『妖怪博士』江戸川乱歩31
○少年探偵団シリーズ第3作品『妖怪博士』
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順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | berry | 6845 | S++ | 7.0 | 96.9% | 652.3 | 4608 | 143 | 100 | 2024/10/07 |
2 | もち | 5195 | B+ | 5.4 | 95.5% | 865.1 | 4717 | 222 | 100 | 2024/11/17 |
3 | tana | 4501 | C++ | 4.6 | 96.0% | 1000.8 | 4696 | 191 | 100 | 2024/11/10 |
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問題文
(「あけちくん、ひさしぶりだったねえ。おれがいきていよう)
「明智君、久しぶりだったねえ。おれが生きていよう
(とは、さすがのきみもいがいだったろう。まじゅつしの)
とは、さすがのきみも意外だったろう。魔術師の
(うでまえはざっとこんなものさ。ところでこんやは、きみの)
腕前はザッとこんなものさ。ところで今夜は、きみの
(せいでさんざんなめにあわされたね。ざんねんだが、おれの)
せいで散々な目にあわされたね。残念だが、おれの
(まけとしておこう。だがさいごのどたんばで、きみは)
負けとしておこう。だが最後の土壇場で、きみは
(あっけなくえものをとりにがしてしまったじゃないか。)
呆気なく獲物を取りにがしてしまったじゃないか。
(あけちくん、これまでのところは、おれのふくしゅうじぎょうの)
明智君、これまでのところは、おれの復讐事業の
(じょまくにすぎないのだ。これから、ほんとうにおそろしい)
序幕に過ぎないのだ。これから、本当に恐ろしい
(ことがはじまるのだ。きみもこばやしも、それからたんていだんの)
ことが始まるのだ。きみも小林も、それから探偵団の
(ちんぴらどもも、くびをあらってまっているがいい。)
チンピラどもも、首を洗って待っているがいい。
(いまに、おれのちえのおそろしさをたんのうさせてやるから。)
今に、おれの知恵の恐ろしさを堪能させてやるから。
(いきているにじゅうめんそうより」ああ、やっぱりめいたんていの)
生きている二十面相より」ああ、やっぱり名探偵の
(すいりはまちがっていなかったのです。それをいちはやく)
推理は間違っていなかったのです。それをいち早く
(みぬいて、せんてをうってなのりでたにじゅうめんそうも、)
見抜いて、先手を打って名乗り出た二十面相も、
(さすがではありませんか。このらいばるは、たがいに)
さすがではありませんか。このライバルは、互いに
(そのしんじゅうのひみつを、てにとるようによみあっていた)
その心中の秘密を、手に取るように読み合っていた
(のです。つかいのうんてんしゅは、そのばからけいしちょうに)
のです。 使いの運転手は、その場から警視庁に
(れんこうされ、げんじゅうなとりしらべをうけましたが、ただ)
連行され、厳重な取り調べを受けましたが、ただ
(みちでであったきたないじいさんからせんえんのしゃれいを)
道で出会った汚いじいさんから千円の謝礼を
(もらって、なにもしらずにてがみをとどけただけという)
もらって、何も知らずに手紙を届けただけという
(ことがわかりました。かくして、めいたんていとかいとうの)
ことが分かりました。 かくして、名探偵と怪盗の
(ちえくらべのたたかいは、いよいよほんぶたいにはいりました。)
知恵比べの戦いは、いよいよ本舞台に入りました。
(しょうたいをあらわしたにじゅうめんそうは、つぎにどんなおそろしい)
正体を現した二十面相は、次にどんな恐ろしい
(わるだくみをするのでしょう。ああ、なんだか、)
悪だくみをするのでしょう。ああ、なんだか、
(しょうねんたんていだんいんたちのみのうえが、きづかわれるでは)
少年探偵団員たちの身の上が、気づかわれるでは
(ありませんか。ぜんかいのできごとがあってからすうじつごの、)
ありませんか。 前回の出来事があってから数日後の、
(あるゆうがたのことでした。しょうねんたんていだんいんのひとり、)
ある夕方のことでした。少年探偵団員の一人、
(こいずみのぶおというしょうがくろくねんせいのしょうねんが、がっこうからの)
小泉信雄という小学六年生の少年が、学校からの
(かえりみち、ひとりでしぶやにあるちいさなこうえんのなかをとおり)
帰り道、一人で渋谷にある小さな公園の中を通り
(かかりました。こいずみくんは、がっこうのやきゅうちーむのせんしゅ)
かかりました。 小泉君は、学校の野球チームの選手
(なものですから、そのれんしゅうでこんなにかえりがおそく)
なものですから、その練習でこんなに帰りが遅く
(なったのです。ちょうどゆうはんどきなのと、もうひとの)
なったのです。 ちょうど夕飯時なのと、もう人の
(かおもみわけられないほどうすぐらくなっているので、)
顔も見分けられないほど薄暗くなっているので、
(ちいさなこうえんのなかはひじょうにさびしく、いつもはおさない)
小さな公園の中は非常に寂しく、いつもは幼い
(こどもでうじゃうじゃしているすべりだいやすなばにも、)
子どもでウジャウジャしている滑り台や砂場にも、
(ひとのかげさえみえません。こいずみくんは、そのこうえんがちかみち)
人の影さえ見えません。 小泉君は、その公園が近道
(なものですから、まいにちとおりぬけるのですが、こんなに)
なものですから、毎日通り抜けるのですが、こんなに
(さびしいのははじめてでした。あのおおぜいのこどもたちは、)
寂しいのは初めてでした。あの大勢の子どもたちは、
(どこにかくれてしまったのだろうと、ふしぎにおもわれる)
どこに隠れてしまったのだろうと、不思議に思われる
(ほどでした。ところが、こうえんのなかほどまであるいて)
ほどでした。 ところが、公園の中ほどまで歩いて
(いくと、そこのぶらんこのまえにごさいぐらいの、)
行くと、そこのブランコの前に五歳ぐらいの、
(おかっぱのおんなのこがつったったまま、りょうてをめに)
おかっぱの女の子が突っ立ったまま、両手を目に
(あてて、しくしくないているのがめにはいりました。)
あてて、シクシク泣いているのが目に入りました。
(ひとっこひとりいないうすぐらいなか、おいてけぼりにでも)
人っ子一人いない薄暗い中、置いてけぼりにでも
(あったように、とてもさびしそうにないているおんなのこを)
あったように、とても寂しそうに泣いている女の子を
(みると、なんだかかわいそうでたまりませんでした。)
見ると、なんだか可哀想でたまりませんでした。
(こいずみくんはつかつかとそのそばによって、おんなのこのかたに)
小泉君はツカツカとそのそばに寄って、女の子の肩に
(てをかけ、そのかわいらしいかおをのぞきこみながら、)
手をかけ、その可愛らしい顔をのぞきこみながら、
(こえをかけました。「どうしたの。なぜないているの」)
声をかけました。「どうしたの。なぜ泣いているの」
(するとおんなのこは、めにあてていたりょうてをはなして、)
すると女の子は、目に当てていた両手を離して、
(ぱっちりとした、おにんぎょうのようなめでこいずみくんを)
パッチリとした、お人形のような目で小泉君を
(みあげ、なきじゃくりながら「おうちが)
見上げ、泣きじゃくりながら「おうちが
(わかんないの」と、かすかにこたえるのです。「ああ、)
分かんないの」と、かすかに答えるのです。「ああ、
(まいごなんだね。きみひとりで、こんなところにきたのかい。)
迷子なんだね。きみ一人で、こんな所に来たのかい。
(それとも、だれかといっしょだったの」「おじちゃんが)
それとも、だれかと一緒だったの」「おじちゃんが
(いなくなったの」「ああ、おじさんといっしょにきて、)
いなくなったの」「ああ、おじさんと一緒に来て、
(どっかではぐれてしまったんだね。こまったなあ。)
どっかではぐれてしまったんだね。困ったなあ。
(きみんちは、いったいどこなの。とおいの」「ずーっと)
きみんちは、一体どこなの。遠いの」「ズーッと
(あっちなの。あたち、わかんないの」おんなのこは、)
あっちなの。あたち、分かんないの」女の子は、
(もつれるしたでそういって、またしくしくなきはじめ)
もつれる舌でそう言って、またシクシク泣き始め
(ました。こんなおさないこどもにいくらたずねても、)
ました。こんな幼い子どもにいくらたずねても、
(じゅうしょがいえるはずはありません。こいずみくんはこまって)
住所が言えるはずはありません。小泉君は困って
(しまいましたが、もしやれんらくさきがきさいされたふだを)
しまいましたが、もしや連絡先が記載された札を
(つけてはいないかと、ふときがついて、おんなのこのからだを)
付けてはいないかと、ふと気がついて、女の子の体を
(みまわすと、うまいぐあいにえぷろんのわきのしたのところに、)
見まわすと、上手い具合にエプロンの脇の下の所に、
(ちいさなぎんいろのめだるのようなものがぶらさがっていて、)
小さな銀色のメダルのような物がぶら下がっていて、
(それに「せたがやくいけじりちょうにひゃくにじゅう、のざわあいこ」と、)
それに「世田谷区池尻町二百二十、野沢愛子」と、
(かいてあるのをはっけんしました。「いけじりちょうならかんたんだ。)
書いてあるのを発見しました。「池尻町なら簡単だ。
(でんしゃにのれば、じゅっぷんもかからないでいけるよ。よし、)
電車に乗れば、十分もかからないで行けるよ。よし、
(ぼくがおくっていってあげよう。きみのかぞくが、)
ぼくが送っていってあげよう。きみの家族が、
(どれほどしんぱいしているか、わかったもんじゃない)
どれほど心配しているか、分かったもんじゃない
(からね」こいずみくんははんぶんひとりごとのようにつぶやくと、)
からね」小泉君は半分独り言のようにつぶやくと、
(おんなのこのてをひいていそいでこうえんをでて、ちかくの)
女の子の手を引いて急いで公園を出て、近くの
(ていりゅうじょうへいそぎました。これがしょうねんたんていだんのせいしん)
停留場へ急ぎました。 これが少年探偵団の精神
(なのです。はんざいしゃとのみたたかうのではなく、とくいの)
なのです。犯罪者とのみ戦うのではなく、得意の
(たんていがんをりようして、すこしでもせけんのためになること)
探偵眼を利用して、少しでも世間のためになること
(ならよろこんではたらくというのが、だんいんたちのひごろのこころざし)
なら喜んで働くというのが、団員たちの日頃の志
(なのでした。いけじりちょうのていりゅうじょうででんしゃをおりて)
なのでした。 池尻町の停留場で電車を降りて
(にひゃくにじゅうばんちをさがすと、あいこちゃんのおうちは)
二百二十番地を探すと、愛子ちゃんのおうちは
(ぞうさもなくわかりました。そのきんぺんはいけがきで)
造作もなく分かりました。その近辺は生け垣で
(かこまれた、にわのひろいていたくがならんでいる、さびしいまち)
囲まれた、庭の広い邸宅が並んでいる、寂しい町
(でしたが、そのいけがきにはさまれてたかいへいをめぐらした)
でしたが、その生け垣に挟まれて高い塀をめぐらした
(ようかんのもんに、のざわというひょうさつがでていたのでした。)
洋館の門に、野沢という表札が出ていたのでした。
(あいこちゃんは、「ここよ。ここ、あたちのおうちよ」)
愛子ちゃんは、「ここよ。ここ、あたちのおうちよ」
(とさけぶと、こいずみくんのてをひっぱって、おおよろこびでもんの)
と叫ぶと、小泉君の手を引っ張って、大喜びで門の
(なかへかけこみました。もんをくぐると、さしてりっぱな)
中へ駆け込みました。門をくぐると、さして立派な
(たてものではありませんが、それでもなかなかにおおきい、)
建物ではありませんが、それでもなかなかに大きい、
(もくぞうのようかんがたっていました。あいこちゃんがうれしさの)
木造の洋館が建っていました。愛子ちゃんが嬉しさの
(あまり、おおきなこえをたてたものですから、おうちの)
あまり、大きな声をたてたものですから、おうちの
(ひとがはやくもきづいたとみえて、げんかんのどあがひらく)
人が早くも気づいたとみえて、玄関のドアがひらく
(と、そこからごじゅっさいぐらいの、あごひげのあるりっぱな)
と、そこから五十歳ぐらいの、あごヒゲのある立派な
(しんしのかおがあらわれました。それをみるやいなや)
紳士の顔が現れました。 それを見るやいなや
(あいこちゃんは、「おじちゃん」とさけんで、いきなり)
愛子ちゃんは、「おじちゃん」と叫んで、いきなり
(しんしのむねにとびつきました。きっと、このひとといっしょに)
紳士の胸に飛び付きました。きっと、この人と一緒に
(いて、そのご、まいごになってしまったのでしょう。)
いて、そのご、迷子になってしまったのでしょう。
(「おお、あいこちゃん、よくかえってきたね。)
「おお、愛子ちゃん、よく帰ってきたね。
(おじちゃんが、どんなにしんぱいしていたか、)
おじちゃんが、どんなに心配していたか、
(わかるかい」しんしはそういって、おんなのこのあたまをなでて)
分かるかい」紳士はそう言って、女の子の頭をなでて
(いましたが、ふとそこにこいずみくんがたっているのに)
いましたが、ふとそこに小泉君が立っているのに
(きづくと、にこにこしてこえをかけました。)
気づくと、ニコニコして声をかけました。