紫式部 源氏物語 榊 14 與謝野晶子訳

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(「ただいままでごぜんにおりまして、こちらへあがりますことがしんこうになりました」) 「ただ今まで御前におりまして、こちらへ上がりますことが深更になりました」 (とげんじはちゅうぐうにあいさつをした。あかるいつきよになったごしょのにわをちゅうぐうは) と源氏は中宮に挨拶をした。明るい月夜になった御所の庭を中宮は (ながめておいでになって、いんがみくらいにおいでになったころ、) ながめておいでになって、院が御位においでになったころ、 (こうしたやぶんなどにはおんがくのあそびをおさせになって) こうした夜分などには音楽の遊びをおさせになって (じぶんをおよろこばせになったことなどとむかしのおもいでがおこころにうかんで、) 自分をお喜ばせになったことなどと昔の思い出がお心に浮かんで、 (ここがおなじごしょのなかであるようにもおぼしめしがたかった。 ) ここが同じ御所の中であるようにも思召しがたかった。 (ここのえにきりやへだつるくものうえのつきをはるかにおもいやるかな ) 九重に霧や隔つる雲の上の月をはるかに思ひやるかな (これをみょうぶからげんじへおつたえさせになった。みやのおめしもののうごくおとなども) これを命婦から源氏へお伝えさせになった。宮のお召し物の動く音なども (ほのかではあるがきこえてくると、げんじはうらめしさもわすれてまずなみだがおちた。 ) ほのかではあるが聞こえてくると、源氏は恨めしさも忘れてまず涙が落ちた。 (「つきかげはみしよのあきにかわらねどへだつるきりのつらくもあるかな ) 「月影は見し世の秋に変はらねど隔つる霧のつらくもあるかな
(かすみがはなをへだてるさようにもひとのこころがあらわれるとか) 霞が花を隔てる作用にも人の心が現われるとか (むかしのうたにもあったようでございます」 などとげんじはいった。) 昔の歌にもあったようでございます」 などと源氏は言った。 (ちゅうぐうはかなしいおわかれのときに、しょうらいのことをいろいろとうぐうにおしえていこうと) 中宮は悲しいお別れの時に、将来のことをいろいろ東宮に教えて行こうと (あそばすのであるが、ふかくもおこころにはいっていないらしいのを) あそばすのであるが、深くもお心にはいっていないらしいのを (あわれにおおもいになった。へいぜいははやくおやすみになるのであるが、) 哀れにお思いになった。平生は早くお寝みになるのであるが、 (みやのおかえりあそばすまでおきていようとおぼしめすらしい。ごじしんをのこして) 宮のお帰りあそばすまで起きていようと思召すらしい。御自身を残して (ははみやのいっておしまいになることがおうらめしいようであるが、さすがにむりに) 母宮の行っておしまいになることがお恨めしいようであるが、さすがに無理に (ひきとめようともあそばされないのがおんおやごころにはあわれであるにちがいなかった。) 引き止めようともあそばされないのが御親心には哀れであるに違いなかった。 (げんじはとうのべんのことばをおもうとひとしれぬむかしのひみつもおそろしくて、) 源氏は頭の弁の言葉を思うと人知れぬ昔の秘密も恐ろしくて、 (ないしのかみにもひさしくてがみをかかないでいた。しぐれがふりはじめたころ、) 尚侍にも久しく手紙を書かないでいた。時雨が降りはじめたころ、
など
(どうおもったかないしのかみのほうから、 ) どう思ったか尚侍のほうから、 (こがらしのふくにつけつつまちしまにおぼつかなさのころもへにけり ) 木枯しの吹くにつけつつ待ちし間におぼつかなさの頃も経にけり (こんなうたをおくってきた。ちょうどもののみにしむおりからであったし、) こんな歌を送ってきた。ちょうど物の身にしむおりからであったし、 (どんなにひとめをさけてこのてがみがかかれたかをそうぞうしてもこいびとのじょうが) どんなに人目を避けてこの手紙が書かれたかを想像しても恋人の情が (うれしくおもわれたし、へんじをするためにつかいをまたせて、からかみのはいったおきだなの) うれしく思われたし、返事をするために使いを待たせて、唐紙のはいった置棚の (とをあけてかみをえらびだしたり、ふでをきにしたりしてげんじがかいているへんじは) 戸をあけて紙を選び出したり、筆を気にしたりして源氏が書いている返事は (ただごとであるとはにょうぼうたちのめにもみえなかった。あいてはだれだろうと) ただ事であるとは女房たちの目にも見えなかった。相手はだれだろうと (ひじやめでかたっていた。 どんなにくるしいこころをもうしあげてもおへんじがないので、) 肱や目で語っていた。 どんなに苦しい心を申し上げてもお返事がないので、 (そのかいのないのにわたくしのこころはすっかりめいりこんでいたのです。 ) そのかいのないのに私の心はすっかりめいり込んでいたのです。 (あいみずてしのぶるころのなみだをもなべてのあきのしぐれやとみる ) あひ見ずて忍ぶる頃の涙をもなべての秋のしぐれやと見る (こころがかようものでしたら、かよってもくるものなのでしたなら、) 心が通うものでしたら、通っても来るものなのでしたなら、 (そらもさびしいいろとばかりはみえないでしょう。) 空も寂しい色とばかりは見えないでしょう。 (などとじょうねつのあるもじがつらねられた。こんなふうにおんなのほうから) などと情熱のある文字が列ねられた。こんなふうに女のほうから (げんじをさそいだそうとするてがみはほかからもくるが、じょうのあるへんじをかくに) 源氏を誘い出そうとする手紙はほかからも来るが、情のある返事を書くに (とどまって、ふかくはげんじのこころにしまないものらしかった。) とどまって、深くは源氏の心にしまないものらしかった。
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