紫式部 源氏物語 若紫 4 與謝野晶子訳
順位 | 名前 | スコア | 称号 | 打鍵/秒 | 正誤率 | 時間(秒) | 打鍵数 | ミス | 問題 | 日付 |
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1 | berry | 7622 | 神 | 7.7 | 98.0% | 411.0 | 3195 | 62 | 47 | 2024/11/18 |
2 | おもち | 7603 | 神 | 7.8 | 96.6% | 408.9 | 3221 | 112 | 47 | 2024/10/18 |
3 | HAKU | 7531 | 神 | 7.8 | 96.3% | 412.0 | 3226 | 123 | 47 | 2024/10/21 |
4 | subaru | 7480 | 光 | 7.8 | 96.0% | 412.0 | 3214 | 132 | 47 | 2024/10/17 |
5 | kkk | 6410 | S | 6.7 | 95.5% | 479.5 | 3225 | 151 | 47 | 2024/11/21 |
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問題文
(「すずめのこをいぬぎみがにがしてしまいましたの、ふせごのなかにおいてにげないように)
「雀の子を犬君が逃がしてしまいましたの、伏籠の中に置いて逃げないように
(してあったのに」 たいへんざんねんそうである。そばにいたちゅうねんのおんなが、)
してあったのに」 たいへん残念そうである。そばにいた中年の女が、
(「またいつものそそうやさんがそんなことをしておじょうさまにしかられるのですね、)
「またいつもの粗相やさんがそんなことをしてお嬢様にしかられるのですね、
(こまったひとですね。すずめはどちらのほうへまいりました。だいぶなれてきてかわゆう)
困った人ですね。雀はどちらのほうへ参りました。だいぶ馴れてきてかわゆう
(ございましたのに、そとへでてはやまのとりにみつかってどんなめにあわされますか」)
ございましたのに、外へ出ては山の鳥に見つかってどんな目にあわされますか」
(といいながらたっていった。かみのゆらゆらとうごくうしろすがたもかんじのよいおんなである。)
と言いながら立って行った。髪のゆらゆらと動く後ろ姿も感じのよい女である。
(しょうなごんのめのととほかのひとがいっているから、このうつくしいこどもの)
少納言の乳母と他の人が言っているから、この美しい子供の
(せわやくなのであろう。 「あなたはまあいつまでもこどもらしくてこまったかたね。)
世話役なのであろう。 「あなたはまあいつまでも子供らしくて困った方ね。
(わたくしのいのちがもうきょうあすかとおもわれるのに、それはなんともおもわないで、すずめのほうが)
私の命がもう今日明日かと思われるのに、それは何とも思わないで、雀のほうが
(おしいのだね。すずめをかごにいれておいたりすることはほとけさまのおよろこびに)
惜しいのだね。雀を籠に入れておいたりすることは仏様のお喜びに
(ならないことだとわたくしはいつもいっているのに」 とあまぎみはいって、また、)
ならないことだと私はいつも言っているのに」 と尼君は言って、また、
(「ここへ」 というとうつくしいこはしたへすわった。かおつきがひじょうにかわいくて、)
「ここへ」 と言うと美しい子は下へすわった。顔つきが非常にかわいくて、
(まゆのほのかにのびたところ、こどもらしくしぜんにかみがよこなでになっているひたいにも)
眉のほのかに伸びたところ、子供らしく自然に髪が横撫でになっている額にも
(かみのせいしつにも、すぐれたびがひそんでいるとみえた。おとなになったときをそうぞうして)
髪の性質にも、すぐれた美がひそんでいると見えた。大人になった時を想像して
(すばらしいかじんのすがたもげんじのきみはめにえがいてみた。なぜこんなにじぶんのめが)
すばらしい佳人の姿も源氏の君は目に描いてみた。なぜこんなに自分の目が
(このこにひきよせられるのか、それはこいしいふじつぼのみやによくにているからである)
この子に引き寄せられるのか、それは恋しい藤壺の宮によく似ているからである
(ときがついたせつなにも、そのひとへのしぼのなみだがあつくほおをつたわった。あまぎみは)
と気がついた刹那にも、その人への思慕の涙が熱く頬を伝わった。尼君は
(おんなのこのかみをなでながら、 「すかせるのもうるさがるけれどよいかみだね。)
女の子の髪をなでながら、 「梳かせるのもうるさがるけれどよい髪だね。
(あなたがこんなふうにあまりこどもらしいことでわたくしはしんぱいしている。あなたのとしに)
あなたがこんなふうにあまり子供らしいことで私は心配している。あなたの年に
(なればもうこんなふうでないひともあるのに、なくなったおひめさんはじゅうにで)
なればもうこんなふうでない人もあるのに、亡くなったお姫さんは十二で
(おとうさまにわかれたのだけれど、もうそのときにはかなしみもなにもよくわかるひとに)
お父様に別れたのだけれど、もうその時には悲しみも何もよくわかる人に
(なっていましたよ。わたくしがしんでしまったあとであなたがどうなるのだろう」)
なっていましたよ。私が死んでしまったあとであなたがどうなるのだろう」
(あまりになくのですきみをしているげんじまでもかなしくなった。こどもごころにもさすがに)
あまりに泣くので隙見をしている源氏までも悲しくなった。子供心にもさすがに
(じっとしばらくあまぎみのかおをながめいって、それからうつむいた。そのときにひたいから)
じっとしばらく尼君の顔をながめ入って、それからうつむいた。その時に額から
(こぼれかかったかみがつやつやとうつくしくみえた。 )
こぼれかかった髪がつやつやと美しく見えた。
(おいたたんありかもしらぬわかくさをおくらすつゆぞきえんそらなき )
生ひ立たんありかも知らぬ若草をおくらす露ぞ消えんそらなき
(ひとりのちゅうねんのにょうぼうがかんどうしたふうでなきながら、 )
一人の中年の女房が感動したふうで泣きながら、
(はつくさのおいゆくすえもしらぬまにいかでかつゆのきえんとすらん )
初草の生ひ行く末も知らぬまにいかでか露の消えんとすらん
(といった。このときにそうずがむこうのざしきのほうからきた。 「このざしきはあまり)
と言った。この時に僧都が向こうの座敷のほうから来た。 「この座敷はあまり
(あけひろげすぎています。きょうにかぎってこんなにはしのほうにおいでに)
開けひろげ過ぎています。今日に限ってこんなに端のほうにおいでに
(なったのですね。やまのうえのしょうにんのところへげんじのちゅうじょうがわらわやみのまじないにおいでに)
なったのですね。山の上の聖人の所へ源氏の中将が瘧病のまじないにおいでに
(なったというはなしをわたくしはいまはじめてきいたのです。ずいぶんしのびで)
なったという話を私は今はじめて聞いたのです。ずいぶん微行で
(いらっしゃったのでわたくしはしらないで、おなじやまにいながらいままでしこうも)
いらっしゃったので私は知らないで、同じ山にいながら今まで伺候も
(しませんでした」 とそうずはいった。)
しませんでした」 と僧都は言った。
(「たいへん、こんなところをだれかごいっこうのひとがのぞいたかもしれない」)
「たいへん、こんな所をだれか御一行の人がのぞいたかもしれない」
(あまぎみのこういうのがきこえてみすはおろされた。 「せけんでひょうばんのげんじのきみの)
尼君のこう言うのが聞こえて御簾はおろされた。 「世間で評判の源氏の君の
(おかおを、こんなきかいにみせていただいたらどうですか、にんげんせいかつとぜつえんしている)
お顔を、こんな機会に見せていただいたらどうですか、人間生活と絶縁している
(わたくしらのようなそうでも、あのかたのおかおをはいけんすると、よのなかの)
私らのような僧でも、あの方のお顔を拝見すると、世の中の
(なげかわしいことなどはみなわすれることができて、ながいきのできるきのするほどの)
歎かわしいことなどは皆忘れることができて、長生きのできる気のするほどの
(びぼうですよ。わたくしはこれからまずてがみでごあいさつをすることにしましょう」)
美貌ですよ。私はこれからまず手紙で御挨拶をすることにしましょう」
(そうずがこのざしきをでていくけはいがするのでげんじもさんじょうのてらへかえった。)
僧都がこの座敷を出て行く気配がするので源氏も山上の寺へ帰った。
(げんじはおもった。じぶんはかれんなひとをはっけんすることができた、だからじぶんと)
源氏は思った。自分は可憐な人を発見することができた、だから自分と
(いっしょにきているわかいれんちゅうはたびというものをしたがるのである、そこでいがいな)
いっしょに来ている若い連中は旅というものをしたがるのである、そこで意外な
(しゅうかくをえるのだ、たまさかにきょうをでてきただけでもこんなおもいがけないことが)
収穫を得るのだ、たまさかに京を出て来ただけでもこんな思いがけないことが
(あると、それでげんじはうれしかった。それにしてもうつくしいこである、どんな)
あると、それで源氏はうれしかった。それにしても美しい子である、どんな
(みぶんのひとであろう、あのこをてもとにむかえてあいがたいひとのこいしさが)
身分の人であろう、あの子を手もとに迎えて逢いがたい人の恋しさが
(なぐさめられるものならぜひそうしたいとげんじはふかくおもったのである。)
慰められるものならぜひそうしたいと源氏は深く思ったのである。