グスコーブドリの伝記3

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(そしてまるであしばやに、つまづきながらもりへはいってしまいました。)

そしてまるで足ばやに、つまずきながら森へ入ってしまいました。

(ふたりはなんべんもいったりきたりして、そこらをないてまわりました。)

二人はなんべんも行ったりきたりして、そこらを泣いてまわりました。

(とうとうこらえきれなくなって、まっくらなもりのなかへはいって、いつかの)

とうとうこらえきれなくなって、まっくらな森の中へはいって、いつかの

(ほっぷのもんのあたりや、わきみずのあるあたりをあちこちうろうろあるきながら、)

ホップの門のあたりや、わき水のあるあたりをあちこちうろうろ歩きながら、

(おかあさんをひとばんよびました。もりのきのあいだからは、ほしがちらちら)

おかあさんをひと晩よびました。森の木の間からは、星がちらちら

(なにかいうようにひかり、とりはたびたびおどろいたようにやみのなかをとびました)

何かいうようにひかり、鳥はたびたびおどろいたように暗のなかを飛びました

(けれども、どこからもひとのこえはしませんでした。とうとうふたりはぼんやりいえへ)

けれども、どこからも人の声はしませんでした。とうとう二人はぼんやり家へ

(かえってなかへはいりますと、まるでしんだようにねむってしまいました。)

帰って中へはいりますと、まるで死んだようにねむってしまいました。

(ぶどりがめをさましましたのは、そのひのひるすぎでした。おかあさんのいった)

ブドリが目をさましましたのは、その日のひるすぎでした。おかあさんの言った

(こなのことをおもいだしてとだなをあけてみますと、なかには、ふくろにいれたそばこや)

粉のことを思いだして戸だなをあけてみますと、なかには、袋に入れたそば粉や

(こならのみがまだたくさんはいっていました。ぶどりはねりをゆりおこして)

こならの実がまだたくさんはいっていました。ブドリはネリをゆりおこして

(ふたりでそのこなをなめ、おとうさんたちがいたときのようにろにひをたきました。)

二人でその粉をなめ、おとうさんたちがいたときのように炉に火をたきました。

(それから、はつかばかりぼんやりすぎましたら、あるひとぐちで、)

それから、二十日ばかりぼんやりすぎましたら、ある日戸口で、

(「こんにちは、だれかいるかね。」)

「こんにちは、だれかいるかね。」

(というものがありました。おとうさんがかえってきたのかとおもってぶどりが)

というものがありました。おとうさんが帰って来たのかと思ってブドリが

(はねだしてみますと、それはかごをしょっためのするどいおとこでした。そのおとこは)

はねだして見ますと、それはかごをしょった目のするどい男でした。その男は

(かごのなかからまるいもちをとりだしてぽんとなげながらいいました。)

かごの中からまるいもちをとりだしてぽんと投げながら言いました。

(「わたしはこのちほうのききんをたすけにきたものだ。さあなんでもたべなさい。」)

「私はこの地方のききんをたすけにきたものだ。さあなんでもたべなさい。」

(ふたりはしばらくあきれていましたら、)

二人はしばらくあきれていましたら、

(「さあ、たべるんだ、たべるんだ。」とまたいいました。)

「さあ、たべるんだ、たべるんだ。」とまた言いました。

など

(ふたりがこわごわたべはじめますと、おとこはじっとみていましたが、)

二人がこわごわたべはじめますと、男はじっと見ていましたが、

(「おまえたちはいいこどもだ。けれどもいいこどもだというだけではなんにも)

「おまえたちはいい子供だ。けれどもいい子どもだというだけではなんにも

(ならん。わしといっしょについておいで。もっともおとこのこはつよいし、わしも)

ならん。わしといっしょについておいで。もっとも男の子は強いし、わしも

(ふたりはつれていけない。おいおんなのこ、おまえはここにいてももうたべるものが)

二人はつれて行けない。おい女の子、おまえはここにいてももうたべるものが

(ないんだ。おじさんといっしょにまちへいこう。まいにちぱんをたべさしてやるよ。」)

ないんだ。おじさんといっしょに町へいこう。毎日パンをたべさしてやるよ。」

(そしてぷいっとねりをだきあげて、せなかのかごへいれて、そのまま、)

そしてぷいっとネリをだきあげて、せなかのかごへ入れて、そのまま、

(「おおほいほい。おおほいほい。」とどなりながら、かぜのようにいえをでて)

「おおほいほい。おおほいほい。」とどなりながら、風のように家を出て

(いきました。ねりはおもてではじめてわっとなきだし、ぶどりは、)

行きました。ネリはおもてではじめてわっと泣きだし、ブドリは、

(「どろぼう、どろぼう。」となきながらさけんでおいかけましたが、おとこはもう)

「どろぼう、どろぼう。」と泣きながらさけんで追いかけましたが、男はもう

(もりのよこをとおってずうっとむこうのくさはらをはしっていて、そこからねりのなきごえが、)

森の横を通ってずうっとむこうの草原を走っていて、そこからネリの泣き声が、

(かすかにふるえてきこえるだけでした。)

かすかにふるえて聞こえるだけでした。

(ぶどりは、ないてどなってもりのはずれまでおいかけていきましたが、とうとう)

ブドリは、泣いてどなって森のはずれまで追いかけていきましたが、とうとう

(つかれてばったりたおれてしまいました。)

つかれてばったりたおれてしまいました。

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