【青空文庫】夢十夜 第二夜 2/2

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プレイ回数22難易度(3.4) 2050打 長文 かな
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2 berry 6771 S++ 6.8 98.2% 293.0 2020 36 58 2025/04/15

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問題文

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(こうかんがえたとき、じぶんのてはまたおもわずふとんのしたへはいった。)

こう考えた時、自分の手はまた思わず布団の下へ這入った。

(そうしてしゅうざやのたんとうをひきずりだした。)

そうして朱鞘の短刀を引き摺り出した。

(ぐっとつかをにぎって、あかいさやをむこうへはらったら、)

ぐっと束を握って、赤い鞘を向へ払ったら、

(つめたいはがいちどにくらいへやでひかった。)

冷たい刃が一度に暗い部屋で光った。

(すごいものがてもとから、すうすうとにげていくようにおもわれる。)

凄いものが手元から、すうすうと逃げていくように思われる。

(そうして、ことごとくきっさきへあつまって、)

そうして、ことごとく切っ先へ集まって、

(さっきをいってんにこめている。)

殺気を一転に籠めている。

(じぶんはこのするどいはが、むねんにもはりのあたまのようにちぢめられて、)

自分はこの鋭い刃が、無念にも針の頭のように縮められて、

(きゅうすんごふんのさきへきてやむをえずとがっているのをみて、)

九寸五分の先へ来てやむを得ず尖っているのを見て、

(たちまちぐさりとやりたくなった。)

たちまちぐさりとやりたくなった。

(からだのちがみぎのてくびのほうへながれてきて、)

身体の血が右の手首の方へ流れて来て、

(にぎっているつかがにちゃにちゃする。)

握っている束がにちゃにちゃする。

(くちびるがふるえた。)

唇が震えた。

(たんとうをさやへおさめてみぎわきへひきつけておいて、)

短刀を鞘へ収めて右脇へ引きつけておいて、

(それからぜんがをくんだ。)

それから全伽を組んだ。

(ーじょうしゅういわくむと。むとはなにだ。)

ー趙州曰く無と。無とは何だ。

(くそぼうずめとはがみをした。)

糞坊主めとはがみをした。

(おくばをつよくかみしめたので、はなからあついいきがあらくでる。)

奥歯を強く咬み締めたので、花から熱い息が荒く出る。

(こめかみがつっていたい。)

こめかみが釣って痛い。

(めはふつうのばいもおおきくあけてやった。)

眼は普通の倍も大きく開けてやった。

など

(かかりものがみえる。あんどんがみえる。たたみがみえる。)

懸物が見える。行灯が見える。畳が見える。

(おしょうのやかんあたまがありありとみえる。)

和尚の薬缶頭がありありと見える。

(わにくちをあいてあざわらったこえまできこえる。)

鰐口を開いて嘲笑った声まで聞える。

(けしからんぼうずだ。)

怪しからん坊主だ。

(どうしてもあのやかんをくびにしなくてはならん。)

どうしてもあの薬缶を首にしなくてはならん。

(さとってやる。)

悟ってやる。

(むだ、むだとしたのねでねんじた。)

無だ、無だと舌の根で念じた。

(むだというのにやっぱりせんこうのにおいがした。)

無だと云うのにやっぱり線香の香がした。

(なんだせんこうのくせに。)

何だ線香のくせに。

(じぶんはいきなりげんこつをかためてじぶんのあたまをいやというほどなぐった。)

自分はいきなり拳骨を固めて自分の頭をいやと云うほど殴った。

(そうしておくばをぎりぎりとかんだ。)

そうして奥歯をぎりぎりと噛んだ。

(りょうわきからあせがでる。)

両腋から汗が出る。

(せなかがぼうのようになった。)

背中が棒のようになった。

(ひざのつぎめがきゅうにいたくなった。)

膝の接目が急に痛くなった。

(ひざがおれたってどうあるものかとおもった。)

膝が折れたってどうあるものかと思った。

(けれどもいたい。くるしい。)

けれども痛い。苦しい。

(むはなかなかでてこない。)

無はなかなか出て来ない。

(でてくるとおもうとすぐいたくなる。)

出て来ると思うとすぐ痛くなる。

(はらがたつ。)

腹が立つ。

(むねんになる。)

無念になる。

(ひじょうにくやしくなる。)

非常に口惜しくなる。

(なみだがぼろぼろでる。)

涙がぼろぼろ出る。

(ひとおもいにみをおおいわのうえにぶつけて、)

ひと思に身を巨巌の上にぶつけて、

(ほねもにくもめちゃめちゃにくだいてしまいたくなる。)

骨も肉もめちゃめちゃに砕いてしまいたくなる。

(それでもがまんしてじっとすわっていた。)

それでも我慢してじっと坐っていた。

(たえがたいほどせつないものをむねにいれてしのんでいた。)

堪えがたいほど切ないものを胸に盛れて忍んでいた。

(そのせつないものがからだじゅうのきんにくをしたからもちあげて、)

その切ないものが身体中の筋肉を下から持上げて、

(けあなからそとへふきでようふきでようとあせるけれども、)

毛穴から外へ吹き出よう吹き出ようと焦るけれども、

(どこもいちめんにふさがって、まるででくちがないようなざんこくきわまるじょうたいであった。)

どこも一面に塞がって、まるで出口がないような残刻極まる状態であった。

(そのうちにあたまがへんになった。)

そのうちに頭が変になった。

(あんどんもぶそんのえも、たたみも、ちがいだなもあってないような、)

行灯も蕪村の画も、畳も、違棚も有って無いような、

(なくってあるようなにみえた。)

無くって有るようなに見えた。

(といってむはちっともげんぜんしない。)

と云って無はちっとも現前しない。

(ただいいかげんにすわっていたようである。)

ただ好加減に坐っていたようである。

(ところへこつぜんとなりざしきのとけいがちーんとなりはじめた。)

ところへ忽然隣座敷の時計がチーンと鳴り始めた。

(はっとおもった。)

はっと思った。

(みぎのてをすぐにたんとうにかけた。)

右の手をすぐに短刀にかけた。

(とけいがふたつめをちーんとうった。)

時計が二つ目をチーンと打った。

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