紫式部 源氏物語 若紫 3 與謝野晶子訳

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2 kkk 7141 7.4 96.2% 380.6 2828 110 40 2024/11/20
3 BEASTななせ 7021 7.3 95.3% 387.4 2861 141 40 2024/12/21
4 ヤス 6721 S+ 7.0 95.7% 401.7 2824 124 40 2024/11/24
5 だだんどん 6686 S+ 7.1 94.1% 393.8 2808 175 40 2024/11/14

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問題文

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(「りゅうぐうのおうさまのおきさきになるんだね。じそんしんのつよいったらないね。こまりものだ」)

「竜宮の王様のお后になるんだね。自尊心の強いったらないね。困り者だ」

(などとれいひょうするものがあってひとびとはわらっていた。はなしをしたよしきよはげんざいのはりまのかみの)

などと冷評する者があって人々は笑っていた。話をした良清は現在の播磨守の

(むすこで、さきにはろくいのくろうどをしていたが、くらいがいっかいあがってやくからはなれた)

息子で、さきには六位の蔵人をしていたが、位が一階上って役から離れた

(おとこである。ほかのものは、 「こうしょくなおとこなのだから、そのにゅうどうのゆいごんをやぶりうる)

男である。ほかの者は、 「好色な男なのだから、その入道の遺言を破りうる

(じしんをもっているのだろう。それでよくほうもんにいったりするのだよ」)

自信を持っているのだろう。それでよく訪問に行ったりするのだよ」

(ともいっていた。 「でもどうかね、どんなにうつくしいむすめだといわれていても、)

とも言っていた。 「でもどうかね、どんなに美しい娘だといわれていても、

(やはりいなかものらしかろうよ。ちいさいときからそんなところにそだつし、がんこなおやに)

やはり田舎者らしかろうよ。小さい時からそんな所に育つし、頑固な親に

(きょういくされているのだから」 こんなこともいう。)

教育されているのだから」 こんなことも言う。

(「しかしははおやはりっぱなのだろう。わかいにょうぼうやどうじょなど、きょうのよいいえにいた)

「しかし母親はりっぱなのだろう。若い女房や童女など、京のよい家にいた

(ひとなどをなにかのえんこからたくさんよんだりして、たいそうなことをむすめのために)

人などを何かの縁故からたくさん呼んだりして、たいそうなことを娘のために

(しているらしいから、それでただのいなかむすめができあがったらまんぞくしていられない)

しているらしいから、それでただの田舎娘ができ上がったら満足していられない

(わけだから、わたくしなどはむすめもそうとうなかちのあるおんなだろうとおもうね」)

わけだから、私などは娘も相当な価値のある女だろうと思うね」

(だれかがいう。げんじは、 「なぜおきさきにしなければならないのだろうね。)

だれかが言う。源氏は、 「なぜお后にしなければならないのだろうね。

(それでなければじさつさせるというこりかたまりでは、ほかからみてもよいきもちは)

それでなければ自殺させるという凝り固まりでは、ほかから見てもよい気持ちは

(しないだろうとおもう」 などといいながらも、こうきしんがうごかないようでも)

しないだろうと思う」 などと言いながらも、好奇心が動かないようでも

(なさそうである。へいぼんでないことにきょうみをもつせいしつをしっているけいしたちは)

なさそうである。平凡でないことに興味を持つ性質を知っている家司たちは

(げんじのこころもちをそうさっしていた。 「もうくれにちかくなっておりますが、きょうは)

源氏の心持ちをそう察していた。 「もう暮れに近くなっておりますが、今日は

(ごびょうきがおこらないですむのでございましょう。もうきょうへおかえりに)

御病気が起こらないで済むのでございましょう。もう京へお帰りに

(なりましたら」 とじゅうしゃがいったが、てらではしょうにんが、)

なりましたら」 と従者が言ったが、寺では聖人が、

(「もうひとばんしずかにわたくしにかじをおさせになってからおかえりになるのがよろしゅう)

「もう一晩静かに私に加持をおさせになってからお帰りになるのがよろしゅう

など

(ございます」 といった。だれもみなこのせつにさんせいした。げんじもたびでねることは)

ございます」 と言った。だれも皆この説に賛成した。源氏も旅で寝ることは

(はじめてなのでうれしくて、 「ではかえりはあすにのばそう」)

はじめてなのでうれしくて、 「では帰りは明日に延ばそう」

(こういっていた。やまのはるのひはことにながくてつれづれでもあったから、ゆうがたに)

こう言っていた。山の春の日はことに長くてつれづれでもあったから、夕方に

(なって、このやまがうすがすみにつつまれてしまったじこくに、ごぜんにながめたこしばがきの)

なって、この山が淡霞に包まれてしまった時刻に、午前にながめた小柴垣の

(ところへまでげんじはいってみた。ほかのじゅうしゃはてらへかえしてこれみつだけをともにつれて、)

所へまで源氏は行って見た。ほかの従者は寺へ帰して惟光だけを供につれて、

(そのさんそうをのぞくとこのかきねのすぐまえになっているにしむきのざしきにじぶつをおいて)

その山荘をのぞくとこの垣根のすぐ前になっている西向きの座敷に持仏を置いて

(おつとめをするあまがいた。すだれをすこしあげて、そのときにぶつぜんへはながそなえられた。)

お勤めをする尼がいた。簾を少し上げて、その時に仏前へ花が供えられた。

(へやのちゅうおうのはしらにちかくすわって、きょうそくのうえにきょうかんをおいて、びょうくのあるふうで)

室の中央の柱に近くすわって、脇息の上に経巻を置いて、病苦のあるふうで

(それをよむあまはただのあまとはみえない。しじゅうくらいで、いろはひじょうにしろくて)

それを読む尼はただの尼とは見えない。四十くらいで、色は非常に白くて

(じょうひんにやせてはいるがほおのあたりはふっくりとして、めつきのうつくしいのと)

上品に痩せてはいるが頬のあたりはふっくりとして、目つきの美しいのと

(ともに、みじかくきりすててあるかみのすそのそろったのが、かえってながいかみよりもえんな)

ともに、短く切り捨ててある髪の裾のそろったのが、かえって長い髪よりも艶な

(ものであるというかんじをあたえた。きれいなちゅうねんのにょうぼうがふたりいて、そのほかに)

ものであるという感じを与えた。きれいな中年の女房が二人いて、そのほかに

(このざしきをでたりはいったりしてあそんでいるおんなのこどもがいくにんかあった。そのなかに)

この座敷を出たりはいったりして遊んでいる女の子供が幾人かあった。その中に

(とおぐらいにみえて、しろのうえにうすきのやわらかいきものをかさねてむこうからはしって)

十歳ぐらいに見えて、白の上に淡黄の柔らかい着物を重ねて向こうから走って

(きたこは、さっきからなんにんもみたこどもとはいっしょにいうことのできないれいしつを)

来た子は、さっきから何人も見た子供とはいっしょに言うことのできない麗質を

(そなえていた。しょうらいはどんなうつくしいひとになるだろうとおもわれるところがあって、)

備えていた。将来はどんな美しい人になるだろうと思われるところがあって、

(かたのたれがみのすそがおうぎをひろげたようにたくさんでゆらゆらとしていた。かおは)

肩の垂れ髪の裾が扇をひろげたようにたくさんでゆらゆらとしていた。顔は

(ないたあとのようで、てでこすってあかくなっている。あまさんのよこへきてたつと、)

泣いたあとのようで、手でこすって赤くなっている。尼さんの横へ来て立つと、

(「どうしたの、どうじょたちのことでおこっているの」 こういってみあげたかおと)

「どうしたの、童女たちのことで憤っているの」 こう言って見上げた顔と

(すこしにたところがあるので、このひとのこなのであろうとげんじはおもった。)

少し似たところがあるので、この人の子なのであろうと源氏は思った。

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