紫式部 源氏物語 帚木 3 與謝野晶子訳

背景
投稿者投稿者文吾いいね1お気に入り登録
プレイ回数207難易度(4.5) 3392打 長文 長文モードのみ
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 7479 7.6 97.4% 436.0 3348 87 49 2024/10/23
2 おもち 7302 7.6 95.1% 440.7 3390 172 49 2024/09/26
3 だだんどん 6184 A++ 6.7 92.7% 499.8 3354 263 49 2024/10/31
4 BEASTななせ 5998 A+ 6.4 93.4% 532.0 3430 239 49 2024/11/13
5 りつ 4093 C 4.3 94.4% 795.9 3460 202 49 2024/09/26

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(こんなふうなつうなさまのかみにもけっていてきなことはいえないとみえて、)

こんなふうな通な左馬頭にも決定的なことは言えないと見えて、

(ふかいためいきをした。 「ですからもうかいきゅうもなにもいいません。)

深い嘆息をした。 「ですからもう階級も何も言いません。

(きりょうもどうでもいいとします。かたよったせいしつでさえなければ、まじめで)

容貌もどうでもいいとします。片よった性質でさえなければ、まじめで

(すなおなひとをつまにすべきだとおもいます。そのうえにすこしけんしきでもあれば、)

素直な人を妻にすべきだと思います。その上に少し見識でもあれば、

(まんぞくしてすこしのけってんはあってもよいことにするのですね。あんしんのできるてんが)

満足して少しの欠点はあってもよいことにするのですね。安心のできる点が

(おおければ、しゅみのきょういくなどはあとからできるものですよ。じょうひんぶって、)

多ければ、趣味の教育などはあとからできるものですよ。上品ぶって、

(うらみをいわなければならぬときもしらぬかおですませて、ひょうめんはけんじょらしくして)

恨みを言わなければならぬ時も知らぬ顔で済ませて、表面は賢女らしくして

(いても、そんなひとはくるしくなってしまうと、すごもんくやみにしませるうたなどを)

いても、そんな人は苦しくなってしまうと、凄文句や身にしませる歌などを

(かいて、おもいだしてもらえるざいりょうにそれをのこして、とおいこうがいとか、)

書いて、思い出してもらえる材料にそれを残して、遠い郊外とか、

(まったくせけんとはなれたかいがんとかへいってしまいます。こどものときににょうぼうなどが)

まったく世間と離れた海岸とかへ行ってしまいます。子供の時に女房などが

(しょうせつをよんでいるのをきいて、そんなふうのおんなしゅじんこうにどうじょうしたものでしてね、)

小説を読んでいるのを聞いて、そんなふうの女主人公に同情したものでしてね、

(りっぱなたいどだとなみだまでもこぼしたものです。いまおもうとそんなおんなのやりかたは)

りっぱな態度だと涙までもこぼしたものです。今思うとそんな女のやり方は

(けいちょうで、わざとらしい。じぶんをあいしていたおとこをすてておいて、そのさいに)

軽佻で、わざとらしい。自分を愛していた男を捨てて置いて、その際に

(ちょっとしたうらめしいことがあっても、おとこのあいをしんじないようにいえをでたり)

ちょっとした恨めしいことがあっても、男の愛を信じないように家を出たり

(などして、むようのしんぱいをかけて、そうしておとこをためそうとしているうちに)

などして、無用の心配をかけて、そうして男をためそうとしているうちに

(とりかえしのならぬはめにいたります。いやなことです。りっぱなたいどだなどと)

取り返しのならぬはめに至ります。いやなことです。りっぱな態度だなどと

(ほめたてられると、ずにのってどうかするとあまなんかにもなります。)

ほめたてられると、図に乗ってどうかすると尼なんかにもなります。

(そのときはきたないみれんはもたずに、すっかりれんあいをせいさんしたきでいますが、)

その時はきたない未練は持たずに、すっかり恋愛を清算した気でいますが、

(まあかなしい、こんなにまであきらめておしまいになってなどと、しったひとが)

まあ悲しい、こんなにまであきらめておしまいになってなどと、知った人が

(ほうもんしていい、しんそこからにくくはなっていないおとこが、それをきいてないたという)

訪問して言い、真底から憎くはなっていない男が、それを聞いて泣いたという

など

(はなしなどがきこえてくると、めしつかいやふるいにょうぼうなどが、とのさまはあんなにあなたを)

話などが聞こえてくると、召使や古い女房などが、殿様はあんなにあなたを

(おもっていらっしゃいますのに、わかいおからだをあまになどしておしまいになって)

思っていらっしゃいますのに、若いおからだを尼になどしておしまいになって

(おしい。こんなことをいわれるとき、みじかくしてうしろずきにしてしまったひたいがみに)

惜しい。こんなことを言われる時、短くして後ろ梳きにしてしまった額髪に

(てがいって、こころぼそいきになるとしぜんにものおもいをするようになります。)

手が行って、心細い気になると自然に物思いをするようになります。

(しのんでももうなみだをいちどながせばあとはしじゅうなくことになります。みでし)

忍んでももう涙を一度流せばあとは始終泣くことになります。御弟子に

(なったうえでこんなことではほとけさまもみれんをおにくみになるでしょう。ぞくであった)

なった上でこんなことでは仏様も未練をお憎みになるでしょう。俗であった

(ときよりもそんなつみはふかくて、かえってじごくへもおちるようにおもわれます。)

時よりもそんな罪は深くて、かえって地獄へも落ちるように思われます。

(またふうふのえんがきれずに、あまにはならずに、おっとにつれもどされてきても、)

また夫婦の縁が切れずに、尼にはならずに、良人に連れもどされて来ても、

(じぶんをすてていえでをしたつまであることをおっとにわすれてもらうことは)

自分を捨てて家出をした妻であることを良人に忘れてもらうことは

(むずかしいでしょう。わるくてもよくてもいっしょにいて、どんなときもこんなときも)

むずかしいでしょう。悪くてもよくてもいっしょにいて、どんな時もこんな時も

(ゆるしあってくらすのがほんとうのふうふでしょう。いちどそんなことが)

許し合って暮らすのがほんとうの夫婦でしょう。一度そんなことが

(あったあとではしんじつのふうふあいがかえってこないものです。またおとこのあいが)

あったあとでは真実の夫婦愛がかえってこないものです。また男の愛が

(ほんとうにさめているばあいにいえでをしたりすることはおろかですよ。)

ほんとうにさめている場合に家出をしたりすることは愚かですよ。

(こいはなくなっていてもつまであるからとおもっていっしょにいてくれたおとこから、)

恋はなくなっていても妻であるからと思っていっしょにいてくれた男から、

(これをきかいにりえんをだんこうされることにもなります。なんでもおだやかにみて、)

これを機会に離縁を断行されることにもなります。なんでも穏やかに見て、

(おとこにほかのこいびとができたときにも、ぜんぜんしらぬかおはせずにかんじょうをきずつけないていどの)

男にほかの恋人ができた時にも、全然知らぬ顔はせずに感情を傷つけない程度の

(うらみをみせれば、それでまたあいをとりかえすことにもなるものです。うわきなしゅうかんは)

怨みを見せれば、それでまた愛を取り返すことにもなるものです。浮気な習慣は

(つましだいでなおっていくものです。あまりにおとこにじゆうをあたえすぎるおんなも、)

妻次第でなおっていくものです。あまりに男に自由を与えすぎる女も、

(おとこにとってはきらくで、そのさいくんのこころがけがかわいくおもわれそうでありますが、)

男にとっては気楽で、その細君の心がけがかわいく思われそうでありますが、

(しかしそれもですね、ほんとうはかんしんのできかねるつまのたいどです。)

しかしそれもですね、ほんとうは感心のできかねる妻の態度です。

(つながれないふねはうきあるくということになるじゃありませんか、ねえ」)

つながれない船は浮き歩くということになるじゃありませんか、ねえ」

(ちゅうじょうはうなずいた。 「げんざいのこいびとで、ふかいあいちゃくをおぼえていながらそのおんなのあいに)

中将はうなずいた。 「現在の恋人で、深い愛着を覚えていながらその女の愛に

(しんようがもてないということはよくない。じしんのあいさえふければおんなのあやふやな)

信用が持てないということはよくない。自身の愛さえ深ければ女のあやふやな

(こころもちもなおしてみせることができるはずだが、どうだろうかね。ほうほうはほかに)

心持ちも直して見せることができるはずだが、どうだろうかね。方法はほかに

(ありませんよ。ながいこころでみていくだけですね」 ととうのちゅうじょうはいって、じぶんのいもうとと)

ありませんよ。長い心で見ていくだけですね」 と頭中将は言って、自分の妹と

(げんじのなかはこれにあたっているはずだとおもうのに、げんじがめをとじたままで)

源氏の中はこれに当たっているはずだと思うのに、源氏が目を閉じたままで

(なにもいわぬのを、ものたらずもくちおしくもおもった。さまのかみはおんなのしなさだめの)

何も言わぬのを、物足らずも口惜しくも思った。左馬頭は女の品定めの

(しんぱんしゃであるというようなとくいなかおをしていた。ちゅうじょうはさまのかみにもっと)

審判者であるというような得意な顔をしていた。中将は左馬頭にもっと

(かたらせたいこころがあってしきりにあいづちをうっているのであった。)

語らせたい心があってしきりに相槌を打っているのであった。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

文吾のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード