゅうのりょうしを)

民次郎、寅七の三人を呼んで、本所の木賃宿に泊っている甲州の猟師を

(めしとれといいつけた。)

召捕れと云いつけた。

(「だが、おやぶん。りょうしがなんだってそんなまねをするんでしょう」と、いわぞうは)

「だが、親分。猟師がなんだってそんな真似をするんでしょう」と、岩蔵は

(ふにおちないようにまゆをよせた。)

腑に落ちないように眉をよせた。

(「そりゃあおれにもわからねえ」と、しちべえもくびをふってみせた。「だが、)

「そりゃあ俺にもわからねえ」と、七兵衛も首をふってみせた。「だが、

(やりつきはそのりょうしにそういねえとおもう。おれがこのあいだのばん、やなぎはらのどてで)

槍突きはその猟師に相違ねえと思う。俺がこの間の晩、柳原の堤で

(つかれそくなったときに、そいつのやりのえをちょいとつかんだが、そのてざわりが)

突かれそくなった時に、そいつの槍の柄をちょいと摑んだが、その手触りが

(ほんとうのかしじゃあねえ。たしかにたけのようにおもった。してみると、やりつきは)

ほんとうの樫じゃあねえ。たしかに竹のように思った。してみると、槍突きは

(ほんみのやりでなしに、たけやりをもちだしてくるんだ。じゅうだんめのみつひでじゃあるめえし、)

本身の槍で無しに、竹槍を持ち出して来るんだ。十段目の光秀じゃあるめえし、

(さむらいがたけやりをもちだすはずがねえ。こりゃあきっとちょうにんかひゃくしょう、たぶんひゃくしょうのしわざ)

侍が竹槍を持ち出す筈がねえ。こりゃあきっと町人か百姓、多分百姓の仕業

(だろうとにらんだが、おなじたけやりをまいばんかついであるいているきづけえはねえ。)

だろうと睨んだが、おなじ竹槍を毎晩かついで歩いている気づけえはねえ。

(だいいち、ひるまそのやりのしまつにこまるから、やりはそのときぎりでどこへか)

第一、昼間その槍の始末に困るから、槍はその時ぎりで何処へか

(すててしまって、つきにでるときにはあたらしいたけをきりだしてくるんだろうと)

捨ててしまって、突きに出る時には新しい竹を伐り出して来るんだろうと

(おもったから、たみやとらにいいつけて、そこらのたけやぶをみはらせていると、)

思ったから、民や寅に云い付けて、そこらの竹藪を見張らせていると、

(あんのとおりそいつがよこあみがしのたけやぶへもぐりこもうとするところを、こうやのちょうざぶろうが)

案の通りそいつが横網河岸の竹藪へ潜り込もうとするところを、紺屋の長三郎が

(みつけたというじゃあねえか。きつねをつかまえるなんていうのはうそのかわだ。)

見つけたというじゃあねえか。狐をつかまえるなんていうのは嘘の皮だ。

(もうひとつにはやなぎはらでおれについてきたうでまえがなかなかひゃくしょうのししつきやり)

もう一つには柳原でおれに突いて来た腕前がなかなか百姓の猪突き槍

(らしくねえ。ほさきがくうをながれずにまともにしたへしたへとつきおろしてきたぐあいが、)

らしくねえ。穂さきが空を流れずに真面に下へ下へと突きおろして来た工合が、

(ひゃくしょうにしてはちっとできすぎるとおれもじつはふしぎにおもっていたが、りょうしとは)

百姓にしてはちっと出来過ぎるとおれも実は不思議に思っていたが、猟師とは

(ちょいときがつかなかった。あのやろう、くまやおおかみをつくりょうけんでにんげんを)

ちょいと気がつかなかった。あの野郎、熊や狼を突く料簡で人間を

(ずぶずぶやりゃがるんだからおそろしい。さあ、こうたねがあがったら)

ずぶずぶ遣りゃがるんだから怖ろしい。さあ、こう種があがったら

(かんがえることはねえ。すぐにいってひきあげてしまえ」)

考えることはねえ。すぐに行って引き挙げてしまえ」

(「わかりました。ようがす」 さんにんはいきおいこんでばらばらとたった。)

「判りました。ようがす」 三人は勢い込んでばらばらと起った。

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